↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
2/6

減りゆく未来の刻限

現代から帰還した信長様。

しかし、未来の万能の箱(スマホ)にまさかの「低電力モード」が……!?

――ふっと視界が揺れたかと思うと、眼前に広がっていたのは、絢爛豪華な金箔の装飾が施された見慣れた空間――天正十年の夏、すでに堂々とそびえ立つ安土城の天主であった。

「う……うむ? ここは……」

 織田信長が周囲を見回すと、傍らには先ほどと変わらず、山のような献上品(お菓子や衣類、紙幣)を抱えた森蘭丸が立っていた。

「上様! 元の時代……我が安土へ戻ってまいりました!」

「おお、戻ったか! 蘭丸、見よ! この壮麗な安土城の天主こそ、我が覇道の結晶ぞ!」

 信長は漆塗りの格子窓から眼下に広がる城下町を眺め、フッと不敵な笑みを浮かべた。

 そう、今の時代は天正十年五月。天下統一は目前であり、この安土城を中心に織田家の栄華はまさに絶頂期を迎えていた。

 ――しかし、今の信長の心に「天下統一」の二文字は微塵もなかった。

「ふははは! 秀吉や家康め、今は調子に乗っているが良い! 未来において我が安土を『のどかな田舎』に貶めた罪、万死に値する! わしはこの安土を、東京も大阪も蹴散らす正真正銘『世界一のメガシティ』に変えてみせるぞ!」

 信長は燃え上がるような対抗心を胸に、蘭丸に命じた。

「蘭丸! 先ほど未来の領民から授かった、あの平たい献上品……『すまほ』をこちらへ出せ!」

「ははっ! こちらにございます!」

 蘭丸が恭しく差し出したスマホの画面を、二人は食い入るように覗き込む。

 そこには、あのテレビクルーが残していった『新番組・全国メガシティロケスケジュール』の文字と、東京の摩天楼や大阪の大商業街の写真が鮮明に映し出されていた。

「ぬう……何度見ても恐ろしい高楼の数々じゃ。よし蘭丸、まずは筆と紙を持ってまいれ! この未来の絵図面をすべて和紙に書き写し、職人どもに下図として――」

 信長が指示を出していた、その時であった。

 ピピッ、と軽い電子音が鳴り、画面の端に小さな文字が浮かび上がった。

『バッテリー残量:12%。低電力モードに切り替えます』

「……ぬ? なんだこの見慣れぬ文字は?」

「上様! 画面の端にある謎の数字が……先ほどまで『サンジューハチ』とあったものが、『ジュウニ』に減っております!」

「なに……!?」

 二人が困惑している間にも、数値は『11%』『10%』と刻一刻と減っていく。

 さらに、画面の明るさがすーッと暗くなり、色合いがモノトーンめいた渋い光へと変わった。

「な、なんということだ……! この未来の鏡、刻限が近づくと光が奪われ、色まで褪せていくのか!?」

「上様! 画面が……画面が暗くなっております! このままでは未来の知恵が消えてしまいます!」

「ぬああああっ! 蘭丸、急げ! 筆だ! 墨だ! この東京のからくり絵図を今すぐ書き写すのだ!!」

 信長と蘭丸は前代未聞の大パニックに陥り、高級な和紙を広げて必死にスケッチを始めた。

「う、上様! この『旧・江戸』の絵図、線が細かすぎて墨がにじんで写しきれません!」

「ええい、絵などどうでもよい! 『たかいビル』『ちかがい』と文字で書き留めよ! ああっ、画面が……画面が消える――っ!!」

 プチッ。

 虚しくも、スマホの画面はパタリと真っ黒に暗転し、二度と光ることはなくなった。

「うおおおおおのぉおぉっ……!!」

 静まり返る豪華絢爛な天主の一室。

 手元に残されたのは、墨汁が飛び散りミミズがのたくったような乱雑な手書きのメモと、ただの黒い板と化したスマホのみであった。

「お、落ちつかれよ上様……! 未来の知識の端切れは、この蘭丸が何とか書き留めました……!」

「だ、戯けたことを言うな蘭丸! このような書き殴りメモだけで、どうやって家康や秀吉を超える都を作れというのだ! そもそもなぜ奴らの街があそこまで栄えたのか、肝心の理由が分からんではないか!!」

 信長は頭を抱え、ただの板と化したスマホを力任せに握りしめた。

「くそっ……動け! 動くのだ未来の鏡よ! 稲妻の力でも宿っておるのか知らんが、再び光ってみせろぉっ!」

 信長が怨念を込めてスマホを掲げ、現代へ再び行くことを強く願ったその時――。

 ぐにゃりと、周囲の空間が再び歪み始めた。

「ぬ……!? この感覚は……!」

「上様! またあの光が――っ!?」

 二人の姿は、まばゆい光とともに、またしても戦国時代から掻き消えていくのであった。

第二話をお読みいただきありがとうございました!


まさかの「低電力モード」発動からの液晶暗転に、必死で墨まみれになりながらメモを取る信長様と蘭丸でした。

バッテリーという現代の魔力の前には、天下の覇王もなすすべなしです。


そして、知識の続きと充電を求めて、再び現代へひとっ飛び!?

次回、現代のテレビクルーと再会し、ついに「本能寺の変」の歴史的真実を知ってしまう……!?


「面白い!」「続きが気になる!」と思っていただけましたら、評価(☆☆☆☆☆)やブックマークをいただけますと大変励みになります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。