第一話 情報収集。
≪アーダム大陸に大魔術師無し≫
こんな格言がある。なぜ、そのような事になるのか?
それは他の大陸や地域に比べて見ると、大気中の魔力濃度が低いからだ。
理由は解明されていないが、そのおかげもあり、一部地域を除いて魔物の総量は少ないとされている大陸でもある。
ただし、その分だけ人間族同士の争いは他の大陸を寄せ付けない、群を抜いて高い大陸となっているのも確かだ。
「ふむ。噂通り、濃度は低いな。」
「そうですね。魔法の威力も低くなる気がしますね。」
魔力が少ないとどうなるのか?
代替えとなるモノを探す事になる。
それが、化学と言われるモノが発達したのである。
その代償なのか、アーダム大陸には魔術師が少ない。その為に、戦争は化学兵器というモノが開発された。
その中でも、クリーマン皇国は他国の追随を許さない程に強固な軍事力を誇る。
一つは『戦車』。
一つは『魔化学竜』。
この二つでもって、同じ大陸においても優位性を保っているのである。
『戦車』は、化学によって生み出された。
『魔化学竜』は魔法と化学の融合により生み出された。
魔法が得意ではないファンタジー世界でも稀な大国となっている。
魔法では無い、化学の発展は他の大陸の国々に大きな衝撃を与えた。
結果、クリーマン皇国は世界の国々から『脅威』と認識され、世界からの攻撃を受けて、一度は沈黙した。それが、約50年前の事である。
そして、現在は力を蓄えたクリーマン皇国は世界統一の前段階である大陸統一に乗り出した。その情報は世界中に拡散され、世界の大国は大陸統一を始めたのである。運気が統一へと動き出したのかもしれない。今回はクリーマン皇国への排除行動は見受けられないのである。
ハデス神の使徒・ナベリウスは、そのクリーマン皇国を次の標的にするようである。
「この国は疲弊しておるな。」
「そのようですね。」
オートリア国の都市を幾つか見て回ったナベリウスとヘレンは同じ感想を持った。
幾つかの街で瓦礫があった。
それも数年は経っている様な状態の物だった。
そして、街には孤児や浮浪者が溢れている。
どの街も変わらない。
それも仕方のない事かもしれないが、長い事戦争が続いている。
更に、大国であるクリーマン皇国が動いたとあれば、更なる混沌が起こっていても何ら不思議はない。
「治世者のレベルが低いのだろう。」
ナベリウスは、そう断じた。
あまりにもお粗末な運営をしているからこそ、こうなってしまうのだろう。そう思ったのだ。
オートリア国の国都であるブフォーリにナベリウスとヘレンは降り立った。
「変わらぬか。」
「戦争難民が多そうですね。」
「その様だな。」
外壁の内外にテントが張られている。
いくつもの火が炊かれており、炊事をしている事が見て取れる。
人々の服装もボロボロだ。
「あの店に入ろう。」
「かしこまりました。」
ナベリウスとヘレンは、近くにある高級レストランらしき店に入ると直ぐにヘレンが注文し、少しして料理が運ばれてくる。
運ばれてきた料理を静かに食事をして食べ終わり、支払を済ませ外へ出る。
「4倍の値段でしたね。しかも、見た目だけで美味しくもありませんでした。調味料が不足しているのかもしれませんね。」
「ああ、やはり厳しいのだろう。」
その後は、市場をグルっと回り値段を見ながら歩き回る。
どの値段も高騰しているのか、およそ2倍から3倍の金額で取引されている様だ。
ダチアと比べての金額だ。同じ国都でこの差は、かなり厳しい国の情勢である事が伺える。
「ヘレン。俺は見に行きたい所があるのだが、お前には俺とは別の用事を頼みたい。」
「はっ。」
ヘレンは少し残念そうな顔に一瞬なるが、直ぐにいつもの表情を取り戻す。
「俺は、クリーマン皇国とその先の島に向かう。お前は、クリーマン皇国n周辺の国を巡り、国都を見て来て欲しい。状況を調べてくれ。たぶん、こことたいした差は無いとは思うがな。状況の確認が終わり次第、ここへ戻ってくれ。5日後の昼に先ほどのレストラン前で会おう。」
「かしこまりました。では、すぐさま動きたいと思います。」
「頼む。」
俺の返事をまってから、ヘレンは発言通りに即行動に移した。
「さて、俺も動こう。」
一瞬で、シュタイア公国のアジトにしている宿に戻ると、そこにはナリ―タとキャシーが議論していたのであろう形跡を残しているものの、二人はサッと立ち上がり俺に礼をとる。
「すまぬが、シャーラとスーザンを借りていくぞ。」
「かしこまりました。」
直ぐに返事が返ってくる。
俺は別の部屋に居る、シャーラとスーザンの所へ向かい二人を連れてオートリア国の王都ブフォーリへと戻る。
「二人には急で悪いが、ここより俺に同行してもらう。クリーマン皇国に入国したのち、スーザンはクリーマン皇国の各都市を回って情報収集を頼む。シャーラは悪いが、魔物の軍団を用意するから、俺の指定する場所を攻撃してもらう予定だ。それもこれも行ってみない事には分からんがな。」
「「かしこまりました。」」
「それぞれ、言い渡した仕事は五日後の昼まで。昼にはここに戻ってこい。」
「「はっ!」」
「では行くぞ。」
俺は二人を抱えて一瞬で上空へと舞い上がった。
そのまま、クリーマン皇国の皇都スカニアへと向かったのである。




