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織田信長「蘭丸、安土を世界一の都にするぞ」「は?」〜天下統一より都市開発にハマった信長様と、振り回される蘭丸の異次元内政記〜  作者: 花ぺこ丸


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織田信長、現代の安土に現る

歴史IFコメディです。

タイムリープした信長様が、現代の現実に絶望してブチギレるお話です。

小姓の森蘭丸は無自覚にモテまくります。


※フィクションであり、実在の歴史・人物・自治体とは一切関係ありません(が、愛を込めて書いています)。

 そこは、信長の想像とは大きく異なる場所であった。


「ぬう……この黒く平らに塗り固められた道はなんなのだ……?」


 織田信長は、未知の道を滑るように走る「色とりどりの鉄の箱」や、地響きを立てて駆け抜ける「巨大な鉄の蛇」に目を丸くしていた。

 ふと横の田畑に目をやると、唸り声を上げながら土を掘り返すゴツゴツとした未知の鉄の塊――トラクターが走っている。


「おおっ……! 見よ蘭丸! 人の手を借りず畑を耕すあの巨大な鉄のカラクリを! これほどのカラクリを農作業に投入できるとは……! 目の前の建物にもしっかりと『安土駅』と書かれておる! 我が安土は未来で世界一のメガシティになったのだな! ハハハハハ!」


 大喜びで高笑いする信長。

 その傍らに控える小姓の森蘭丸も、深くうなずいて感嘆の声を上げた。


「左様にございますね、上様! これも全て、上様が築かれた安土の栄華が未来永劫続いておる証にございます!」

「うむ! 天下布武の結実、実に誇らしいぞ!」


 二人が誇らしげに胸を張っていると、大きなカメラを担いだ男と、マイクを持った女性が近づいてきた。


「すみませ〜ん! ちょっと街頭インタビューいいですか? 今『地方の豊かな自然と歴史を巡る』っていう番組のロケをしてて!」


 信長は不敵な笑みを浮かべ、ドンと腕を組んだ。


「ふむ、未来の安土の瓦版(テレビ)か。よいぞ、特別に語ってやる」

「あ、コスプレの方ですか? 本格的ですね! えーと、安土の魅力ってどんなところだと思いますか?」

「ハハハ! 聞くまでもなかろう! この世界一の発展を遂げた都そのものよ! 立ち並ぶカラクリ、整えられた道! 全てはこの織田右大臣信長が築き上げた礎があればこそ! どうだ、我が安土の栄華に平伏したか!」


 信長が高らかに言い放つと、インタビュアーの女性とカメラマンは顔を見合わせ、引きつった笑いを浮かべた。


「あ……はい、ありがとうございます……(うわ、ヤバい感じの歴史マニアの人だ、カットでいいや)」


 早々に信長から興味を失いかけたクルーだったが、その瞬間、カメラマンの目が信長の背後に佇む蘭丸に釘付けとなった。


「……ちょっと待って、ディレクター。後ろのあの子、やばくない?」

「え? ……うそ、何あの美少年!? 透明感えぐいんだけど!?」


 和装を纏い、信長の後ろで控える蘭丸。その整いすぎた顔立ちとどこか気品漂う雰囲気に、テレビクルーの目の色がガラリと変わった。


「君!! 君、芸能事務所どこ!? タレントさん!?」

「は……? ぎょうにん……?」


 いきなりマイクを向けられ、大人の気配に身構える蘭丸。

(む……上様をお守りせねば。だが無闇に刃は抜けぬ……)

