不穏を振り切れ。
【前回の登場人物】
「焼機灼鬼」
(種族)トリ
(年齢)47
(能力)炎の翼
(概要)炎鳥組の首領。死んだはずが、クローン兵となって空中班を襲う。
「波奇羽鬼」
(種族)トリ
(年齢)31
(能力)氷の翼
(概要)アイス一族の首領。同じくクローン兵となる。
「武危夢鬼」
(種族)トリ
(年齢)42
(能力)剛の翼
(概要)剛力会の首領。同じくクローン兵となる。
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空が裂ける。
隊長と武蔵の斬撃。その衝撃だけで、第一層の尖塔が崩れ落ちた。
「うおおおおっ!?」
「瓦礫に気をつけろ!!」
地上ではなお、乱戦が続いている。
クローン兵。地中班。協力者たち。
怒号と爆音が入り乱れる中——
「……今だ」
師匠が、低く呟いた。
「え?」
僕は振り向く。
師匠は戦場を睨んだまま、静かに言った。
「地中班も、空中班も。敵を引き受けている」
「……!」
「敵は、今……俺たちに気を向けている余裕がないはず」
その視線の先。
空では、フウロウさん達とヤクザ鳥クローンの激突。正面では、地中班が大量の敵を抑え込んでいる。
——確かに。今なら?
「突入班……!」
師匠が振り返る。彼は目を一瞬だけ閉じ、小さく宣言した。
「今が好機だ。動くぞ!」
その一言で、空気が変わった。
「お、おう!!」
「ついにですね……!」
ゴハートと土台モンが拳を握る。
ギザン率いる地上班も、静かに武器を構えた。
「では、参ろうぞ」
「うん……!」
僕らは走り出す。乱戦の中を。
怒号を。悲鳴を。爆音を……掻き分けながら。
「右から敵です!!」
「止める!!」
ゴハートが飛び込み、クローン兵を殴り飛ばす。
「『人魂ナックル』!!」
——ドゴッ!!
「急いでください!! 『隆起』!」
土台モンが岩の足場を形成。
固められた瓦礫の上を、一気に駆け抜ける。
その途中。
——ブシュッ。
「……え?」
不意に。後方で、何かが倒れる音。
振り向くと。
「お、おい!?」
協力者の一人が、膝から崩れ落ちていた。
首元から、血が噴き出している。
「敵襲か!?」
「どこだ!!」
周囲がざわつく。
だが——誰もいない。敵の姿はどこにもないのに、次々と味方がやられていく。
敵兵は、前線に集中しているはずなのに?
いや、この状況、確か前にも……!!
「……風が乱れている」
上空から、フウロウさんの低い声。
彼は極道鳥達と戦いながらも、こちらを見ていた。
「ホゲの背にいたやつが……いるぞ」
「おらも検知したべ……」
地中班と一緒に残ることになった、ピクコノさん。彼も『弱点を分析する力』で、フウロウさんと同じものを感じたようだ。
だが、その道のプロである彼らでさえ、あの正体が“何か”までは分からない……? ギザンの推測によると、“内通者”の集団という説らしいが……本当にそんな人物がいるのかだけでも、知っておきたい。
その瞬間。
空間が、ぐにゃりと歪んだ。
「っ!?」
僕の背筋が凍る。
今……何かいた?
よく見えなかったのに、「こちらを見ていた」感覚だけが残る。
“それ”は次の瞬間には、もう消えていた。
敵は、一人?
「後ろを見るな」
師匠が短く言う。
「……地中班と、ピクコノさんに任せるんだ」
嫌な予感が走る。
でも、今は止まれないのも確かなこと。
「急げ、マスター!!」
ゴハートが叫ぶ。
僕らは再び走り出した。
そして——。
第一層入口。巨大な黒鉄の扉。
その前には、数十体の兵が立っていた。
『『侵入サセルナ!!』』
機械みたいな声が重なる。
みたい……というか、こいつら機械の兵だ!!
「邪魔である。『核理壊』!!」
今叫んだのは、ギザンだった。
——キュォォォォン!!
彼が腕を振りかざすと、敵が突然まとめて吹き飛び……?
ロボ兵たちの装甲が、内側から崩れた。関節部が同時に砕け、兵士たちは自壊するように倒れる。
おかげで道を突破することができたけど……一体、何をしたんだ?
