第三話 三人の王子達。
「身分証を出せ。」
そう門番が言ってきた。
「身分証だな?」
ギロリと睨むと、門番はひるんだ様子を一瞬見せるがそれでも任務に全うする姿勢を見せる。【殺気】や【威圧】を与えるのも芸は無い。いつもやっている事だ。
いつもとは違う事をしよう。
そう考えた俺は羽を出した。
「まさか?天人?」
「あんな、なんちゃってと一緒にしないで!」
「ナベリウス様のこの神々しい黒い羽を見ても、そんな事しか言えないとは学が無さすぎですね。」
門番の漏れた言葉に厳しい眼差しで、ナリ―タとギャネックが詰め寄る。
二人とも美人であるので、詰め寄る圧が何倍か増しになっている。
門番の男が泣きそうになっているのはお愛嬌だろう。
「ほ、本物だという証拠は!」
苦し紛れの一言。
仕方がないので、俺は飛び上がる事にした。
「なっ!」
門番の声が小さくなっていく。
姿も小さくなる。かなり上昇した所で、停止した。
ここまでは、付き合いでした事だ。
ここからは興が乗ったが故の行動。
上空に停止した俺は下から良く見える様に、火の大きな球を作り出す。
そしてそれを持ったまま、下へと急降下する。そして、城にギリギリ影響を及ぼさない位置で停止させた。俺は地上へ降りてくる。
「どうだ?証拠は見えたか?」
◇◇◇◆◇◇◇
「「先ほどは、門番が大変失礼しました!」」
今、俺の前で頭を下げているのはこの公国の公王と宰相だ。
「かまわぬ。それよりここに来た理由は、もう話した通りだ。王子達に会わせてくれ。あぁ、それと公王にも宰相にも俺には用は無い。この城を亡ぼすつもりも無いから安心して、王子達だけをここに連れて来てくれ。」
「かしこまりました。」
大声で恭順の姿勢を示す公王。
あれだけ、大きな火球を見せつけられたら、まぁこうなるだろう。
公王と宰相は直ぐに部屋を出て行く。
少しして、王子達三名が、この謁見の間にやって来た。
一人は落ち着いた様子で。
一人は悪態をつきそうな様子で。
一人は明るく恭順の様子で。
分かり易い。
兄弟であろうに、様子が全く違う。
腹違いとはいえ、民衆の評価はそれほど間違っていないのかもしれない。
「私どもに、用があるとか?」
「一体どんな用があるのでしょうか?」
「お会いできて光栄です。」
ただ、民衆の評価は全てが当たっている訳では無い様だ。
「俺が会いたいと思ったからだ。」
「はん!ただそれだけで呼び出された俺達は迷惑極まりないな。」
「よせ、セアズ兄さん。相手は使徒様だ。」
「それも本当か分かったもんじゃねぇじゃねぇか!」
「使徒様に不敬だぞ兄さん!これだから兄さんはダメなんだ。」
悪態をつく第二王子ゼアス。それに対抗するかのような第三王子アロズ。
まぁ予想通りだ。
しかしそんな、やり取りをみていたナリ―タが爆発しそうな様子を見せる。
グッと我慢している様だ。
俺は敢えてそれを放置する事を選ぶ。
「ところで、カマズ王太子。聞きたい事がある。」
「何でしょうか?」
「お前の評判は民衆から聞く事は出来なかった。一体何を考え行動している?」
「さて、民の評価は知りませんが、私は常に国の為を考え行動しておりますよ。」
「ふむ。ではお前は考えて行動していると言いたいのか?」
「どの様に捉えられるかは分かりません。しかし、目立てば良いという事にはならないのではないでしょうか?世間には見る事が出来ない事をするのも必要ではないでしょうか?」
「さようか。」
まぁ、合格点だろう。
後の二人は・・・。もう良いだろう。話にならない。
知らぬ相手に敬意は必要だが、最初から信じ過ぎてもダメだ。
つまり、馬鹿なのだ。
逆に優秀な長兄に上手く使われているのだろう。
「で、今回の侵略に対する策はあるのか?」
「もちろん有ります。が、どうやらそれを使う必要も無くなりそうですね?」
面白い。俺達の情報も少しは手に入れているのだろう。
そこから推測したのだろうな。
「くっくっく。面白い。良いだろう。」
「合格で御座いますか?」
「合格だ。」
俺は片手を上げる。帰る合図だ。
「なんだ!呼び出しておいて、王太子だけと話すとはどういうつもりだ!」
そんな事を言う弟ゼアス第二王子を信じられないという顔で見るカマズ王太子。
そして第三王子アロズに至っては殴り掛かろうとしている。光と闇はどうしようもないな。
そう思いながら、【威圧】を放つ。
三名は一気に当てられた【威圧】によって、跪く。
頭を下げるのが当たり前であるかのように。
「わかったかな?ゼアス第二王子よ?」
「は、はい!」
声は裏返っている。
「俺は、ラーダの宿に泊まっている。何か言いたい事があれば、何時でもくればいい。俺が居なくても眷族の誰かが居るだろう。期間は一ヶ月だ。一ヶ月経てば、俺は居なくなる。その事も忘れるな。」
俺達は、動けない状態の王子達三名を残して俺達は謁見の間を後にした。
◇◇◇◆◇◇◇
「あれだけで、良かったのですか?」
「いっその事、首を落としてやればよかったのでは?」
ナリ―タとキャシーがそう言ってきた。
「それでは、キャシーさんが言っていたやり過ぎではなくて?お尋ね者にナベリウス様をしたいのですか?」
ギャネックがキツイ一言。
「ギャネック。そう言うな。二人も俺が馬鹿にされていると思ったからこその発言だろう?」
「「はい。すいません。」」
「今回はこの国を潰す為に来た訳じゃない。俺が純粋に会いたかっただけだ。だからあれで良い。次からは、無謀な事はしないだろう。」
そもそも、次はない。もう直接会う事はない。
この国に今後用事が出来るとも思えない。
「気を取り直して、宿でゆっくりしようじゃないか。買い物がしたい奴は好きにすると良い。」
そう、指示を出した。
ナリ―タ達は話し合い。
結果、俺はギャネックとミーシャとスーザンの三人を伴い、高級宿:ラーダに戻るのであった。




