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第四話 神との邂逅。


俺は意識を手放した。

いや、違うな。

『意識を失った』の方が正しいな。

まぁ、首を刎ねられて意識を保てるなんて驚きだがな。

でも、斬られて直ぐでは無かった気がする。

体から首が離れて少しして意識が飛んだんじゃないかな?


まぁ、そんな事は今現在どうでも良い。

それよりも、今は他の事が問題だ。


これは、どういう状況なんだ?

今の自分の状況が分からず、辺りを見回す。

思う様に体を動かせない。

いや、これは所謂、精神体になっているのか?


真っ暗な空間を漂う感じで、ずっと流されているような感覚を味わっている。

海で漂流する感じはこんな感じなのか?

そんな事を考えていると、徐々に焦りは無くなってくる。

そうか、流れるプールに浮き輪で浮かんでいた時の感覚に似ているな。


はははは。


落ち着いてくると、諦めに似た感情も同時に芽生える。

上手く言葉も発する事も出来ない。


ちなみ、俺はお天道さんに顔を向けられないような事はした事は無い。

だから、地獄に落ちる事は無い。

そう思っている。地獄があったらの話だがな。


つうか、アイツらは上手くやっていけるのかよ?

俺が死んだ後に。

オヤジにも悪い事したな。

俺の意地の所為で、殺されるとか。

ありゃ、ねぇな。


あれ?他人事?


自分の事のハズなのに、徐々に他人の事の様に感じる。

そういやぁ、ミサと会う予定にしてたな。

ミサ?

顔が思い出せない。

記憶が失われてきてるのか?


いつでも死ぬ覚悟はあった。

だが、身内には迷惑はかけたくないと思っていた。

本当の家族。

そして組織の元親。

だが、結果は少なくとも組織の元親は俺の前で殺された。


つうか、元親って誰だっけ?


そういやぁ、凛が何か話したそうにしてたな。

リンってどういう字を書くんだったか?


こりゃ、益々、記憶が無くなってるのは確かだな。

仕方ねぇか。死んだんだしな。


そう諦めよう。

だけど、どうにも燻る感情がある。


忘れるのはダメだと言う思い。


『あばよ。また会おうぜ。仁。』


確かに、アイツはそう言った。

サ、ト、シ?

アイツは何故、殺す相手にそんな言葉を吐いた?

タ、ク、ミ?

に殺された?誰が?部下?俺?それとも別の誰か?

朦朧としてくる感じとはこういうのだろうか?


記憶を失い、色々な事が曖昧になってくる。


・・・ダメだ!

他の事は忘れても、『自分が死んだ刻』の事を忘れてはいけない。

いけない気がするんだ。あれだけは、忘れてはいけないはずなんだ。


誰か、助けてくれ!

忘れたくない記憶がある!


最強で最賢を目指した俺も、死ぬ。


だが、『自分が殺された刻』の事だけは、どうしても忘れたくない!

魂が、そう俺に告げる。アレだけは忘れてはならないと。


だから、神様。

この俺を助けて欲しい!


そう強く願った。



◇◇◇◆◇◇◇



『自分が殺された刻』の記憶だけは、サラサラと砂が崩れる様消えていく記憶の中でも残った。


ただ、今となっては、『この記憶が絶対に間違ってない!』

と断言できるモノでは無くなってきている。


『あばよ。また会おうぜ。仁。』


その言葉と、自分が部下に殺されたのだ。

とう事だけが、頭に残っている。


俺はどうなっていくんだ?

誰も助けてくれないのかよ?

助けてくれよ。神様。

俺は更に強く願った。



◇◇◇◆◇◇◇



あれから、どれ位の時間が経ったのだろうか?

時間を知る為の道具も無ければ、概念があるのかも疑わしいこの場所に居るから、そもそも無理があるのかもしれない。


もしかしたら、10分しか経って無いかもしれないし、10年いや、100年経ってるのかもしれない。

時間の感覚も失われた。


そんな感情すらも失われそうになっていた時だった。


俺は、何かが俺を包み込むような感覚を感じた。

想像するなら、水の上に漂う葉っぱを手で抄う。そんな感覚だろうか?


そして、圧倒的な存在が、今、俺を包んでいる存在なのだと、理解させられた。

それは奇しくも、想像通りに大きな存在に抄われた形で間違いないと思わされた。


『くっくっく。お前は中々に面白いな。』


「?」


『お前に話しかけているんだ。理解しているのだろう?』


≪言葉を発しても宜しいのでしょうか?≫


俺は心でそう、答えた。

しかも、敬語でだ。圧倒的な上位の存在と会話すると、自然とこうなるモノなのかもしれない。

記憶が無くなったのにも関わらず、こういう事が出来るのも不思議なモノだと思う。


『ほぉ、俺様の格に気づいたか。良いだろう。許可する。』


「ありがとうございます。貴方様は一体?」


『おおよその検討がついているのではないのかな?』


「はい。神様でございますね。」


『あぁ、そうだ。だがまぁ、お前達人間からは邪神と呼ばれる事の方が多いがな。』


苦笑しながら答えてくれる邪神と名乗る存在。


『まぁ、そんな事は些細な事だ。で、お前にもう一度、人生を送らせてやろうか?』


「それは、どういう事でしょうか?」


『人はそれをなんと呼んでいたかな?転生だったか?』


「転生?また、最強最賢を目指せるのですか?」


『まぁ、そうだな。人生を送れるのは確かだ。』


「もう一度、人生を送りたいと思います。」


『良かろう。但し条件がある。』


「条件?」


『そうだ。≪邪神の使徒≫になってもらう。』


使徒?神の意向の具現者になるという事か?なると、どうなるのだろうか?


「なる事で、何かあるのでしょうか?」


俺は恐れながらも素直に聞いた。


『まぁ、特に無い。無いが、俺様の意向には従ってもらう事になる。それ以外は自由にして構わん。』


「そうですか。ぜひ、使徒にさせてください。」


『では、ここに契約が成立だ。一つその前に言っておく、使徒は自らが辞めたいと思っても辞める事は出来ん。こちらが、一方的に解除する事はあるがな。それでも良いのか?』


「はい。構いません。お願いします。」


『良かろう。では、次の人生を楽しめ。そして、俺様を楽しませろ。』


「はっ!」


俺は同意した。邪神様を楽しませる事。それが俺に課せられた使命だ。


『俺様に名は、ハデス。冥界の王だ。』


その言葉を聞いた瞬間に俺の意識はふっと消えた。



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