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第七話 ヨンケーレ大平原の戦い。 その4


勢いよく切りかかってくるその赤髪の騎士の剣を、俺は躱すと、アイテムボックスから一振りの剣を選び、引っ張り出す。その姿はあたかも何もない所から、剣が登場したように思えた事だろう。


「なに!」


この剣はナリ―タが献上してきた剣だ。

剣の名はブラッド・ソード。魔剣の部類らしいが、俺に無効スキルがある為に問題は無い。

呪い等あるらしいのだが、俺には効かない。

刀身は真っ黒で、振るうと赤いラインが浮かび上がる。

馴染みを確かめる為に、一振り二振りする。

まぁ、こんなものだろう。


「それは、ブラッド・ソード!?」


そこそこ、有名な剣らしい。まぁ、呪われた剣は有名になりやすい。

驚きの顔を見せる赤髪の騎士。綺麗な顔は驚いても綺麗なのだな。

俺は無言のまま、赤髪の騎士に向かって行き、剣を振る。


「ぐっ!」


確りと、防いだが、力の差により赤髪の騎士はよろめく。

シールド・バッシュを受けたかのようによろめくのだが、確りと見極めた結果だな。

そのまま、二振り目。

今度は勢いが無い状態での、剣の攻撃だったからか、赤髪の騎士は確りと剣によって受け止めた。


「ふむ。悪くないぞ。マドカ・ラングレー。」


「なっ!名前を知っている?!何故だ!!」


疑問が頭に過り、それにより驚き、隙が出来る。

普通はそうなのだが、この赤髪の騎士は歴戦の経験値なのか、返答は驚きに満ちているものの、隙は生まれなかった。


「うむ。合格だ。」


「合格だと?!」


合格という言葉に反応を見せるマドカ・ラングレー。

しかし、合格という言葉に反応したのは、マドカ・ラングレーだけでは無い。


「御意。」


ミーシャはマドカ・ラングレーに対して一撃を入れる。

マドカ・ラングレーは意識を刈り取られたのだろう。その場に力なく倒れそうになる。

それをさっと、ヒラリーが抱き止める。


「他の者は如何いたしますか?」


「この戦場を生き残り、追ってくる者が居れば迎えてやれ。」


「はっ!」


もう、この戦場に用は無い。駆逐するだけだ。


「行くぞ。」


「はっ!」

「はい。」


俺は、青毛の馬に視線を向ける。

青毛の馬は恭順を示すかのように、頭を下げた。


「ヒラリー。その青毛の馬に乗って戻って来い。」


「かしこまりました。」


俺は、ミーシャからドミニク公爵を受け取り、ミーシャはヒラリーからマドカ・ラングレーを受け取る。ヒラリーは青毛の馬の頭を撫でる。


「お前の御主人は助かるよ。お前も生きのびるんだ。」


「ヒヒ~ン。」


返事をしたのか、そんな感じだった。

すると、ヒラリーは青毛の馬に跨った。


「まて!マドカ様を返せ!!」


数名の騎士らしき者がケロベロスの攻撃を凌ぎながら、向かってきた。

なかなか、根性がある。それとも只の馬鹿なのかもしれないが。


「『返せ』か。助け出したいと願うなら、この先のバンホール火山へ来い。」


「何だと!」


「猶予は5日。さらばだ。」


それ以上の、話は意味がない。馬鹿らしい。本人が決める事だ。

帰りたければ、帰す。ただ、ここで死なせるのは勿体ないと思ったに過ぎない。

気まぐれの行動だ。そして、その気まぐれを追加したに過ぎない。


何か、喚いていたがそんなのはどうでも良い。

俺は一気に飛び上がった。ヒラリーはケロベロス達を引き連れて、行動しだした。

そのまま、俺は片手でドミニク公爵を持ったまま飛び去った。


「くそー!!」


大声の騎士の声がその周辺に木霊したとヒラリーが後に話していた。



◇◇◇◆◇◇◇




「ナリ―タ。準備は良いか?」


「はい。」


目の前にはナリ―タとキャシーとアクアが居る。

その後ろには、魔物の軍団。その数およそ五万。

【魔獣支配】スキルによる軍団結成。

その半数の二万五千はゴブリン。使い捨てレベルであるが、数の暴力を知っている人間には脅威であろう。そして二万のオーク。五千の混成部隊。この中には、オーガやトロールにサイクロプスが居る。この五千が主力となる。今回はトレントなど動きに難があるモノはこの森に滞在させる事になっている。バンホール火山とヨンケーレ大平原。その間にあるジレットの森。この五万をバンホール火山の前のジレットの森に待機させていた。

その指揮を元人間であるナリ―タ達に取らせる。

しかも、魔獣支配によるスキルをフル活用して。

魔獣支配はスキルレベルによって、ドンドンと使い勝手が良くなる。

今は、俺の支配の元であれば、眷族であるナリ―タ達も指揮できる。

魔物の中でも簡単な命令ならば対応できる種族であれば難しい事では無い。

人間に比べると、知識量の問題があるが、知識が必要ではない行動命令であれば、問題など無い。


「楽しんで来い。」


「はい。行って参ります!」


ナリ―タ達は自身の羽を羽ばたかせて飛び出した。

それに続いて魔物の軍団も出て行く。

騒々しい魔物の軍団。魔物も高揚感を味わっているのか?

興奮気味である。


果たして、あいつ等は五日以内に、俺の元へ来る事が出来るかな?

俺はそんな事を考えながら、最後の一体がジレットの森から出て行くの確認し、ヒラリー達が戻ってくるのを見ていた。


あいつ等人間どもにとっての戦いはここからだ。

どうやって、状況を立ち直らせて、向かって来るのか?それとも逃げだすのか?

それを高みの見物といこう。


この状況も、またハデス神は楽しんでくれる事だろう。

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