第一話 俺はナベリウス。ハデス神の使徒。
俺は、冥界の王ハデス神の使徒ナベリウス。
色々あって、俺は家名を捨てた。
まぁ、家名どころか、国迄失ったのだから、家名なんぞあっても意味は無い。
それに、神の使徒である俺に家系は関係ない。
あるのは、己の力のみ。
しかし、最近はどうにも調子がおかしい。
ザバルティとか言う名前の男に対面してからだ。
いや、スタートは煉という男に出会ってからと言っても過言じゃないだろう。
とはいえ、俺の使徒としての使命は【ハデス様を楽しませる事】だ。
この世界の人々からは邪神として恐れられた存在のハデス様の使徒である俺も、畏怖される存在だ。
俺は単純に、最強・最賢という存在になりたいと願っている。
前世の記憶は『己の死んだ刻』だけだ。
部下に殺された事実と『あばよ。また会おう。仁』という言葉だけだ。
今の俺にはサッパリ意味がわからない事だがな。
で、今の俺は色々あり、眷族という仲間を統べる存在となった。
最初は13人居た眷族も今は11人。
2名は離脱した状態だ。
これについては、ザバルティという名の使徒との約束を交わした事で、確約となったわけだが、後悔はない。アイツら二人は、状況に同情の余地がある。
それに、どうもギャネックが教え子二人をこちらの世界から解放してやりたかった節がある。その考えには俺も賛同できる。
俺も好きにしているんだ。
眷族も好きな事をして良いだろう。
ただし、好きな事をした後の責任は自分で負わなければならないと思っているがな。
若すぎるあいつ等はここに居ては自分で考える事は出来ないだろう。
選択を与えてやりたかったのだろうと、俺は考えている。
「ナベリウス様。全員揃いました。」
「わかった。」
暇つぶし的に考え事をしていた頭を現実に戻す。
目の前には11名の眷族が並んでいる。
「さて、目的地は決めていない。どうせ、暇つぶしを兼ねている。皆は何処へ行きたい?」
「私はナベリウス様が行かれる所でしたら、何処へでも。」
ギャネックは直ぐに答えた。
他の者も意見は同じ様で、頷くばかりだ。
「それでは、決めれないでは無いか?」
「ですが、それは事実です。」
代表するかのように、ナリ―タが答えた。
「ふぅ。困ったな。では適当にぶらつくか?」
「それは楽しみです。」
目を輝かせて答えるのは、ヘレンだ。
美人揃いの眷族の中で、一番のお調子者だし、色々な事に興味を良く持つ。
「そうか。では先ずは南西へ飛ぼう。カーリアン帝国の南西に位置するクセニッツ帝国へ行くか?」
私は、皆に改めて投げかけた。
それに対して、キャシーが直ぐに反応した。キャシーはナリ―タの参謀として活動していたから、今もその側面が強い。
「ふふふ。それでしたら、ついでにカーリアン帝国の侵攻を全て潰してやっては如何でしょうか?」
「それは、面白い。」
それに同調したのは、いつもは黙っている事が多いミーシャだった。
暗殺や情報収集が得意な彼女は寡黙である。喘ぎ声の方が会話より聞く回数が多い程に。
「そうだね。どうせなら、その方が面白いわね。」
大きな頷きと共に、シャリーが同調した。回復魔法の使い手が戦闘狂の様な発言に俺は笑った。
「そうそう、復讐も兼ねて邪魔してやりましょうよ。」
更に、ジェリーも同意見の様だ。
さらに、他のアクア、ヒラリー、シャーラ、スーザンの四名も頷いていた。
「決まりだな。」
俺は辺りを見回して再度確認をする。
やる気満々の表情を見せるメンバーを見て最終決断を下す。
「先ずは、中央に位置するシュタイア公国に入る。公都は確か?」
「ダチアです。鶏肉料理が有名ですね。」
「そうそう、鶏肉のから揚げは文化だそうですよ。」
ヘレンとギャネックの博識が披露される。
「そうか、では先ずはその公都ダチアに先ずは向かおう。」
「「「「「はい。」」」」」
俺の頭の中には権力者の思惑を思いっ切り潰してやろうという事を描いていた。
先ずは、カーリアン帝国に痛い目に遭わせる。
今までみたいに、温存した力ではなく、一気に発揮してやろう。
チートスキルと呼ばれた。あの三つのスキルを同時に活用するのも面白いだろうな。
魔獣支配・昆虫支配・死霊支配の三つの支配系チートスキル。
相対する事になる人間にとって、精神的苦痛を強いる怖しいスキルだ。
人間に比べて個々の力に勝る魔獣が指示に従った行動をとる。
人間に比べて圧倒的な数の力に勝る昆虫が指示に従った行動をとる。
そして死を迎えた生命体全てが指示に従った行動をとる。
しかも、死んだら同じように戦力になってしまう。
怖しい経験を間違いなく、カーリアン帝国の者達は感じる事になるだろう。
少なくとも、遠征は取りやめになるだろう事は、想像に難くない。
まぁ、そのまま侵略を続けられても俺達には影響が少ない。
「面白いと思って頂ける事だろう。何せ、守られている側も襲われるかもしれないのだから。」
「確かにそうですね。支配を解いたらどう動くかは、魔獣は特に分かりませんからね。」
つい笑ってしまう。
こういう所が邪神の使徒なのかもしれないな。
腐った王国であれば、そのまま魔獣に蹂躙させてしまえば良い。
虫に滅ぼされた国というのも、面白いかもしれないな。
俺の使命は【ハデス様】の喜ぶ事。面白いと感じる事をする。
ただそれだけだ。ハデス様はどれを喜ぶのだろうか?
それは俺にはわからない。だから、心の赴くままに動くだけだ。
国が腐っているのは、何もトップだけの責任じゃない。
その周りもそうだし、その下の者も結果、何も考えず付き従っているのでは、同じムジナだと俺は思う。嫌なら抵抗すれば良い。清廉潔白である必要は無いが、自身で考える事を止めたら、その時点で人間ではない。俺はそう考える。
ただし、子供は別だ。未熟である子供は教育次第で何とでもなる。
全ての子供を攫うというのも面白いかも知れんな。
俺が、先の事を考えて笑っているとナリ―タが手を合わせた。
「さぁ、私達の再スタート。キッチリやってやりましょう。」
そう言って、皆を見渡す。
熱気が高まる。そんな感じを受けた俺は、声を上げて笑った。




