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不穏を振り切れ。

【前回の登場人物】

「焼機灼鬼」

(種族)トリ

(年齢)47

(能力)炎の翼

(概要)炎鳥組の首領。死んだはずが、クローン兵となって空中班を襲う。


「波奇羽鬼」

(種族)トリ

(年齢)31

(能力)氷の翼

(概要)アイス一族の首領。同じくクローン兵となる。


「武危夢鬼」

(種族)トリ

(年齢)42

(能力)剛の翼

(概要)剛力会の首領。同じくクローン兵となる。

************************************************


 空が裂ける。

 隊長と武蔵の斬撃。その衝撃だけで、第一層の尖塔が崩れ落ちた。


「うおおおおっ!?」

「瓦礫に気をつけろ!!」


 地上ではなお、乱戦が続いている。


 クローン兵。地中班。協力者たち。

 怒号と爆音が入り乱れる中——


「……今だ」

 師匠が、低く呟いた。


「え?」

 僕は振り向く。


 師匠は戦場を睨んだまま、静かに言った。


「地中班も、空中班も。敵を引き受けている」

「……!」

「敵は、今……俺たちに気を向けている余裕がないはず」


 その視線の先。

 空では、フウロウさん達とヤクザ鳥クローンの激突。正面では、地中班が大量の敵を抑え込んでいる。


 ——確かに。今なら?


「突入班……!」

 師匠が振り返る。彼は目を一瞬だけ閉じ、小さく宣言した。


「今が好機だ。動くぞ!」


 その一言で、空気が変わった。


「お、おう!!」

「ついにですね……!」

 ゴハートと土台モンが拳を握る。


 ギザン率いる地上班も、静かに武器を構えた。


「では、参ろうぞ」

「うん……!」


 僕らは走り出す。乱戦の中を。

 怒号を。悲鳴を。爆音を……掻き分けながら。


「右から敵です!!」

「止める!!」


 ゴハートが飛び込み、クローン兵を殴り飛ばす。

「『人魂ナックル』!!」


 ——ドゴッ!!


「急いでください!! 『隆起』!」


 土台モンが岩の足場を形成。

 固められた瓦礫の上を、一気に駆け抜ける。


 その途中。


 ——ブシュッ。


「……え?」


 不意に。後方で、何かが倒れる音。

 振り向くと。


「お、おい!?」

 協力者の一人が、膝から崩れ落ちていた。


 首元から、血が噴き出している。


「敵襲か!?」

「どこだ!!」


 周囲がざわつく。

 だが——誰もいない。敵の姿はどこにもないのに、次々と味方がやられていく。


 敵兵は、前線に集中しているはずなのに? 

 いや、この状況、確か前にも……!!


「……風が乱れている」


 上空から、フウロウさんの低い声。

 彼は極道鳥(ヤクザドリ)達と戦いながらも、こちらを見ていた。


「ホゲの背にいたやつが……いるぞ」


「おらも検知したべ……」


 地中班と一緒に残ることになった、ピクコノさん。彼も『弱点を分析する力』で、フウロウさんと同じものを感じたようだ。

 だが、その道のプロである彼らでさえ、あの正体が“何か”までは分からない……? ギザンの推測によると、“内通者”の集団という説らしいが……本当にそんな人物がいるのかだけでも、知っておきたい。


 その瞬間。


 空間が、ぐにゃりと歪んだ。


「っ!?」

 僕の背筋が凍る。


 今……何かいた?


 よく見えなかったのに、「こちらを見ていた」感覚だけが残る。

 “それ”は次の瞬間には、もう消えていた。


 敵は、一人?


「後ろを見るな」

 師匠が短く言う。


「……地中班と、ピクコノさんに任せるんだ」


 嫌な予感が走る。

 でも、今は止まれないのも確かなこと。


「急げ、マスター!!」

 ゴハートが叫ぶ。


 僕らは再び走り出した。


 そして——。

 第一層入口。巨大な黒鉄の扉。

 その前には、数十体の兵が立っていた。


『『侵入サセルナ!!』』


 機械みたいな声が重なる。

 みたい……というか、こいつら機械の兵だ!!


「邪魔である。『核理壊(ヘカ・ケペシュ)』!!」


 今叫んだのは、ギザンだった。


 ——キュォォォォン!!


 彼が腕を振りかざすと、敵が突然まとめて吹き飛び……?


 ロボ兵たちの装甲が、内側から崩れた。関節部が同時に砕け、兵士たちは自壊するように倒れる。

 おかげで道を突破することができたけど……一体、何をしたんだ?


