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愛宕坂の勝軍地蔵  作者: テッドオフ
27/31

闇の中から

ーーーーーー

 前田さん、どこにいるの?

おーい、将軍地蔵、出てきてよ。

晴美、信子、なんで電話くれないの?

里美さん、竹内さん、私はここにいるよ。

誰か、誰か、助けて。私はここにいるよ。


ーーーーーー



 少年は洞穴の前まで来ると、勝軍地蔵に姿を変え、暗闇の中に足を踏み入れた。

「ゆかり。どこにいる?みんなが待ってるよ」




 前田さん?




「ゆかり。俺だよ、勝軍地蔵さまだよ。みんなが待ってるから、そこから出てくるんだ」




 将軍地蔵!でもあたし、何も見えないのよ



「俺には見えない。自分から出てこないといけないんだ。そこはゆかりのいる場所じゃな。そこにいたら、いつまでも何も見えないぜ」




 ゆかりは閉じていた瞼を開いた。しかし何も見えない。


 そこに黒川さんや竹内さんたちがやってきた。ゆかりの名を呼びながら。


 勝軍地蔵?何も見えないんだって・・。あ?でも・・聴こえる・・みんなの声が聴こえる・・


 ゆかりは暗闇の中、身体を起こし、ゆっくりと立ち上がった。


「やっぱりいないんじゃ・・?」

「待つんだ。ゆかりが戻ってくる」と勝軍地蔵。


 ほら穴から突然、手で目を覆いながらゆかりがあらわれた。着衣といえばガソリンスタンドに行ったときに着ていたもので、汚れも見えない。


「まぶしい!どんな光なのよ。いるの?どこにいるの?みんな!」


 晴美がゆかりの痩せた身体に跳びついた。思い切り跳びついたから二人くっついたまま、地面に倒れてしまった。晴美はそれでもゆかりの身体を抱きしめたままで離そうとしない。そこに信子も抱きついてきた。




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