闇の中から
ーーーーーー
前田さん、どこにいるの?
おーい、将軍地蔵、出てきてよ。
晴美、信子、なんで電話くれないの?
里美さん、竹内さん、私はここにいるよ。
誰か、誰か、助けて。私はここにいるよ。
ーーーーーー
少年は洞穴の前まで来ると、勝軍地蔵に姿を変え、暗闇の中に足を踏み入れた。
「ゆかり。どこにいる?みんなが待ってるよ」
前田さん?
「ゆかり。俺だよ、勝軍地蔵さまだよ。みんなが待ってるから、そこから出てくるんだ」
将軍地蔵!でもあたし、何も見えないのよ
「俺には見えない。自分から出てこないといけないんだ。そこはゆかりのいる場所じゃな。そこにいたら、いつまでも何も見えないぜ」
ゆかりは閉じていた瞼を開いた。しかし何も見えない。
そこに黒川さんや竹内さんたちがやってきた。ゆかりの名を呼びながら。
勝軍地蔵?何も見えないんだって・・。あ?でも・・聴こえる・・みんなの声が聴こえる・・
ゆかりは暗闇の中、身体を起こし、ゆっくりと立ち上がった。
「やっぱりいないんじゃ・・?」
「待つんだ。ゆかりが戻ってくる」と勝軍地蔵。
ほら穴から突然、手で目を覆いながらゆかりがあらわれた。着衣といえばガソリンスタンドに行ったときに着ていたもので、汚れも見えない。
「まぶしい!どんな光なのよ。いるの?どこにいるの?みんな!」
晴美がゆかりの痩せた身体に跳びついた。思い切り跳びついたから二人くっついたまま、地面に倒れてしまった。晴美はそれでもゆかりの身体を抱きしめたままで離そうとしない。そこに信子も抱きついてきた。




