第十話 ヨンケーレ大平原の戦い。 その7
一人で無人島という孤島で住む。
そうであれば、本当の意味で自由に出来るだろう。
しかし、そこに愛する者が一緒に居たのなら、本当の意味での自由は無いかもしれない。
愛する人がしたい事を一緒にする。
それはどれだけ美化しようとも、依存であったり、人任せとなる。
では、それぞれ好きな事をする。
それでも、やはりお互いに尊重する事は仲良くやっていく上で必要な事となる。
他人を尊重する事は、やはり他人により干渉されていると言える。
ここで問題なのは、人は一人でも生きていけるが、孤独に対する耐性を失っているという事だ。群れで行動する種族は往々にしてこの【孤独】と闘わなければならない。
本当の自由とは制約の中にある自由では無いか?
これは本来持つ自由とは、異なる見解であるが、人が人らしく生きていく上での自由とは、本来は制約の中の自由なのかもしれない。
他人を思いやる。
他人を尊重する。
言葉にすると短く、簡単な字になるが、実践するのは難しい。
他人を思いやり過ぎる。
他人を尊重し過ぎる。
依存と言われたりしてしまう。
逆に、
他人を思いやらない。
他人を尊重しない。
身勝手、自己中、独善的等、酷い言葉が続く。
つまり、この中間的な所が良いとされる。
バランス感覚が重要であるという訳だ。
天秤が司法の場で象徴とされるのは、司法によってバランスを取る必要があるという考え方だ。中立に居なければならない。そんな存在が地球では裁判官。
また、三権分立も司法は中立を取る必要がある為に、考えられたモノでもある。
内閣・国会・裁判所この三つはお互いを監視する必要があるという考え方に基づいてある制度にしか過ぎない。独裁を防ぐ処置である。
それは、本当に正しいのだろうか?
巨悪とされる政治家。
何が巨悪なのか?利権を得るから?法の前に人は平等であるという考えからなのか?
色々な法律や歴史を踏まえて今がある。
しかし、その時々で、自身の利権を最優先にする者が現れ、その制度をうまくすり抜けて利益を得る個人が生まれる。
人により、正義や倫理観は変わる。
それは国単位で見るとより如実に現れる。
つまり、組織によりその概念が変動するという事だ。
人を殺してはならない。
罪を犯してはならない。
人の迷惑になる事はしてはいけない。
それは何故なのか?
人という種族は、群れる必要がある種族であるからだ。
人という種族は、組織しなければ種族の敵に勝てないからだ。
地球には種族の敵は、ほぼ居なくなった。
だから、同じ人族の中の血筋による争いや、小さい単位での争いを始めた。
向けるべき相手が居なくなったからだ。
その全ての始まりは基本的に利権だ。
多くの財が欲しい。
多くの食料が欲しい。
肥沃な土地が欲しい。
資源ある土地が欲しい。
それらの欲を上手く操り、為政者は戦争を起こす。
より高い欲を持って、覇権という夢を見て。
◇◇◇◆◇◇◇
今の夢は一体、何だったのか?
俺には分からない。
時折、見る夢だ。
ある者の考え方の様な夢だ。
真理がそこに在る様な気がするが、俺自身の考え方とは関係ない。
俺は、ハデス神から与えられた使命を果たす為に、生き活動している。
ある意味で、活動家だな。
活動家?
どこの言葉だろうか?
また、俺の知らない言葉だ。あの夢を見ると、こういう事がよく起こる。
今は、ソファの椅子に座って居たのだが、少し寝てしまっていたようだ。
目の前には、ジェリーとギャネックとスーザンが控えていた。
「少し、様子を見てくる。」
「はい。」
「では、私はお供致します。」
「・・・。」
俺はギャネックを連れて、洞窟から出た。
上空を飛んでいるので、バンホール火山から出て、ジレットの森を越えてヨンケーレ大平原へと到着する。
上空から見ている限りは、魔物の軍団によりカーリアン帝国の侵攻軍は退却をしている様子がある。そして、シュタイア公国側も退避している様だ。
そもそも、圧倒的にやられていたシュタイア公国は何とか逃げて、集まる事が出来たという感じだろう。
このヨンケーレ大平原は広大だ。馬車のスピードでこの大平原を越えるのにはおよそ10日は掛るとされている。全く休む事なく行動してだが。
シュタイア公国は本陣のあった所までカーリアン帝国に攻められていた。
中央より西となる。そして中央より東がカーリアン帝国軍は占領していた場所だ。
現在は、その東西の陣営地には魔物の軍団が占拠している。
魔物がいくら人間に比べて屈強でも、生物である以上、休む必要がある。
現在、東の占領区域からさらに東に1日の所に、カーリアン帝国軍は集結している様子だ。
さらに、そこから東へと行軍している様子もある事から、休まずこの地域から退却するつもりなのだろう。
それらを確認して、俺はナリ―タの待つ魔物の軍団の占領地区に降り立った。
「ご苦労。」
「ナベリウス様。ようこそお越しくださいました。」
「順調なようだな。」
「はい。死骸も用意出来ました。」
「良かろう。魔物軍はこの場で待機。指揮はナリ―タに任せる。馬鹿が近づいたら、駆逐せよ。」
「はっ!」
「死霊軍団は、ミーシャが率いろ。サポートはギャネック。ヒラリーはナリ―タのサポートを継続しろ。」
「はい。」
「はっ!」
「御意。」
そう、これから夜の間は死霊軍団による夜襲と追撃だ。
そして、昼からはまた魔物の軍団による攻め。
休む間を与える事はしない。はたして、国境までどれだけの数が生き残れるのかな?
その時の俺はニヤリと笑っていた事だろう。




