初めての戦争②
「んじゃ、僕のターンってことで。ドロー」
淡々とした表情でカードを引くレッドワーフ。手札は現在5枚、MPは2。此処からどう攻め上がったものか・・・。
割と追い込まれている状況にも関わらずレッドワーフはイマイチ危機感と言うものが欠如しているのかと思われてしまう、そんな日常的なのほほんとした表情だった。
だがしかし、やることはえげつなかったようだが・・・。
「・・・・うんうん、何とか大丈夫か・・・?次のターンまで持てばいいが・・・」
「何独り言言ってるの?」
「いや、なんでも・・・。それじゃぁ僕は『土魔法使い ロック』、『水魔法使い ウォータ』を召喚」
Text――――――
『水魔法使い ウォータ』
種族:人 魔法使い 水
コスト:MP1 P6000
特殊効果:1ターンに1度、自分の使う魔法のコストで払うMPを1少なくする。
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『全身を土に半身浴することにより、大地の恵みを感じることが出来る』
『全く、我が主は人使いが荒い・・・』
土色の変態魔法使いと、やけに清々しいというかキザな男が現れた。全身が透き通るような蒼で統一された服装で、手にはこれまた波を表現するような装飾が施された杖だった。
「まぁ今のままだとジリ貧だから、魔法発動『魔法サーチャー』、『連唱魔法 ENCORE』を発動。手札2枚を入れ替える」
Text――――――
『魔法サーチャー』
種族:ゲット
コスト:MP1、LP1
特殊効果:デッキから魔法を1枚手札に加える。このカードは1ターンに1度しか使えない。
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Text――――――
『連唱魔法 ENCORE』
種族:無
コスト:無し
特殊効果:対抗:このカードを使用する前に発動した魔法と同じ効果を得る。このカードは1ターンに1度しか使えない。
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2枚の手札を犠牲にデッキの中から魔法2枚を手札に加えるレッドワーフ。どう見たってUWをやったことのある人の戦い方だと、カグヤは思った。
しかし彼、レッドワーフは初めてのVRTCGのはずだ。カグヤもレッドワーフに褒められるくらいには初見でのカードの扱いが長けていた。だが彼は別格だった。
そう思わずにはいられない程に、レッドワーフのカードを見る目は”初心者”と言うには色々足りないと、そう感じられた。
「・・・・・まぁ、スタデでここまで回せるんならまだ良い方だな・・・・。アタック&ブロックフェイズに入る。アルター、ウォータでシンに連携攻撃!」
『くっ!このクソガキが・・・・ッ!!老い先短い老人をォッ!!』
『すまないが、これも仕事だ』
老人が憎々し気にレッドワーフを見、キザなイケメンは憐れみを込めた礼節でシンに頭を下げる。だが攻撃の手は緩めない。
合計攻撃力8000の暴力がシンに吹っ掛けられ―――、
「対抗魔法『冒険者の盾』。効果で攻撃を無効にする!」
カグヤの詠唱により、シンへの攻撃が目と鼻の先程になったところで、シンとアルター、ウォータを分断するように大きな魔法陣の盾が出現した。
Text――――――
『冒険者の盾』
種族:冒険者 防御
コスト:無し
特殊効果:『対抗』:自身の場に冒険者が居る時、二つの内一つを選んで発動する。
①ダメージを0に減らす。
②その攻撃を無効化する。
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『何!クソガキが!!防がれたじゃろが!!』
『なるほど、そう来ましたか・・・』
『これでなんとか耐えれたか・・・・』
少年に檄を飛ばす老人、少女の動きに感心するキザ、そして安堵の声を出す白髪イケメン。今さっきまでの戦闘が嘘のように、三人がそれぞれの立ち位置に戻って行く。
それを見ながらカグヤは安心とも不安とも取れるような溜息を吐く。