「我にかかれば、『構造』の破壊など容易いなり」
なるほど? 機械語の構造を、一瞬にして機能停止させたのか?
古代の英雄……相変わらず、この人は規格外だ!
「今です!!」
土台モンが残るクローン兵の足を凍らせる。
「どけェ!!」
ゴハートが飛び込み、最後の一体を殴り抜いた。
——ズガン!!
敵が壁へ叩きつけられる。
そして……ついに。
僕らは、巨大な扉の前へ辿り着いた。
「はぁ……っ」
思わず息を呑む。
近くで見ると、さらに巨大だった。何十メートルあるのか分からない。黒鉄で出来た巨大扉。
その表面には、無数の傷跡が刻まれていて。まるで、“この先へ来るな”と威圧しているみたいだった。
「……!!」
胸が跳ねた。
ついに。ついに、この時が来た。
「カビ助……」
師匠が低く言う。
「開けるぞ」
「……はい!!」
師匠の合図とともに、全員で扉へ手をかけた。
「「せーのッ!!」」
——ギギギギギギ……!!
重い。まるで山を押しているみたいだ。
だが僅かに、隙間が開く。
その奥から……冷たい風が吹いた。
「っ……!」
思わず息を呑む。
広くて、薄暗い。まるで巨大な洞窟みたいだ。
「入れ!!」
師匠の声。
背後で、また誰かが倒れる音がする中……僕らは、そのまま城内へ飛び込んだ。
——バァン!!
背後で扉が閉まる。
その瞬間。
戦場の音が、一気に遠ざかった。
もう、後戻りはできない。
本当の本当に、“敵の心臓部”へ来てしまったんだ。
「…………」
静かだ。さっきまでの喧騒が嘘みたいに。
薄暗い通路。赤黒い灯り。壁には不気味な紋様。まるで城全体が、生きているみたいだ。
それに加えて、足音が、不自然なくらい反響する。空気が妙に湿っていて、嫌に肺に張りついたような気もした。
「気味悪ぃ場所だな……」
ゴハートが舌打ちする。
「油断するなよ」
シャドさん……師匠が前を見る。
「ここからが本番だ」
僕らは慎重に進み始めた。
通路は広い。だが、人の気配が少ない。外には、あれだけの兵がいたのに——城の中は、不自然なくらい静かだった。
「……敵、いませんね」
「だな。逆に怖ぇよ」
土台モンらの発言はフラグだったようで。
その時、奥で音がした。
——カツン。
「「……!!」」
全員が構える。
暗闇の中から現れたのは——三人の敵兵。逃げ遅れた……クローンではない普通の、ダークスター団員のようだった。
「侵入者だ!!」
「なんで第一層を突破されてる!?」
「待て、報告を——っ」
彼らは戸惑いつつも、すぐさま飛び込んできた。
だが、こちらには師匠がいる。
「遅い。『黒舎利弾』」
——ズバァッ!!
黒い閃光。次の瞬間には、二体とも崩れ落ちていた。
「……っ」
改めて、師匠も強すぎる。
「進むぞ」
彼は短く言い、再び歩き出す。
奥へ。
さらに奥へ。
途中、いくつもの通路があった。
巨大な階段。鉄格子。誰もいない食堂。薄暗い実験室みたいな部屋。
どこも不気味だった。とても、人が暮らす場所じゃない。
「……なぁ」
ゴハートが低く言う。
「ここ、本当に“城”か?」
その疑問は、僕も同じだった。
豪華さなんてない。あるのは、冷たさと不気味さだけ。
その時。
——ギャアアアアアアッ!!
外から? 誰かの絶叫が、聞こえた気がした。
「…………!?」
嫌な汗が流れる。
「……っ!」
振り返りかけた瞬間。
「見るな、お前ら」
師匠の声。
「今戻れば、全部無駄になる」
彼は一切、後ろを向かなかった。
「……そう、ですね……っ」
よく考えろ。
外で何かが起こっていたとして——
僕が助けに行ったところで、足手纏いになる可能性だってある。それに、師匠の言う通り……今止まれば、ホゲさん達が繋いでくれた道が無駄になる。
僕らが行くべきは、第二層への巨大な階段……!
この奥にいるであろう、ジャックの元だ。




