記録戦争③
『『神なる聖域』の効果で俺のLP+2する。そしてドロー』
何かを隠したエンデュミオンのターン終了が宣言され、今度はエンジのターンとなった。
エンジ ライフポイント(LP):10→12
マジックポイント(MP):0→1
ゾーンカードの効果処理でエンジのLPが回復し、更に倒しにくくなるも当のエンデュミオンは表情から笑いを消さない。未だに奥の手が存在しているかのように、だ。
そんな手招きをするかのような微笑みすら浮かべるエンデュミオンにエンジは容赦なく手札を切る。
――このターンで決着を付けさせると言うのだろうと、そう思えるような憤怒の気を身体中から流し始める。
『俺は手札から『聖域の紋章』を発動する。効果でデッキから『聖域の石碑』を手札に加える』
『ほぅ・・・』
Text―――――――
『聖域の紋章』
種族:天使 サーチ
コスト:無し
特殊効果:自身はデッキから『神なる聖域』一枚、もしくは”聖域”と名の付く魔法カードを1枚を手札に加える。このカードは1ターンに一度しか使えない。
―――――――――
『そのまま、『聖域の石碑』を発動する!効果で、手札から『聖域の守護龍 イディアス』を召喚!』
エンジは自動山札から『聖域の石碑』を抜き取ると、そのまま上空にかざして魔法を起動する。
―――召喚魔法だ。
巨大な天門が上空に顕現し、その光の文字と記号と図形の羅列がとある守護龍の身体を形取っていく。
麒麟のような捻じれた二本の角に、神々しい白銀の鎧鱗を纏った六枚の羽根の生えた龍がその身姿を現し、戦場に光を宿したのだ。
Text―――――――
『聖域の石碑』
種族:ドラゴン 天使 召喚
コスト:無し
特殊効果:自身は手札から『聖域の守護龍 イディアス』の①の効果を無視して召喚する。このカードは1ターンに一度だけ使える。
―――――――――
Text―――――――
『聖域の守護龍 イディアス』
種族:ドラゴン ”天使”
コスト:無し P:12000
特殊効果:①このカードは召喚・特殊召喚出来ない。
②場に『神なる聖域』があれば、このカードは相手のカードの効果で手札に戻されず、破壊されず、このカードの打撃力+1し、『2回攻撃』を付与する。
③このカードが連携攻撃された時、自身のLP+1。
―――――――――
『オオオオオオオオオオオオオオオオッッッッッ!!!!!!!!』
強烈な光を全身から放ちながら一匹の聖なる龍が戦場に舞い降りた。
威圧的な咆哮をその身に受けながらもエンデュミオンは涼しい顔だ。
そしてサラッと、
『まだ、あるんでしょう?』
『・・・・ちッ、対抗魔法『連唱魔法 ENCORE』を発動。もう一度、『聖域の石碑』を発動して手札からもう一体の『聖域の守護龍 イディアス』を召喚する』
分かりやすく、図星だと舌打ちをして、エンデュミオンの想像通りにエンジはもう一度『聖域の守護龍 イディアス』を召喚した。
『オオオオオオオオオオオオオオオオッッッッッ!!!!!!!!』
もう一体の大型ドラゴンが姿を現した。
どう考えてもエンジの方が勝っていると、そう思えるだろう。だがしかし、エンジは心の中で盛大に舌打ちをする。
それもこれも、エンデュミオンの想像の内なのだと言うことを理解しているのだから。
現在の合計打点数は12だ。
対してエンデュミオンのLPは9。どう考えたって、エンジの勝ちは目に見えているのではないか。
一体どこに負ける要素があると言うのか。
言葉がエンジの頭を反芻する。
だがそれでも、認めなければいけないのだ。
『足りない・・・・』
手札のカードはとある対抗魔法だが、用途は今ではなくてこの”後”なのだろう。
だが、エンジはこのカードを手札から切るべきか悩んでいた。
恐れているのは、迷宮において、全てを破壊する最強のカードの存在だ。
名を、――『ダンジョン・エクスプロード』と言う。
Text―――――――
『ダンジョン・エクスプロード』
種族:破壊 迷宮
コスト:無し
特殊効果:対抗:自身の場の迷宮6枚以上全てを破壊して、相手の場のカードを全てを墓地に置く。
―――――――――
”破壊する”と、”墓地に置く”は一見同じように見えて、その過程は全く違うものだ。