「なんとか、耐えたわ・・・・」
「そうだな。これで僕はターンエンドだけど」
「・・・ッ!そうだった!私のターン、ドローッ!!」
相変わらず何処か掴めないような話し方をするレッドワーフ。だが、カグヤにとってはそんなことは日常茶飯事らしく、そのままターンに入った。
勢いよくドローし、手札に加えたカードを見てカグヤが現実に直面した中二病のような悲鳴を上げた。
「え・・・・嘘。・・・・・えぇえッ!!待って待って・・・・まさかぁ・・・・」
「ふぁーッ!!」と、ドローしたカードを見て衝撃を受けるカグヤ。まさかシフルをドローしたのかと、そう思うのが普通だ。普通なら・・・・。
「・・・・」
レッドワーフは不思議なことに動揺すら見せなかった。
だが今にも聞こえてきそうな程の心の声が彼を揺るがした。
『・・・・勝ったな』
もしここで引いていたのが”シフル”だったら負けていただろう、と。
レッドワーフは軽く息を漏らす。運も実力の内とは言ったものだが、どうやら運にだけはまだカグヤも魅入られてはいなかったようだ。
そんな心内でガッツポーズを決め込んでいるレッドワーフを置いて、カグヤは無い胸を張って手札の1枚を大げさなポーズで召喚する。
「出でよ!我が最強の騎士にして冒険者の頂点!MP3を支払って召喚!『冒険者の王 ヴィルギルト・ヴァンヒレイ』ッ!!」
『吾輩は今一度何時に問おう!戦う意志はあるかぁ―――ッ!!』
魔法陣から姿を現したのは全身を金属の鎧で固め、やけに歴史を感じさせるマントを背負った、現代を生き抜く企業戦士の風貌をしたイケオジだ。その黒鉄で彩られたごつい鎧にはところどころに傷や凹みが有り、それだけで只者ではないことが窺える。
そんな歴戦の猛者がカグヤに問う。
「勿の論!私はあの世の中の醜悪な事を煮え詰めたような顔面をしている幼馴染、レッドワーフに勝ちたい!!あのひん曲がった根性を叩き直しておかないと人生の100%損をする!!」
『よかろう、ならば吾輩はその思いを剣に掲げ、力を振るおう!!』
「オイコラ聖歌&クソジジイ、僕程の善良な人間に対してなんちゅう見識してんだ」
どの口が「善良」なんて言葉を吐くのかとそう思ってしまうほどにはレッドワーフは自分を買いかぶり過ぎていた。
しかしまぁそんな腐った眼もまたクソジジイのテキストを見て余計腐らせることになるのだが・・・。
Text――――――
『冒険者の王 ヴィルギルト・ヴァンヒレイ』
種族:人 冒険者 王
コスト:MP3 P:12000
特殊効果:①自身の場の”冒険者”全ては『2回攻撃』を得る。
②このカードが場を離れた時、自身はカードを1枚引く。
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「・・・・全体『2回攻撃』付与か。いざ出されてみるとアレだな。OCGで麻痺ってたから今の今まで脳ミソがグダってたけど、バケモンかよコイツ・・・」
レッドワーフがここまで嫌悪感を極めた様な声を出すには理由がある。
彼はOCGのUWをやっていたのだ。
一見関係のなさそうな話に聞こえるが、実は案外そうでもないのだ。
紙版のUWはとことんカードパワーが端から端までイカレ散らかしており、環境の主流は妨害ではあるものの、平気で『攻撃時場のカード全破壊』や『相手は戦争に敗北する』とかいう人権無視も甚だしいカードが飛び交っているのだ。
そんな世紀末環境の中でゲームを楽しんでいたのがレッドワーフだ。
当然カードパワーがイカレ切っている世紀末現実とは違い、VRの環境カードは確かに鬼畜だがそれなりにちゃんとカードパワーが制限されており(妨害系除く)、先攻でゲームが終わるようなことは無い。
だがしかし、現実の厳しさとイカレ具合に混ざっていたレッドワーフにとってはVRのUWはどうにもカードパワーが無さ過ぎて味気ない、と感じてしまう。
「でも実際、カードパワーがお互い低いデッキだと妙に強いの出てきたら『Wow!』ってなるな」
現実と言う名のVRに慣れてきたのか、現実と言う名のリアルの毒気が抜けたレッドワーフの台詞がこれだった。




