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FIND FIXER:切り札は、この掌の中に。  作者: パタパタさん・改
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伝説を聞く

 案内役(兼:問題児二人の監視役)が逃げてしまった今、残されてしまった二人の内一人――カグヤは突如放り出されたVRTCG”UW”の世界で右往左往する―――、


 ――ーことは無かった。




 


 「ひゃっほーう!!待ってよ兎ちゃぁーん!!可愛がるだけだからぁ―――ッ!!!」


 壊れない友達募集中☆みたいな事を言いそうな、そんな一人の女子が片手に『勇者の剣』を持ちながら草原の中逃げまどう『羽兎』を追いかけていた。

 ―――紛れもない、彼女はカグヤである。


 今カグヤが居るのは”ダンジョン”と呼ばれる、改訂版のUWが追加した新たな世界だ。制限時間内に倒したキャラの数、もしくは指定されたキャラを倒すことによってこの世界の通貨であるポイント(Pt)を得ることが出来る、”ダンジョンクエスト”をカグヤは現在受けている。

 敵として登場するキャラをアイテムや魔法、自身の召喚するキャラで撃退するゲームシステム。しかし現実は酷なものだった。


 可愛い羽の生えた白兎、それを追いかける刃物を持った女の子。


 どっちが敵だか分からなくなってしまいそうだ。んー、多分女の子の方が敵ですね(嘘です)。

 

 見た目は完全に動物虐待。だがしかし中身はただのじゃれ合いである。


 「やった捕まえた―――ッ!!」


 「ギュアッ!!」


 ザク―ッ!と、カグヤが『羽兎』を両手でつかんだ直後、カグヤの握っていた『勇者の剣』が『羽兎』の頭を刀身で押し潰した。


 「――――あ」


 前言撤回、完全な虐待――というか虐殺だ。

 血は出ない。光の粒子となって消える兎を見るカグヤはというと、「やっちまった☆」みたいな顔をしていた。やっぱ虐待であってんじゃねぇか。

 しかしまぁ、やってしまったのはあくまでもキャラクター。VRの生物だ。やってしまったところでグロなんて出ないし、動物愛護団体も口が出せない。


 まぁつまり――、


 「ごめんね兎ちゃん・・・・、――次探そうか・・・」


 やり放題、そういうことである。


 密猟者カグヤが次の獲物を探そうと立ち上がる。

 ちなみに、今の『羽兎』だがレア度がノーマルなので10Ptだ。命に値段をつけるなんてどうかしてるかもしれないが、よく考えてみてほしい。元がカードなのだ。つまり『羽兎』は10円ストレージの常連と言うことである。命ではない。カードだ。これ大事。


 と、血に飢えたカグヤは次の獲物を見つけた。


 全身半透明の緑色の液体みたいな生物、スライムだ。


 一見草原の色と一緒なので見間違うこともあるかもだが、カグヤの目は誤魔化せなかったようだ。

 目と口がどこにあるかなんてわかりゃしねぇ。だがそんなことはカグヤにとってはどうでもいい情報だった。


 「キィエエエエエエエエエエエエエエエエッッッ!!!」


 「ぽぎゅッ!!!」


 サルもドン引く雄たけびを上げ、『勇者の剣』片手にスライムに飛び掛かるカグヤ。もはやコイツが敵キャラだ。じゃなきゃ目の前の状況に説明が付かない。

 思い切り『勇者の剣』をスライムに突き刺し、グリッと回して引き抜く。確実に生物を仕留めるやり方だ。


 「これでまた一体・・・・レア度分からないけどまだ足りない・・・」

 

 断末魔を残して光の粒子となって消えるスライムを尻目に、カグヤの闘争本能は熱を更に帯びていく。コイツを討伐対象にした方が世界の為にもいいのではなかろうか・・・。

 一般の女子高生のする目とは到底思えない、血走った眼が周囲の環境を見渡す。同じ人間だとは思いたくない・・・。


 「――――居た!」


 今度は空を飛ぶ鳥だ。『幸せを呼ぶ青い鳥』の名称を持つその鳥のレア度は脅威のGR、倒せば200Ptが手に入る。


 だがしかし、空である。弓矢系統のアイテムならまだしもカグヤの持つアイテムは剣。投げようにも投げるアイテムではないので投げられない。ならどうするか?