破壊はそれこそ、魔法や攻撃、効果によって場から退場する。それがほとんどであり、中には『破壊されたら~』で始まる効果も存在する。勿論効果破壊に耐性を持ったカードは存在する。
だが墓地に置くは違うのだ。文字通り、『相手のカードの効果で”破壊”されない』の効果が通じない。破壊するのではなく、墓地に置く。
少なくとも、イディアスなどの破壊耐性はなくなく突破されてしまうのだ。
だからこそ、迷っている。
もしもここで『ダンジョン・エクスプロード』を使うなればエンジは手札の”このカード”を切らなければいけない。
『・・・だが、手札になければいいだけの話だ。アタック&ブロックフェイズに突入する!』
一瞬の迷いも振り切り、エンジによって攻撃の宣言が為される。
それもエンデュミオンの前では鼻で笑い飛ばされるのだが・・・。
『来るがいい。それくらいしか考えていないお前には”負け”がお似合いじゃ』
『イディアス達でエンデュミオンに攻撃!』
エンジの攻撃の号令と共に、二体のイディアスの口から閃光が解き放たれる。
『―――――――オオオオオオオオオオオオンンンッッッッ!!!!』
『―――――――オオオオオオオオオオオオンンンッッッッ!!!!』
打撃2の閃光砲二つ分。合計4ダメージの破壊の波がエンデュミオンに襲い掛かった。
だがしかし、エンデュミオンは微笑を崩さぬまま手札を切る。
強者の風格、いや、ただ単純に人を見下しているのだろう。だからこそ、あそこまで余裕をぶっこくことができる。
『では、対抗魔法『魔王の魔法 生贄の盾』を発動』
『―――なぁッ!!』
驚きに染まった表情がエンジの顔を侵食し、想定外の行動に開いた口に空気が入りっぱなしだ。
Text―――――――
『魔王の魔法 生贄の盾』
種族:魔王 防御
コスト:自身の場のキャラ3枚を墓地に置く。自身の場に”魔王”が居ればコストを無効にする。
特殊効果:対抗:自身はこのターン中受けるダメージを2減らす。このカードは1ターンに一度しか使えない。
―――――――――
『妾は『迷宮 スライム』を三体墓地に置いて効果を発動するわ。効果で妾はその攻撃で受けるダメージは2よ』
『ぐッ・・・』
『こんなカード入れてるとは思わなかった、かしら?あなたのデッキが前と変わってるのと同じように、妾のデッキも変わっているのよ』
得意げに微笑むエンデュミオンに遅れて閃光砲が炸裂する。・・・・・も、
エンデュミオン ライフポイント(LP):9→7
『2回攻撃!』
『『―――オオオオオオオオオオオオンンンッッッッ!!!』』
明らかに怒気を孕んだ口調で、エンジが再攻撃の宣言をする。
だがこれも―――、
エンデュミオン ライフポイント(LP):7→5
『なぁ――――――』
攻撃の手が動く、のように思われた直後、エンジが現実を思い知ることとなる。
もう、攻撃が出来ないのだ。否、攻撃しても意味がないのだ。
連携攻撃は2枚で一度の攻撃。3枚以上の連携攻撃は別のテーマでは可能だが、エンジの持つ”聖域”も”天使”もその連携攻撃が可能なテーマではない。
だからこそ、ここで終わりなのだ。
ダメージ軽減魔法は予想外だった。
彼の喉が音を噛まずに、上唇が小さく言葉をなぞる。
エンデュミオンにはこれまでその手で5回以上やられてきたのだ。何なら他のアバターとの戦争でも『ダンジョン・エクスプロード』であらゆる破壊耐性を持つカードを粉砕してきたのだ。だからこそ、今度の戦争でも『ダンジョン・エクスプロード』で盤面を更地にするものだと、そう思っていたのに。
・・・準備した。まるまる一周間、Ptを貯めてはパックを買い、例のカードを四枚積み出来るように。
・・・・『ダンジョン・エクスプロード』を撃ったあの性悪女の顔を歪ませてやりたかったのに。
エンジは最大限に瞳を歪め、歯ぎしりをしながらターンを終わらせる。
ここで下手に攻め込むのはおそらく悪手だと。
『ターンエンド』
そしてここでエンジの運命は完全に断たれた。
無駄になろうと、ここで攻撃をしておいた方が後腐れなく負けれたと言うのに。
そして――、
『妾のターンじゃ』
圧倒的な殺戮ショーが始まったのだった。