「我にかかれば、『構造』の破壊など容易いなり」


 なるほど? 機械語の構造を、一瞬にして機能停止させたのか?

 古代の英雄……相変わらず、この人は規格外だ!


「今です!!」

 土台モンが残るクローン兵の足を凍らせる。

「どけェ!!」

 ゴハートが飛び込み、最後の一体を殴り抜いた。


 ——ズガン!!

 敵が壁へ叩きつけられる。


 そして……ついに。

 僕らは、巨大な扉の前へ辿り着いた。


「はぁ……っ」

 思わず息を呑む。


 近くで見ると、さらに巨大だった。何十メートルあるのか分からない。黒鉄で出来た巨大扉。

 その表面には、無数の傷跡が刻まれていて。まるで、“この先へ来るな”と威圧しているみたいだった。


「……!!」

 胸が跳ねた。

 ついに。ついに、この時が来た。


「カビ助……」

 師匠が低く言う。


「開けるぞ」

「……はい!!」


 師匠の合図とともに、全員で扉へ手をかけた。


「「せーのッ!!」」


 ——ギギギギギギ……!!


 重い。まるで山を押しているみたいだ。

 だが僅かに、隙間が開く。


 その奥から……冷たい風が吹いた。


「っ……!」

 思わず息を呑む。


 広くて、薄暗い。まるで巨大な洞窟みたいだ。


「入れ!!」


 師匠の声。

 背後で、また誰かが倒れる音がする中……僕らは、そのまま城内へ飛び込んだ。


 ——バァン!!


 背後で扉が閉まる。


 その瞬間。

 戦場の音が、一気に遠ざかった。





 もう、後戻りはできない。

 本当の本当に、“敵の心臓部”へ来てしまったんだ。


「…………」


 静かだ。さっきまでの喧騒が嘘みたいに。

 薄暗い通路。赤黒い灯り。壁には不気味な紋様。まるで城全体が、生きているみたいだ。

 それに加えて、足音が、不自然なくらい反響する。空気が妙に湿っていて、嫌に肺に張りついたような気もした。


「気味悪ぃ場所だな……」

 ゴハートが舌打ちする。


「油断するなよ」

 シャドさん……師匠が前を見る。


「ここからが本番だ」






 僕らは慎重に進み始めた。

 通路は広い。だが、人の気配が少ない。外には、あれだけの兵がいたのに——城の中は、不自然なくらい静かだった。


「……敵、いませんね」

「だな。逆に怖ぇよ」


 土台モンらの発言はフラグだったようで。

 その時、奥で音がした。


 ——カツン。

 

「「……!!」」

 全員が構える。


 暗闇の中から現れたのは——三人の敵兵。逃げ遅れた……クローンではない普通の、ダークスター団員のようだった。


「侵入者だ!!」

「なんで第一層を突破されてる!?」

「待て、報告を——っ」


 彼らは戸惑いつつも、すぐさま飛び込んできた。

 だが、こちらには師匠がいる。


「遅い。『黒舎利弾(シャドー・シャリボム)』」


 ——ズバァッ!!

 黒い閃光。次の瞬間には、二体とも崩れ落ちていた。


「……っ」

 改めて、師匠も強すぎる。


「進むぞ」

 彼は短く言い、再び歩き出す。


 奥へ。

 さらに奥へ。


 途中、いくつもの通路があった。

 巨大な階段。鉄格子。誰もいない食堂。薄暗い実験室みたいな部屋。


 どこも不気味だった。とても、人が暮らす場所じゃない。


「……なぁ」

 ゴハートが低く言う。


「ここ、本当に“城”か?」


 その疑問は、僕も同じだった。

 豪華さなんてない。あるのは、冷たさと不気味さだけ。


 その時。

 ——ギャアアアアアアッ!!


 外から? 誰かの絶叫が、聞こえた気がした。


「…………!?」

 嫌な汗が流れる。


「……っ!」


 振り返りかけた瞬間。


「見るな、お前ら」

 師匠の声。

「今戻れば、全部無駄になる」


 彼は一切、後ろを向かなかった。


「……そう、ですね……っ」


 よく考えろ。

 外で何かが起こっていたとして——


 僕が助けに行ったところで、足手纏いになる可能性だってある。それに、師匠の言う通り……今止まれば、ホゲさん達が繋いでくれた道が無駄になる。

 

 僕らが行くべきは、第二層への巨大な階段……!

 この奥にいるであろう、ジャックの元だ。


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