表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
114/134

弱天解昇

今回はピクコノさん視点です。

************************************************



 ギギギギギギ……。

 黒鉄の門が軋みながら開いていく。


 その向こうへ……突入班は、迷わず駆けていった。

 ゴハートくんに、土台くん。シャドくんに、ギザンさん。そして……カビ助くん。


「どうか、無事でいてくんろ……!」

 おらは誰にも聞こえない声で、そう呟く。





「行けェ!!」

「「うおおおおおお!!」」


 モグドン班長の怒号。地中班が前へ出る。

 クローン兵の群れが押し寄せる。


 大盾がぶつかり。槍が突き出され。

 城門前は完全な乱戦になっていた。


「右押されてるべ!!」

「増援来たぞォ!!」

「押し返せェ!!」


 怒号が飛び交う。土煙が舞う。

 空では鳥達の戦い。上では、隊長と武蔵の剣戟が鳴る。


 戦いに関しては素人なおらは——その中で。

 戦場全体を見回し、皆んなに指示を出していた。


「……それにしても」


 違和感。

 ずっと感じている。姿の見えない、謎の敵。

 だが……正体が全くと言っていいほど掴めない。


 おらはシャベルを握りながら眉を寄せた。


 カビ助くんたちは無事に侵入した。隊長さんは武蔵と交戦中。空ではフウロウくんたちが戦っている。


 戦況は決して良くないが、崩壊もしていない。

 概ね、作戦通りにことが運んでいる。なのに——


「不穏な空気だべ……」


 胸の奥がざわつく。


 理由は、あの透明な敵?

 あれだけは引っ掛かっていた。


 ホゲくんの背で、隊員を殺した謎の存在。そいつは今、また現れて味方を襲い始めたと思ったら……すっかり鳴りを潜めている。


 誰も正体を掴めないまま。皆、乱戦に夢中で——気づけば話題から消えていた。


 仕方のないことだ。不明な敵の正体を探していれば、目の前の敵に殺されちまう。

 戦場とは、そういう場所。正直、こんな場所に自分がいていいのかと感じている。


 そんな時、旅に誘うのを遠慮していたカビ助くんと……そんな彼を、危険な世界に連れ出してしまった、おら自身が告げた言葉を思い出す。


『でも、危険ですよ』

『おらにも出来ることがあるんだろう?』


 あの時は、石化を解除することだけだと思っていた。

 でも……きっと、他にもある。この場にいるドリル族は、モグドンくんとおらの二人だけ。けども彼は、戦いの指揮で忙しいはずだ。


 戦えない……おらが、出来ること……。


「——念の為、やってみっか。『弱点解析(アナライズ)』」


 視界に、無数の線が浮かぶ。

 建物。兵士。武器。地形。全てに綻びが見える。


 物にも。人にも。心にも。

 地面が穴ぼこで荒れるように、弱点は存在する。


 それを見抜くのがおらの、ドリル族の力だった。

 敵兵にも、味方にも。伝えたい弱点はいくらでも見つかる。



「けども、今は見えない対象を認識したい……こんな時、どうすれば?」



 悩んでいると、空で爆音が響く。

 空中班と、極道鳥たちの戦い……どんどん激しくなっていくべな。


 ん? 空中班……?


 空中班といえば、風を読むフウロウくんだ。


 おらは、彼が海上で敵を探知していた時のことを思い出した。

 そういえば、彼は——

 “何もない状況”から、異変を感じ取っていた。


「もしかして、今見るべきは“戦”ではなく——」


 風。それは、空間の流れだ。


 何も見えない……弱点がない時は、“見方”が間違っている?


 そうだ。

 畑だって同じだ。地面を見るだけじゃ駄目だべ。


 風を見る。日当たりを見る。水の流れを見る。

 ……全部合わせて、初めて作物は育つ。


 なら——見るべきなのは。


「——探検隊という、“畑”全体か?」


 静かに、息を吐く。そして……

 神経を集中させ、再び『能力』を発動した。


 その瞬間——世界が変わる。

 浮かぶ景色が、今までの能力とは別物だった。


 さしずめ、弱点解析(アナライズ)の派生といったところか。


 名付けるならば……『弱天解昇(アナ・ライジング)』?

 ただ単に穴を見つけるだけでなく……上昇気流の如き勢いで食いつき、その奥底まで見抜く技。


 ——真っ白な視界。

 気を抜くと脳みその中まで空っぽになっちまいそうだ。


 その中で目を凝らせば、黒い何かが見え隠れしている。


「ここ……か!?」


 黒い何か。今にも飛んじまいそうな頭でそれに食いつく。


 その瞬間………脳の中に“黒”の情報が敷き詰められるような感覚。

 戦場の片隅に、妙な影が見えた!


 断崖の端。拘束されたままのメドゥーサ。

 そこだけ……まるで染みのような違和感がある。


「なんだべ……?」


 ドドリ村を襲い、おらを洗脳した、あの女。

 あいつは、厳重に拘束されている。それに、ちゃんと見張りもいる。


 彼らは地中班の精鋭たちだ。腕っぷしはもちろん異常なほど強い。

 任せておけば問題ない……はずなんだ。


 本来なら……心配する理由なんてない。

 なのに。


 『弱天解昇(アナ・ライジング)』が警鐘を鳴らしている。


 そこが危険だと。今すぐ迎え、と。


「すまねぇ!! 頼むべ、誰か——」


 言いかけた。

 対処する……その瞬間だった。



 ギリ……と。何かが軋む音。

 

 見張りの一人が膝をついた。


 疲労か? ……そう思ったが違う。


 首元に。細い赤い線。

 その線が——ぱっくりと開いた。


 その次の瞬間、見張りの一人が崩れ落ちた。


「……は?」


 首が、切れていた。胴から血が噴き出す。

 ——糸ノコギリで、切断されたみたいに。


 その隣の隊員も倒れる。

 さらに……もう一人。


 何かに斬られたように、音もなく、崩れた。


「なっ——!?」


 近くにいた、誰もが理解できない。

 そして。空間が歪んだ。


 水面越しに景色を見るみたいに。


 ゆらりと。

 何もない場所が揺れる。


 そこから、一人の男が現れた。



「——アーッハッハッハッハッハッ!!」



 高笑い。

 戦場全体へ響くような大声。


 その高笑いは、剣戟も怒号も貫いて戦場へ響いた。


 思わず誰もが顔を上げる。

 その中にはモグドンくんはもちろん……隊長さんや、フウロウくんの姿もある。


「何だ……っ!?」

「誰もいない……が、叫び声……? 風も随分と荒れているな……?」

「誰だ、テメェは!? 部下に何しやがった!!」


 おらは確信した。ずっと探していた。

 探検隊を掻き回していた影。そいつが——


「——見つけたべ」

 今、目の前にいる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