記録戦争②
『妾のターン。ドロー』
エンデュミオンが自動山札からカードを引く。
そしてすぐさまエンジと同じくゾーンカードを立てた。
『ゾーンカード『魔王城のダンジョン』を発動。効果で毎ターン山札から”迷宮”のキャラクター1枚を召喚できるわ』
エンデュミオンが高らかに声を上げるのと同時に、真後ろにこれ見よがしに暗い雰囲気が漂った見た目”魔王城”が出現した。
Text―――――――
『魔王城のダンジョン』
種族:魔王 迷宮 召喚
コスト:無し
特殊効果:自身のターン中、デッキから迷宮のキャラ1枚をコストを支払わずに特殊召喚する。この効果は1ターンに一度しか使えない。
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『効果を発動して、デッキから『迷宮 スライム』を特殊召喚』
エンデュミオンが扇を閉じて戦場を突き刺す。
すると、間もなくして魔法陣が出現し、そこから汚染物質のような色をしたスライムが飛び出した。
『ぽぎゅ!ぽぎゅぎゅ!』
顔は見当たらないが、明らかに声を発するそれはまさにモンスターそのものだ。
そんなスライムを出したエンデュミオンは不敵な笑みを作る。
『始まるぞ。―――増殖が。・・・・『迷宮 スライム』の効果発動!』
Text―――――――
『迷宮 スライム』
種族:迷宮
コスト:無し P:3000
特殊効果:このカードが出た時、デッキから『迷宮 スライム』を1枚特殊召喚する。
―――――――――
テーマ『迷宮』。
その魅力とは、たった一体のキャラクターが仲間を呼び、数の暴力で物を言わせることだ。
質を重視する”魔王”とは正反対のデッキ。勿論、”魔王”との相性は絶望的に悪い。
そもそも”魔王”は確かに仲間を連れて出ては来るが、決して『迷宮』のように半分無限に湧き出てくるわけじゃない。
”魔王”の恐ろしさは場に一体しかいないのを条件に、強力な盤面制圧能力を見せる点だ。それを除けばただの燃費の悪いパワーのあるカードになってしまう。
故に、エンデュミオンの使う”迷宮魔王”というデッキには違和感が付いて回るのだ。
そうしてエンデュミオンの盤面には『迷宮 スライム』が四体並ぶという異常な状態が生み出された。
どれもこれもステータスとしては高くはない。だが、その分の力不足は量で補うのだ。
そして何より恐ろしいのは、まだこれで終わらないという点だ。
『妾は手札から『迷宮 ゴーレム』を召喚。こやつも増えるぞ』
『知ってんだよ・・・・』
魔法陣から現れたるは、全身角ばった岩石で作られた人型のモンスター、ゴーレムだ。
『ウゴオオオオオオ・・・・』
Text―――――――
『迷宮 ゴーレム』
種族:『迷宮』
コスト:無し P:5000
特殊効果:①このカードが出た時、デッキから『迷宮 ゴーレム』を1枚特殊召喚する。
②このカードは相手自身を直接攻撃できない。
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一体のゴーレムの出現と同時に三つの魔法陣が展開され、更に三体のゴーレムが現れた。
カオスだ。
そしてまだまだ終わらない。
『妾はMP3を支払い、手札から『蘇生魔導士 オルタノート』を召喚』
『ワシが生きとるんだから、お前らも死んでる暇などないぞ?』
出てきたのは杖を突く深緑のローブを着たお爺さんだ。
『・・・・・』
言葉ではなく表情で、エンジがあからさまに嫌な顔をしたのが分かった。
此処に来てまさかの魔法使いを使ってきたのだ。
訳が分からない。一体何がしたいというのか。そんなカグヤの疑問はすぐさまカードテキストによって分かることとなる。
Text―――――――
『『蘇生魔導士 オルタノート』
種族:魔法使い
コスト:MP3 P:8000
特殊効果:①LP1を支払ってもよい。そうしたら、自身の墓地からキャラクター1枚をコストを支払って召喚する。この効果は1ターンに一度だけ使える。
②このカードは単体攻撃で破壊されない。
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ここで出てくるはまさかの墓地蘇生。いわゆる、――墓地ソースと言う奴である。
何を出すかは人次第。妨害を立てるか、はたまた破壊された切り札を再利用するか。
何を出すかによってその人がどんな人物なのかがなんとなく分かる。それはエンデュミオンにも言えたことだ。
『・・・・手札に邪魔なカードが何枚か。・・・使い物にならないのは捨てるまでだ。妾の勝利を支える、そんなカードこそが至高。そう思わない?』
『俺に聞いてるんだとしたら、それは間違いだ。ハンターズギルドは、レアカード全般を重んじる。他のカードとのシナジーを考え、環境をよりよく回るものにする。自身の見栄の為に、わざわざデッキに合わないカードを入れた奴が、そんなことで同意を求めるな』
『つくづく、分からん男よな。姉様のお目付け役はこんなにも無能だというのか?いいタイミングで来なかった手札が悪いのであろうが』
『迷宮魔王。そう呼ばれている割には、お前のデッキには本来入らないはずの暴走龍のカードや、神話のカードが入っている。最近出たURだから入れて、見せ場がなければ捨てるというのか?』
『そうですが?』
平然とした答えに、今度こそエンジの顔が大きく歪む。
『・・・・お前の考えは受け入れられない。だからこそ、ここで潰す』
『やってみてはどうかしら?無理だろうけど。――魔法『可能性の再構築』』
Text―――――――
『可能性の再構築』
種族:ドロー
コスト:無し
特殊効果:対抗魔法:自身の手札をすべて捨てる。その後、捨てた枚数と同じ数だけカードを引く。このカードは1ターンに一度だけ使える。
―――――――――
エンデュミオンが手札から切ったのは、手札を全て総入れ替えする『可能性の再構築』だ。
本来ならば墓地誘発のカードを捨てるために入れられるはずのカード。
だが、エンデュミオンの使い方は違う。
手札に入ってきた使えないカードを見るも無惨に棄てて、次の手札に可能性を見る。非常に合理的だが、人情的には最悪だ。それが自分が見せびらかす為だけに入れたカードなのだからもっと最低だ。
『3ドローするわ。・・・・・うんうん、まぁまぁってところね』
『・・・・・・・』
正直エンジの心境は最悪だった。
本来はレアカードを集め、その本分を発揮できるデッキ構成にして戦争を行うのがハンターズギルドの本懐なのだ。決して見せびらかすために入れることはしない。
だが、新しくハンターズギルドのリーダーとなったエンデュミオンはその空気を刷新し、只のカードオタクの印象が強かったハンターズギルドを、自身の身勝手な物言いで相手を煽りまくる害悪グループへと変貌させたのだ。
そのせいでグループをやめる人も少なくはなく、変にゲームパワーも高いためメンバーでは相手にならなかった。
相手を著しく非難する戦争が発生した場合は運営側が何かしらの罰則を下してくれるのだが、彼女の非難行為はかなりグレーらしく、悪口が出てこないので動けない、そんな有り様だ。
エンデュミオンは満足げな顔と共に、陰湿な悪意を込めた唇をゆがめる。
そして―――、
『妾のターンはこれで、終わり。次の妾のターンに全てが終わるぞよ』
どこかで見た光景が週間トップキング大会の決勝戦争に現れたのだった。