 答えは簡単。

 

 剣で攻撃できないのなら魔法を使うまでだ。


 「対抗魔法カウンターマジック『火魔法 フレアフラム』!」


 デッキからカードを引き抜き、そのまま魔法を発動する。

 飛び出したるは緋色の魔法陣、そしてその門を媒介に炎の球が飛び出した。

 狙いは勿論青い鳥。今夜の晩御飯は焼き鳥だ。


 「きゅぴッ!?」


 だがしかし不幸なことに、カグヤの魔法を事前に察知したのか、青い鳥は急旋回してその魔法攻撃を避けたのだ。なんてこった、幸せを呼ぶくせに不幸を呼びやがった。青い鳥の風上にも置けやしねぇ。

 この通り、VRと言えど生物は簡単にはやられてくれない。レア度が上がれば上がる程倒すのが難しくなるのだ。


 「なら、当たるまで当てるまで!!」


 しかしカグヤは諦めてない。

 なぜなら彼女には不屈の闘争心がある。つまり何もない。

 言い直そう。彼女は欲が全身から溢れ出しているのだ。


 UWを始めたカグヤにとって、200Ptは大きな価値を意味する。カードのパック(1パック=160Pt)を一体で賄うことが出来るのだ。

 ならば、数を撃ってでも手に入れたい代物なのは確かだ。


 「対抗魔法カウンターマジック『火魔法 フレアフラム』、『火魔法 フレアフラム』!!」


 今度はしっかりと二段構えだ。

 一発は囮、一発は本命だ。

 

 そして見事カグヤの策は功を奏し、一発の魔法を避けた先に待ち構えていたもう一発にモロに突っ込み、青い鳥が焼き鳥の代わりにPtを残して光と共に消滅した。

 

 「フォオオオオオオオオオオオオオオオオッッッ!!!!!」


 火の玉で鳥を焼いたカグヤが歓喜の声を上げる。

 おそらく現地民だろう。ここまでゴリラやってる女子高生も珍しい。多分頭は縄文時代で止まっている。人類の進化が数千年遅れているのかもしれない。


 『幸せを呼ぶ青い鳥』、その名の通りにカグヤに幸せを運んだ青い鳥。幸せとは何なのか、それがあの鳥が残した人類への問いかけなのだろう。知らんけど。

 ともあれカグヤは喜んでいる。なら別にいいか。幸せなら、オッケーです。


 「次の獲物だッ!次の獲物ォ・・・・ッ!!」


 ノッたカグヤはもう、人間をやめかけていたのは内緒だ。







 「全部で、・・・350Ptだね。初心者さんにしては、随分と稼いだ方だね」


 「350Pt・・・・」


 制限時間が過ぎ、ダンジョンセンターに転送されたカグヤに告げられたのはダンジョンクエストでの成果だ。

 その結果にカグヤは残念がる。そりゃそうだ。16体倒して得たPtがそれだけなのだから。

 

 「うぅ~~、もうちょっと稼げたと思ったのに~~・・・・」


 「ま、ゲーム始めてまだ数時間ならこの結果は良い方だよ。普通は初心者さんだと300前後だからね」


 渋い顔をするカグヤに店長の男が陽気に励ます。それでもカグヤの表情は良くならない。

 そんなカグヤだが、店長に質問を投げかけた。


 「どうやったら沢山Ptを稼げるんですか?」


 「ん~~、まぁ一概にはなんとも言えないけども、アドバイスするなら”沢山このUWで過ごして、プレイ時間を稼ぐ”かなぁ・・・」


 「プレイ時間を稼ぐ~~・・・・?」


 分かってないような表情をするカグヤに店長は言う。


 「パックの高レアカードの封入率のシステムと同じでね。プレイ時間に比例して、レアキャラの出現率が上がるんだよ。確か分母が元々設定されてて、”何時間遊んだら分子は1で、何十時間遊んだら分子は10で・・・”とかそんな感じだよ。だからPtを稼ぐには沢山遊ぶ。これに尽きるんじゃないかな」


 「何十時間って・・・・スゴ」


 「此処は改訂後に開設された世界だから大丈夫だけど、パックの方は昔はすごかったって聞いたよ」


 「パック・・・?」


 カグヤが怪訝な顔で尋ねる。プレイ時間と比例してレアカードの封入率が上がる。そんな設定だったか、それがどうかしたのかという顔だ。


 「昔はパックの方は分母が確か1万時間だったかで、”とあるアバター”のプレイ時間が4万を越えちゃってて、それで6枚入りパックのカードの内4枚がレア度UXとか言うバケモノ仕様、他がGXとかだったかな?それで、そのアバターだけ馬鹿強くなっちゃって環境が荒れに荒れたって聞いたな・・・」


 「それはヤバすぎ・・・・」


 「多分そのアバター、当時のUX、GX、UR、SRのカード全種上限枚数持ってるんじゃないかな?」


 「うわぁ・・・・」


 カグヤが引くのも仕方がない。その”アバター”とやらは現在カードの最高レアリティ”UX”以下のカードを全種揃えているのだ。環境をたった一人で荒せるなど、カグヤのような初心者プレイヤーにとってはUW界の神か、悪魔だ。

 それほどまでの功績を持っているアバターはさぞかし強いのだろうと思うと、カグヤの心は不思議と高鳴っていた。

 

 「会ってみたいな、そのアバターの人に」

 

 無意識の内に、そんなけったいな事を口ずさんでいたくらいには、だ。

 

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