第六話 眷族と眷族。
【眷族】とは本来は以下の事を指す言葉だ。
① 血筋のつながっている者。一族の者。身内の者。親族。
② 従者。家来。配下の者。
血縁関係の眷族は子供や孫等のルーツがある。
ナリ―タ等のナベリウスから血を与えられた眷族は身内、親族に近い。
命名の眷族は従者や家来に配下である。
今回の漆黒竜ベネボレスは従者や家来に近い。
どちらも上下関係が存在する。
ナベリウスを頂上に置いた眷族でありながら、発生が違うのである。
「ナベリウスを友として従うが、お主はどうしたいのじゃ?こんな辺鄙な所を?」
「俺の国とするつもりだ。面白い事がしたくてな。」
「ほぉ。それで何人を民とするつもりじゃ?」
ニヤリと口角を上げる漆黒竜ベネボレスは想像できているのだろう。
「もちろん。生きとし生けるモノ全てだ。」
「そうか。それは面白そうじゃのぉ~。」
「だろ?」
二人はいくつものクレーターが出来た平地を火山の上から見下ろし、杯を酌み交わす。
「美味い。」
「く~!美味じゃ。」
「これはな、日本酒という酒だ。」
「ほぉ~。」
目を細めて朗らかな顔になり嬉しがる漆黒竜ベネボレス。竜は酒が好きなのはどこでも共通事項なのかもしれない。
「異世界の文化らしくてな、ある≪神の使徒」がこの世界で再現させた物らしい。」
「ほぉ。お主以外にも≪神の使徒」が居るのか?」
「あぁ、居る。そしてかなり強い。」
「くっくっく。お主が認めるという事は期待出来るのぉ~。」
これも世界の共通なのか、漆黒竜ベネボレスも戦闘が好きなようである。
「そうだな。世界の安定が奴の使命なら敵対する事もあるだろう。その時は存分に楽しめば良い。」
「ふむ。今から期待で胸が熱くなるわい。」
ブンブンと漆黒竜ベネボレス少年は腕を振り回す。
今は、角を出している状態だが、どうやら隠す事も出来る様だ。
ただし、少年のから大人への姿変更は出来なかった様だ。
現在は人間なら12歳位の姿である。ナベリウスの眷族の女達がかわいがるというのも頷けるというものだ。何せ顔も将来はイケメンであろうと思わせる整った美形なのだから。
今なら髪が長い事もあって、服装さえ整えれば、女の子としても通用する姿なのだ。
「この間、来た時に申していた用事とは何だったのじゃ?」
「あれか?侵攻していた国の軍を襲撃、撃退する事だ。」
「ほぉ。面白そうじゃな。人間族の戦に入って暴れるのも一興じゃろう。」
ノリノリになっていく漆黒竜ベネボレス少年は、盃を持つ手をブンブンと振っている。
更に、尻尾もだしてビタン!ビタン!と、地面を叩いている。
酒を飲み、気分が良いのかもしれない。
「竜の姿で殲滅してくるか?」
「良いのか?」
「良いぞ。」
「では早速。」
「まてまて、場所も状況も仲間さえも分かるまいが。」
手を頭の後ろに回し、テヘっと音がしそうな感じに照れる漆黒竜ベネボレス少年。
「そうであった。」
「それに焦らずとも、明日にでも連れて行ってやる。」
「本当か?本当じゃな?約束だぞ?!」
「わかった。約束だ。だから今日は、ゆっくり飲んで楽しもうじゃないか。」
「うむ。そうしよう。」
満足そうに頷く漆黒竜ベネボレス少年をナベリウスは眩しいモノを見る様に目を細める。
何処かで見た光景をフラッシュバックさせる。それが何なのか?それが何を意味するのか?それは分からない。
「少し、酔ったか?」
「我と飲めて満足なのじゃな?」
「うん?あぁ、そうかもしれないな。」
ナベリウスは無意識の内に漆黒竜ベネボレス少年の頭を撫でる。それを嫌がる素振りを漆黒竜ベネボレス少年は見せない。逆に嬉しそうに、先ほどよりも激しい尻尾でのビタン!ビタン!が繰り返された。
◇◇◇◆◇◇◇
「では、ここの件は少しの間、お前達に任せる。」
翌日、ナベリウスはシャーラとスーザンを前にそう告げる。
ヘレンは昨日の内に、予定通り宿へ戻しているのでここには居ない。
「かしこまりました。」
「了解しました。」
「ふふふ。この我に任しておれ。直ぐに戻って来れよう。」
漆黒竜ベネボレス少年はシャーラとスーザンに胸を張ってみせる。
「はい。漆黒竜ベネボレス様。宜しくお願いします。」
シャーラは恭しく微苦笑で頭を下げる。スーザンはソッポを向いて笑っている。
確かに12歳の少年にしか見えない姿であるのだから、それも致し方無いだろう。
そもそも漆黒竜ベネボレスはそういう細かい事は気にしない性格らしい。
それも世界共通の竜の生態なのかもしれない。
「では、行ってくる。」
「「はっ!」」
こうして、漆黒竜ベネボレスは大陸を跨いで暴れる事になる。
敵には竜息吹をまき散らし、圧倒的殲滅力を見せた。
生物的上位者として、食物連鎖の頂点としての強さを存分に発揮する。
カーリアン帝国の悪夢の7日に語られる事になる≪漆黒竜ベネボレス≫。
敵からは邪竜として恐れられ、味方からは天竜として崇められる事になるのだった。
◇◇◇◆◇◇◇
戦場に赴く前に、一度ヘレンの前に現れた。すかさず、ヘレンは漆黒竜ベネボレスをまた抱っこしてしまうといった出来事が起こる。
「勘弁してたもぉ~!」
「かわいい♪は正義なのです!(ショタ最高!)」
そんな状況を見たら、果たして漆黒竜ベネボレスは恐れられ、讃えられる存在で良いのか?
そう首を傾げる者は後を絶たないであろう事は、想像できるのではないだろうか?
「人間族の女は怖いのじゃ~!!」
そう叫んだとか、叫ばなかったとか?
真実は、漆黒竜ベネボレス少年にしかわからないのだ。
「竜の姿じゃないからダメなのじゃ!」
とは、漆黒竜ベネボレスの談である。




