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二人の関係

【前回の登場人物】

「謎の男性」

(種族)スシ

(年齢)?

(能力)?

(概要)カビ助が脱獄メンバーに選んだが、ミツバに拒絶される。

********************************************



 視界が暗転し、意識がふっと途切れたと思った時——

 最後に覚えているのは、彼女に抱き寄せられる感触だった。


 あれから、どれほど経ったのだろう。


 


 目を閉じたまま、かすかな振動を感じる。

 空気が流れている。揺れている。


 ……誰かが、僕を運んでいる。


 ズ……ン。

 重い何かが、地面を踏み鳴らす音。


「へ〜? こんなところにも置いてあるんだ」

 すぐ耳元で、ミツバの声。


 僕は薄く目を開ける。


 通路を塞ぐように立つ、石造りの巨体。

 ——ゴーレムのようだ。監獄の警備用だろう。


 鈍重だが、正面からやり合えば厄介な相手。


 「ダークスター団」には、こんなのも用意できるほどの技術力があるのか……?

 そう思ったが——


 奴らには「クローン生成」というチート能力がある。

 何ができても不思議ではない。


 だが……ゴーレムを前に、ミツバは立ち止まりもしなかった。

 

「起きなくていいよ、マスター」

 そう囁き、片手をひらりと振る。


 ——次の瞬間。


 ゴーレムの胸部に灯っていたランプが、ふっと消えた。


 振り上げかけていた腕が止まり、

 巨体はそのまま――


 静かに動かなくなった。


 破壊されたわけじゃない。ただ、“止められた”だけ。


「……ほら。“情報”ってすごいでしょ?」


 彼女は何事もなかったように歩き出す。


 ——なんて安心感だ。


 身体の力が抜ける。

 何だかあたたかい。また眠くなってきたなぁ……。


 僕の意識は、再び闇に沈んだ。


 


 ◻︎ ◻︎ ◻︎ ◻︎ ◻︎


 


 目を覚ますと、案の定ふたりきりだった。

 

 ほんと、すごいね。

 敵のアジトの中で、よくこんな場所を見つけられるものだ。


 以前は空間転移かと思っていた。

 だが違う。


 僕が彼女に眠らされ、目を覚ますと違う場所にいる現象。

 牢の外に出ていたり、博士の妨害を受けていないことから『空間転移』のようなものかと思っていたが、そうではなかったらしい。


 彼女の能力は、『クラブアップルの生成』。

 これに付加される特殊効果を応用しているだけだった。

 彼女の作る果実には「浄化」の効果がある。

 他人がその成分を過剰摂取すると、一時的に眠気が膨れ上がるのだ。


 だからこの現象の真実は——

 その花粉を周囲にばら撒くことで全員を眠らせ、安全に移動していた、ということ。

 だから移動する技術自体は、彼女の知識によるものだ。


「ミツバ……さっきはどうしたの? あの人が一体何なの?」


 彼女は俯いたまま答える。

「マスター……本当になんで、数いる囚人の中からあいつを選んだのよ……?」


「えぇ……ただの、偶然だよ?」


 本当に、それしか言いようがない。


 そもそも、“あいつ”の仲間じゃなくて、悪意がなくて、実力のある人物——

 そんなの、相当限られてるんじゃないか?


 てか彼女にあそこまで恨まれる男性は一体……? 

 “あいつ”の仲間ってわけじゃなさそうだったのに……。


 いや。


 そもそもあの男性は察しが良かった。もしかしたら黒だった?

 僕が質問したその途端に真意に気づいて……「ムッシー村に行ったことがない」と嘘をついただけなのかもしれないな。


 彼女は僕の巻き込まれやすい体質を心配してか、目に涙を浮かべていた。


 ——胸が締め付けられる。

 何かしてあげたい。安心させたい。


 恥ずかしいけど……僕の方から、アプローチをするしかない。

 ここで何もしないのは男ではない。


 彼女の気持ちを汲み取らないと、いくら呼び出し呼び出された関係とはいえ……呆れられ、二人の関係は終わってしまう。


 僕が覚悟を決める。

 自分から距離を詰め、唇を寄せようとした——!


 その時。



「あ〜あ〜やだやだ。人様の家でいちゃいちゃしやがってよぉ」



 空気が変わる。

 聞き覚えのある声だった。


 可愛らしい見た目と甲高い声。それに似合わない、下卑た口調。

 そして。

 何の前触れもなく、目の前に現れることを可能にした「能力」。


「お前は……!」


 名も知らない強敵。スライム博士のクローンと共に、フルーツの森を襲った奴だ。

 まさか、こんなに早く再会するなんて。


「おっと」

 奴は肩をすくめ、事務的に名乗りをあげた。

「自己紹介がまだだったな。オレは『ジャック』。察しがついてるとは思うが……『ダークスター団』の幹部だ」


 幹部——!


 ミツバが立ち上がり、睨みつける。

「どうしてここが分かったのよ……?」


 そこで“どうやって来たか”を聞かないのが彼女らしい。

 空間転移持ちの敵なのは前提として分かっていたのか——?


 だが彼女の問いに、奴は答えない。


「それにしても、カビ助だっけか? いつの間に女なんて作りやがって……」

 

 悪いかよ?

 てか、その歳で恋愛観があるんだな?


「女も女だぜ。『フルーツの森』の救世主様だからって、よくもまあ他種族なんかに(なび)いたもんだ——」


 相変わらず、こいつは人の話を聞かない。

 興味のあること以外は話さないってか? 


 ——だったら、そっちに合わせてやるよ。


「他種族が恋愛して何が悪いんだよ」


 怒りを込めて言い返す。


 だが——僕の言葉に。

 ジャックではなく、()()()()暗い顔になった。


「マスター……違うの」


「違う?」

 ——何が?


 彼女がそう言うってことは……他種族の恋愛が悪いのは、あいつの主観ってことじゃないってことか?

 僕が無知なだけだったかもしれない。


「んなことも知らねぇのかよ。女は黙ってたってわけか」


 ジャックは嗤う。

 ——どうやらその通りのようだ。


「いいぜ、世間知らずのカビ助くんに教えてやろう——」

「「やめて!!」」


 ミツバが叫ぶ。奴の言葉を、必死に止めようとする。

 だが、饒舌になったジャックは止まらない。


「DR星はな。他種族同士じゃ——」


 そして、にやりと口角を吊り上げる。


()()()()()()のさ」


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