 そう思い直した蘭丸は、角を立てぬよう、極めて静かに「……失礼ながら、控えられよ」と儚げな微笑みを浮かべた。


 その瞬間、ディレクターの胸がドキュンと打ち抜かれた。


「かわいいーーーーっ!! 天使!? 国宝級イケメンじゃん!! 連絡先教えて! 今すぐ事務所のスカウト送るから!」

「れんらくさき……? いかなるからくりにございますか?」

「え、スマホ持ってないの!? ダメダメ、こんな金の卵逃せない! ほらこれ、会社の予備機だけど番号入ってるから! 絶対連絡してね!!」


 業界人のディレクターは、半ば強引に最新型の『スマートフォン』を蘭丸の手へ押し付けると、興奮冷めやらぬ様子で去っていった。


「……上様。未来の領民、上様の威光に平伏し、このような平たい献上品を差し出してまいりました」

「うむ、でかしたぞ蘭丸。未来の者も、わしの威光の前には素直になるようだな。しっかり預かっておけ」

「ははっ!」


 信長も蘭丸も、これが「上様への献上品」であると疑いもしなかった。

 だが、二人の勘違いはそれだけに留まらなかった。

 先ほどのやり取りを目撃していた周囲の女性観光客や女子高生たちが、ざわつき始めたのだ。


「ねえ見た!? あの子やばくない!?」

「超絶イケメン……っていうか本物の美少年……!」

「あのっ、これ……! 良かったら召し上がってくださいっ!」

「これ、私のお小遣いなんですけど……使ってくださいっ!!」


 次々と駆け寄ってくる現代女性たち。

 蘭丸は「上様のご威光に圧倒された領民たちが、次々と貢ぎ物を差し出してくるのだな」と解釈し、主君の名誉のために「かたじけない」と気高く一礼して全てを受け取った。


 気が付けば、蘭丸の腕には高級パン、最新のお菓子、ブランド物の服、さらには何枚もの諭吉(紙幣)が山積みになっていた。


「上様! 未来の安土の領民たち、上様への忠誠心がまことに深く……次々と献上品が積み上がっております!」

「う、む……! 未来の領民たちは、随分と気前が良いのだな……。どれ、蘭丸、その『すまほ』とやらを見せてみよ。未来の領民が捧げたものだ、何かしら使い道があろう」


 二人で顔を寄せ合い、蘭丸の手元にある『スマホ』を覗き込む。

 ディレクターから渡されたその画面には、ロケの行程表である『新番組:日本縦断メガシティ&のどか旅ロケスケジュール』が開かれたままになっていた。


「上様……この平たいからくりに、文字が浮かび上がっております」

「どれ……『ロケスケジュールメモ』……?」


 信長は画面に並ぶ文字を指でなぞりながら、一つずつ声に出して読んだ。


『第1弾:日本の首都・東京(旧・江戸)〜家康が拓いた摩天楼都市〜』

『第2弾:西日本最大の都市・大阪〜秀吉が築いた大商業都市〜』

『第3弾:滋賀県安土町〜のどかな田園風景と歴史の面影が残る静かな町〜』


「…………ぬ?」


 信長の動きがピタリと止まる。


「……『旧・江戸』? 江戸……家康の領地ではないか。それに『秀吉が築いた』だと……? なぜ奴らの街が首都だの大都市だのと書かれておるのだ……?」


 信長の顔からすーっと血の気が引いていく。

テレビクルーが言っていた「地方の自然豊かな歴史の町」という言葉の意味。

田んぼを走るトラクターが、大都市の最新兵器ではなく「ただの農機具」だという現実。

そして何より、自分が天下の拠点とした安土が、家康や秀吉の街に遥かに遅れを取り、ただの「田舎のロケ先」として扱われているという事実――!


「家康と……秀吉の街が大都会となり……我が安土が……比較対象にすらならんほど廃れておるだと……!? 街頭インタビューで『世界一の発展』などと熱弁したわしは……ただの痛い愚か者扱いだったというのかーーーーっ!!」


 信長は天を仰ぎ、血涙を流さんばかりに絶叫した。


「許さん……! 許さんぞ秀吉ぃ! 家康ぅうう!!」

「う、上様! お心を鎮めください!」

「蘭丸! その献上品の『すまほ』で、東京と大阪がなぜそれほど栄えたのか全て調べ上げよ! わしは元の時代へ戻り……安土を東京も大阪も蹴散らす、正真正銘『世界一のメガシティ』にしてやるわ――――っ!!」


「ははっ! 上様のお言せのままに!」


 こうして、献上品(と思い込んでいる貢ぎ物)を両手に抱えた忠義の小姓・森蘭丸とともに、テレビクルーに恥をかかされプライドを完膚なまでに打ち砕かれた織田信長は、前代未聞の「安土大都市化計画」へと突き進むこととなるのだった。

第一話をお読みいただきありがとうございます!


「我が安土が、家康や秀吉ごときの街に負けているわけがない!」という、信長様の理不尽かつ圧倒的なプライドをお楽しみいただけましたでしょうか。

トラクターを最新鋭のカラクリ兵器と勘違いしたり、蘭丸のモテっぷりを全て自分の威光(献上品)だと勘違いしたりする脳内お花畑コンビが、ここからどうやって現代知識チートで安土を大都会に変えていくのか……!


次話からは、いよいよ元の時代(戦国)に戻ってのぶっ飛び都市開発が始まります。

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