第2話 暴黒の獅子③
近衛が視線を向ける。
「おっ、烈。やっぱりいたか」
その先には、小柄だが少しガラの悪い男性――烈と呼ばれる人物が立っていた。
「団長、おはようございます!」
元気よく挨拶する烈。
「オーナーもおはようございます!」
月島の方にも挨拶を欠かさない。
「団長が朝からここって珍し────って誰だお前!!」
烈の視線が下から鋭く陽翔を睨む。
あぁーん?と言いながら睨まれ
思わず困惑する陽翔。
「ちょ、ちょっと轟さん! 辞めてください!」
月島が烈にストップをかける。
「この方は私を助けてくれた陽翔さん! 恩人よ!」
烈は一瞬目を細めるも、態度はまったく謝る気がない。
「で、その恩人がなんだってここに」
近衛は淡々と、しかし少し興味深げに口を開いた。
「ちょっと、軽く手合わせをな」
烈はにやりと笑う。
「へぇ、おもしれえ」
準備を兼ねているのか、腕を回し屈伸をして構える。
「俺がやりますよ」
近衛は陽翔に向き直り、視線で「こいつでいいか?」と問いかける。
内心、陽翔は思う。
――近衛さんとやるより、こっちの烈の方が100倍いいに決まってる!
あんな筋肉お化けと戦いたくなんてない。
「もちろん」
満面の笑みで答える。
「そーだな、そしたら…烈は魔法禁止縛りで」
近衛が告げる。
「まっ、ちょーどいいっすね」
烈は余裕の笑みを浮かべる。
小柄ながらも鍛え上げられた肉体が、その自信を圧として放っている。
少し舐められているのも事実だが、現実問題格上だろう。
近衛が陽翔に問いかける。
「マジックルームって知ってるか?」
「もちろん。発動中に受けたダメージは肉体に負わず、魔力に変換されて削られる装置ですよね」
ハルトが答えると、近衛はうんうんと頷く。
「先に魔力が尽きた方の負けだ」
「2人とも準備はいいか?」
近衛は壁にあるスイッチを押し、マジックルームを起動する。
「さっさとやろうぜ」
烈が腕を振り上げ、戦闘態勢を整える。
「お手柔らかにお願いします」
陽翔も構え、呼吸を整える。
「始め!!」
近衛の掛け声と同時に、二人の体がぶつかる。
陽翔はまず身軽さを活かして烈の攻撃をかわす。
小さなステップで距離を取りながら、相手の脇を狙って突きを入れる。
「おっ、速えじゃねえか!」
少し驚いた声を漏らすが、すぐに笑みを浮かべる。
「だが、俺も負けてねえ!」
烈は片手を大きく振り、陽翔の肩口を狙うが、すぐにかわして反撃。
体の回転を利用した蹴りが烈の腹に当たり、バランスを崩させる。
「まだまだ...!」
小さく息を吐き、勢いを利用してさらに前に出る。
「やるじゃねえか、だがこれでどうだ?」
武器を取り出す。手にしたのは大型のハンマー。
「さぁ、気合い入れろよ!」
陽翔は少し後退し、ハンマーを握った烈の構えを警戒する。
「ハンマーとか、物騒なもん使いますね…」
烈の攻撃は鋭く、速さも力も増している。
振り下ろされるハンマーを何とか受け流す陽翔。
だが一瞬の隙に、腕に衝撃が走る。
「くっ…!」
筋肉に衝撃は直接伝わらないが、魔力に変換される感覚が胸の奥でザワつく。
烈はにやりと笑い、さらに連続攻撃。
小柄ながらも鍛え上げられた肉体が、その攻撃に圧力として現れる。
「これでどうだ!」
陽翔は受け流しつつも、体を後ろに飛ばして距離を取る。
両腕を振り回し、烈の攻撃を何とか避けながら、相手の隙を探す。
(ここで引いたら終わりだ…!)
息が上がるが、意識は冷静。
次の瞬間、陽翔は体を低くして相手の下をくぐり、膝で腹を蹴る。
「ぐっ!」
初めてまともに痛みを感じたのか、少しだけ表情を歪める。
陽翔はその勢いで前に踏み込み、連続の肘打ちを叩き込む。
体術では陽翔が優勢だ。
だが、烈もすぐに反撃に転じる。
ハンマーを横に振り、体を回転させた打撃を放つ。
陽翔は避けるが、壁際に追い込まれる。
「オラ!オラ!オラ!」
鋭い眼光で追撃を続ける。
(ヤバい.....体力お化けかこの人!)
烈の攻撃が次第に圧力として重くのしかかる。
陽翔は横にに飛び、呼吸を整える。
烈の筋肉から放たれる自信の圧が、戦闘空間に漂う。
(…この人、本当に強いな...!)
内心、舌打ちしつつも、これ以上防御に回りたくないのも事実。
二人は距離を取り、息を整える。
体の芯に熱がこもり、マジックルームの魔力変換の感覚が胸の奥で鋭く疼く。
(どうする…次の手を考えないと…!)
烈もまた、構えを整え、次の攻撃に備えている。
小柄ながら全身から自信が溢れる。
戦闘はまだ序盤。
これからどちらが優勢を取り、どちらが苦しむのか――
胸の奥で、不安と緊張が入り混じる。
轟 烈 とどろき れつ 22歳
165cm
小さめのヤンキー風
刈り上げて前にとんがらせるように前髪をあげている
髪色 赤。
瞳 黄色
武器
名前:轟撃ごうげき
形状:両手持ちハンマー(片手でも振れる)
特徴:
•両手振り:威力MAX、範囲広い、当てづらい
•片手振り:威力控えめ、当てやすい




