探検隊のチームワーク
——ヴゥゥゥゥゥゥゥン!!
警報が、城全体を震わせる。
『第一層防衛部隊、出撃再開』
『侵入者ヲ排除セヨ』
重たい門の奥。赤黒い光の中から、無数の影が溢れ出した。
「また来るぞォ!!」
モグドンさんが拳を打ち鳴らす。
——ドゴンッ!!
その一撃だけで、最前列のクローン兵が吹き飛んだ。
「地中班!! 前へ!!」
「「オオオオオオッ!!」」
怒号と共に、大盾を構えた地中班が一斉に突撃する。まるで岩盤そのものが前進しているみたいだった。
敵兵も敵兵で、構わず雪崩れ込む。
剣。槍。牙。爪。様々な種類の凶器で、敵の殲滅を図っている。
だが——
「止まるなァ!!」
モグドンさんのドリルが振るわれた瞬間。
——バギィィィン!!
衝撃波。
前方のクローン兵たちがまとめて吹き飛び、石壁へ叩きつけられる。
「す、すごい……!」
思わず声が漏れた。
敵の数は多い。なのに——押されていない。
むしろ、押し返している。
「左翼、穴空いたぞ!!」
「了解。埋めます!!」
地中班の隊員が即座に前へ出る。
巨大な盾がぶつかり、クローン兵を弾き飛ばした。
空いた穴は埋めなければ、別の誰かが被害に遭う。
彼らは常日頃、モグドンさんが地中を掘った後の後始末をしている。だから“埋める”という作業に関しては、一流なのかもしれない。
そこへ、後方から協力者たちが飛び込む。
「探検隊の皆さん、ここは請け負います!!」
「くらいやがれぇ!!」
彼らは、家族や友人を石化されたり……クローン化されたり……そんな被害にあった者達の集まり。だから、人一倍『ダークスター団』への憎悪が強い。怖がるどころか率先して、前線を張ってくれている。
武器が火花を散らす。城門前は、乱戦になっている。
けれど、探検隊側は、不思議なくらい崩れない。
誰かが押されれば、すぐ別の誰かが支える。負傷者が出れば、即座に後方へ下げられる。
まるで、一つの巨大な生き物みたいな連携だった。
「敵左翼、増援確認です〜!」
耳元の通信機から、博士の声が響く。
上空を見上げると……空中班の鳥たちが、戦場上空を旋回していた。
その中心には——フウロウさん。
巨大な翼を広げ、風の流れを読んでいる。
「三時方向、敵密集だ!!」
「地中班、右へ寄せるっすよ!!」
「了解だァ!!」
モグドンさんが即座に反応する。
次の瞬間。
地中班の陣形が、一斉に右へ傾いた。
「押し潰せェ!!」
——ドゴォォォォン!!
重装備の隊員たちが敵群へ突っ込む。クローン兵たちがまとめて吹き飛んだ。
「うおおおおっ!!」
「行ける!!」
「押してるぞ!!」
眼前で、歓声が上がる。
だが、その間に。空では、別の戦いが続いていた。
「下がれ」
低い声。次の瞬間——
——ザンッ!!
風が裂けた。
フウロウさんの『風刃』。見えない斬撃が、空中から飛び上がってきた鳥型クローンをまとめて切り裂く。
「おい……スライム」
「はいはい、分かってますよ〜」
博士の背負った装置が展開。粘着弾が撃ち込まれ、壁を這っていた昆虫型クローンたちを拘束した。
「空中班、右上!!」
「「了解!!」」
鳥たちが急降下する。
——ドンッ!!
鋭い爪撃。敵兵がそのまま断崖下へ叩き落とされた。
「すげぇな……」
ゴハートが呟く。
「『探検隊』って、こんなに強かったのかよ……」
僕も、同じことを思っていた。今までだって、強いとは思っていたけど。
しかし、それは班長達だけの話。他の隊員さん達の戦っている姿は、見たことがなかった。それどころか、ラッシャイタウンでの……蟻たちに苦しめられている様子が印象に残っているせいで、勝手に自分の方が強いと自惚れていたかも……なんて思う。
彼らの強さは、腕っぷしだけじゃない。
経験。連携。判断。覚悟。
その全部が、完成されている。
誰一人として、無駄な動きをしていない。
——ド……ン!! ドォ……ン!!
この位置だと、海側からホゲさんの戦闘音まで響いてくる。
振り返れば。海面では今なお、水中班が魚人クローンを押し返していた。
「「ォォォォォォ……!」」
巨大な波。弾ける水柱。遠くで響く怒号。
まるで海そのものが暴れているみたいだった。
「負ける気がしねぇな、マスター」
ゴハートが笑う。
「……うん」
その言葉に、思わず頷く。
敵の本拠地。圧倒的戦力。
世界を絶望に変えたという『ダークスター団』。
なのに。
今、この場にいる皆なら、本当に勝てるんじゃないかって——
そう思えてしまった。
「その通り……だがそれは、雑魚相手だけの話だ」
師匠の呟き。それと共に……。
——ビュン!!
戦場の音が、一瞬だけ消えた。
最前列にいた地中班隊員が、突然ドサリと崩れ落ちた。
「……え?」
誰も、“攻撃”を見ていない。
ただ次の瞬間。
——ズバァァァッ!!
大盾ごと、地面が斬り裂かれた。
「総員、散開しろォ!!」
モグドンさんの怒号。
だが遅い。“攻撃”を放った人物の影が——消えた。
「速い……!」
フウロウさんが空を睨む。
「いや、“疾い”のか……!? 風が掴めない!」
あの斬撃の音は……まさか。
旅立ってから……ずっと。“希望”の後に、襲いくるモノ。
「やっぱ最初の強敵は、お前か……!」




