二人の関係
【前回の登場人物】
「謎の男性」
(種族)スシ
(年齢)?
(能力)?
(概要)カビ助が脱獄メンバーに選んだが、ミツバに拒絶される。
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視界が暗転し、意識がふっと途切れたと思った時——
最後に覚えているのは、彼女に抱き寄せられる感触だった。
あれから、どれほど経ったのだろう。
目を閉じたまま、かすかな振動を感じる。
空気が流れている。揺れている。
……誰かが、僕を運んでいる。
ズ……ン。
重い何かが、地面を踏み鳴らす音。
「へ〜? こんなところにも置いてあるんだ」
すぐ耳元で、ミツバの声。
僕は薄く目を開ける。
通路を塞ぐように立つ、石造りの巨体。
——ゴーレムのようだ。監獄の警備用だろう。
鈍重だが、正面からやり合えば厄介な相手。
「ダークスター団」には、こんなのも用意できるほどの技術力があるのか……?
そう思ったが——
奴らには「クローン生成」というチート能力がある。
何ができても不思議ではない。
だが……ゴーレムを前に、ミツバは立ち止まりもしなかった。
「起きなくていいよ、マスター」
そう囁き、片手をひらりと振る。
——次の瞬間。
ゴーレムの胸部に灯っていたランプが、ふっと消えた。
振り上げかけていた腕が止まり、
巨体はそのまま――
静かに動かなくなった。
破壊されたわけじゃない。ただ、“止められた”だけ。
「……ほら。“情報”ってすごいでしょ?」
彼女は何事もなかったように歩き出す。
——なんて安心感だ。
身体の力が抜ける。
何だかあたたかい。また眠くなってきたなぁ……。
僕の意識は、再び闇に沈んだ。
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目を覚ますと、案の定ふたりきりだった。
ほんと、すごいね。
敵のアジトの中で、よくこんな場所を見つけられるものだ。
以前は空間転移かと思っていた。
だが違う。
僕が彼女に眠らされ、目を覚ますと違う場所にいる現象。
牢の外に出ていたり、博士の妨害を受けていないことから『空間転移』のようなものかと思っていたが、そうではなかったらしい。
彼女の能力は、『クラブアップルの生成』。
これに付加される特殊効果を応用しているだけだった。
彼女の作る果実には「浄化」の効果がある。
他人がその成分を過剰摂取すると、一時的に眠気が膨れ上がるのだ。
だからこの現象の真実は——
その花粉を周囲にばら撒くことで全員を眠らせ、安全に移動していた、ということ。
だから移動する技術自体は、彼女の知識によるものだ。
「ミツバ……さっきはどうしたの? あの人が一体何なの?」
彼女は俯いたまま答える。
「マスター……本当になんで、数いる囚人の中からあいつを選んだのよ……?」
「えぇ……ただの、偶然だよ?」
本当に、それしか言いようがない。
そもそも、“あいつ”の仲間じゃなくて、悪意がなくて、実力のある人物——
そんなの、相当限られてるんじゃないか?
てか彼女にあそこまで恨まれる男性は一体……?
“あいつ”の仲間ってわけじゃなさそうだったのに……。
いや。
そもそもあの男性は察しが良かった。もしかしたら黒だった?
僕が質問したその途端に真意に気づいて……「ムッシー村に行ったことがない」と嘘をついただけなのかもしれないな。
彼女は僕の巻き込まれやすい体質を心配してか、目に涙を浮かべていた。
——胸が締め付けられる。
何かしてあげたい。安心させたい。
恥ずかしいけど……僕の方から、アプローチをするしかない。
ここで何もしないのは男ではない。
彼女の気持ちを汲み取らないと、いくら呼び出し呼び出された関係とはいえ……呆れられ、二人の関係は終わってしまう。
僕が覚悟を決める。
自分から距離を詰め、唇を寄せようとした——!
その時。
「あ〜あ〜やだやだ。人様の家でいちゃいちゃしやがってよぉ」
空気が変わる。
聞き覚えのある声だった。
可愛らしい見た目と甲高い声。それに似合わない、下卑た口調。
そして。
何の前触れもなく、目の前に現れることを可能にした「能力」。
「お前は……!」
名も知らない強敵。スライム博士のクローンと共に、フルーツの森を襲った奴だ。
まさか、こんなに早く再会するなんて。
「おっと」
奴は肩をすくめ、事務的に名乗りをあげた。
「自己紹介がまだだったな。オレは『ジャック』。察しがついてるとは思うが……『ダークスター団』の幹部だ」
幹部——!
ミツバが立ち上がり、睨みつける。
「どうしてここが分かったのよ……?」
そこで“どうやって来たか”を聞かないのが彼女らしい。
空間転移持ちの敵なのは前提として分かっていたのか——?
だが彼女の問いに、奴は答えない。
「それにしても、カビ助だっけか? いつの間に女なんて作りやがって……」
悪いかよ?
てか、その歳で恋愛観があるんだな?
「女も女だぜ。『フルーツの森』の救世主様だからって、よくもまあ他種族なんかに靡いたもんだ——」
相変わらず、こいつは人の話を聞かない。
興味のあること以外は話さないってか?
——だったら、そっちに合わせてやるよ。
「他種族が恋愛して何が悪いんだよ」
怒りを込めて言い返す。
だが——僕の言葉に。
ジャックではなく、ミツバが暗い顔になった。
「マスター……違うの」
「違う?」
——何が?
彼女がそう言うってことは……他種族の恋愛が悪いのは、あいつの主観ってことじゃないってことか?
僕が無知なだけだったかもしれない。
「んなことも知らねぇのかよ。女は黙ってたってわけか」
ジャックは嗤う。
——どうやらその通りのようだ。
「いいぜ、世間知らずのカビ助くんに教えてやろう——」
「「やめて!!」」
ミツバが叫ぶ。奴の言葉を、必死に止めようとする。
だが、饒舌になったジャックは止まらない。
「DR星はな。他種族同士じゃ——」
そして、にやりと口角を吊り上げる。
「生殖できねぇのさ」




