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人に向けて魔法が撃てない俺はニートになろうとしたら底辺クランに入団させられました  作者: いぬぬわん


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第2話 暴黒の獅子 ④

陽翔は互角に渡り合う烈の攻撃をかわしつつ、反撃のチャンスを窺っていた。

陽翔が仕掛ける。

体術の連携で相手の防御を崩し、膝蹴り、肘打ち、肩打ちと繋げる。


(今だ…!ここで一撃を…!)


全身の力を込め、烈に向かって飛び込む。


「ヤバっ……!!」


ハンマーを握った烈の手に、オレンジに弾ける魔力。

そう、禁止されていたはずの魔法を、烈は咄嗟に付与していたのだ。


「チッ!!」


ハンマーが振り下ろされ、爆発が起きる。

陽翔は反応が間に合わず、吹き飛ばされる。


地面に倒れ込む陽翔。息が荒く、胸の奥で衝撃と魔力の痛みが走る。

視界の端で、烈がバツの悪そうな顔をしている。


(くそ!そんなのありかよ……ルール違反じゃん…!)


悔しさと驚きが入り混じり、頭の中で呟いた。


戦いの幕はここで閉じた。

体術で善戦したものの、烈がルールを破ったことで逆転されてしまった。



(クソ……魔力切れで意識が……)


悔しい気持ちを抱えながら意識がきれた────







「.........」


天井の蛍光灯がぼんやり揺れて見える。体中が重く、腕や足に力が入りにくい。


横に座る月島の顔が心配そうに近づく。


「陽翔さん……大丈夫ですか?」


その瞳は真剣そのもので、胸の奥から安心と安堵が湧いてくるのが分かった。


部屋の奥から、烈が頭をかきながら小さく「すまん……!」と謝る声。

手を振りつつ恐縮したように立っている。


近衛は淡々と立ち、しかし目はしっかりと陽翔を見据えていた。


「体術、悪くなかったぞ」


その言葉には、評価と認める力が確かに込められていた。


だが、床に横たわる陽翔の胸には、どうしても悔しさが残っていた。


ルール違反で勝った烈への怒り、咄嗟に力を出せなかった自分への苛立ち。


近衛はふと微笑むように口角を上げた。


「明日からよろしくな」


言われた瞬間、陽翔は思わずポカンとした顔になる。


近衛が差し出した紙を見下ろす。

先ほど仮パスを取るためにサインした紙――だがよく見ると「入団契約書」とはっきり書かれていた。


「えぇえぇ!!!?」

思わず声が漏れる。


「いやいや、これ詐欺じゃないですか!?

なんとか罪とかつきませんか!?」


陽翔は慌てて手を振り、抵抗しようとする。


近衛はゆったりとした笑みを浮かべ、紙を指で軽く押さえながら言った。


「でもまぁ……サインしちまってるからなぁ」



陽翔は頭を抱え、唖然としつつも、床に横たわったままこの現実を受け止めざるを得なかった。



陽翔は床に横たわったまま、紙をじっと見つめる。


「いや、待ってください……俺、本当に、魔法を人に向けて使えないんです! それでも……本当に、いいんですか?」


体の力も抜けきったまま、必死に声を震わせる。


月島がそっと膝をつき、陽翔の肩に手を置く。


「陽翔さん……大丈夫、大丈夫よ。あなたがどんな状況でも、私たちは陽翔さんを支えるわ」


瞳には信頼と優しさが宿っている。


烈は腕を組みながら、にやりと笑った。


「まあ、魔法使えねぇ奴でも、お前の体術があれば充分戦力になるってことじゃねえか?」


軽く言うが、悪意はない。むしろ期待を込めているようだ。


近衛は紙を指で軽く押さえ、静かに言った。


「魔法が使えないのは構わん。君の体術と判断力は十分評価した」



「本当に、本当にいいんですね!?魔法撃てないんですよ!?こんな……俺でも………!」



「あぁ、勿論だ。何より君は困っている人を無条件で助けた」


近衛が話す中、月島も、「そうそういい人ですもん!」

と同調する。


そして近衛は俺の目を真っ直ぐに見つめ────



「────優しく勇気のある君と一緒に働きたい」



陽翔は息を整え、まだ少し躊躇しながらも、心の中で葛藤が和らぐのを感じた。



「……わかりました……よろしくお願いします」

小さく声に出して、涙がこぼれそうになるのを耐え、紙に目を落とす。



月島は微笑み、陽翔の手を握り直す。

「これから一緒に、一緒に頑張りましょう!」

その声には、安心感と期待が混ざっている。


烈は少し肩をすくめ、いたずらっぽく笑った。


「また手合わせしようぜ!勿論、縛りはありでな!」


「どの口が言ってんだ!このド畜生!」


「ほんとに!ほんとに守ってくださいよ!烈さん」


2人にツッコまれて「お、おう」とちょっと引き気味の烈。

本当に次からは気を付けていただきたいものだ。


近衛はゆったりと口角を上げて頷く。


「じゃあ、明日から本格的によろしくな」


陽翔の胸には、まだ少し悔しさも残るが、それ以上にこんな自分を受け入れてくれた嬉しさが勝っていた。


こうして、陽翔は不安と葛藤を抱えながらも、暴黒の獅子に加入することになった。


そして、この日を境に、陽翔の新しい日常が静かに、しかし確実に始まった──。


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