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人に向けて魔法が撃てない俺はニートになろうとしたら底辺クランに入団させられました  作者: いぬぬわん


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第23話 白と黒の交差

ラウンジには、朝の柔らかな光が差し込んでいた。

昨日の姫華による疲れも、ようやく身体から抜けてきた陽翔は、カップに入れた水をゆっくりと傾けながら席に座る。


「雨夜、澪、2人共、よくやった」


団長の声に、二人が微笑みながら戻ってくる。


久しぶりに揃ったメンバーの雰囲気に、少し安心する。


「……ほんとよかった、2人共無事で」

千景が柔らかく微笑み、復帰したばかりの雨夜と澪に声をかける。


「ご心配おかけしました」


澪は小さく頭を下げ

疲れた様子もなく安堵の表情を見せる。


「ちょっと休みすぎちゃったよ」


雨夜も元気そうだ。


「やっと全員揃ったな」


団長の近衛一真は、軽く手を合わせる。


「陽翔、また薫兄ぃにしごいてもらえよー!」

「ちょ、烈さん!言い方!」


一同に笑いが起こる。

雨夜と澪が勝ち取った平和だった。


その時、控えめなノックの音が響く。

「……はい」

月島が声をかける。


「なんか嫌な予感がするんですけど」

「奇遇ね、私もよ」


千景と陽翔はうんざりだ、と顔を見合わせる。


ドアが開き、また赤い長髪が揺れる少女が入ってきた。


(くそ!予感的中……!)


「どうも、不知火姫華です」


背筋を伸ばし、礼儀正しく頭を下げるその姿に、ラウンジの空気が少し張りつめる。


「団長はいらっしゃいますか?」


「団長の近衛一真だ」

団長も静かに応じる。


「初めまして、白銀の翼の不知火姫華です。

今日は暴黒の獅子の団長にお話があって参りました」


声は落ち着いていて、礼儀正しい。

名家の長女そのものの佇まいだ。


「話とは?」


姫華は軽く手を振り、落ち着いた声で言った。


「ここでは、ちょっと……」


そのやり取りだけで、ラウンジの誰もが微妙に身構える。


「ふむ、着いてきてくれ」


団長の声に、姫華は素直にうなずき

二人は別室へと移動する。


残されたメンバーは視線を交わす。


「……何の話をしてるんですかね?」

月島が首をかしげ、千景も少し眉をひそめる。


「……さあな」

烈が肩をすくめ、陽翔も黙ったまま二人の後姿を見送る。


しばらくして、団長と姫華が戻ってきた。

団長が先に現れ、姫華が続く。


「皆、集まってくれ」

団長の声は落ち着いていて、だが凛としている。


「白銀の翼と暴黒の獅子で

合同任務をする事になった」


(……合同任務?)

口には出さなかったが聞いたことがなかったので

顔に出てしまったのか千景さんが補足する。


「クラン同士でメンバーを出しあって任務をこなすのよ、滅多にあるもんじゃないわ」


団長は続ける。


「暴黒の獅子からは、千景、烈、陽翔。

白銀の翼からは……」


姫華がにっこり笑う。


「私よ」


陽翔の胸がざわつく。


「まじか……」


最悪な気分が、一気に押し寄せる。


「あともう1人いるわ、そろそろ来る頃だと思うけど」


姫華が言った瞬間、扉が勢いよく開く。


「どもどもー!白銀の翼1の美青年!七瀬奏やでー!

皆よろしゅう頼んますー!」


ラウンジに一瞬、時間が止まったかのような空気が漂う。


黒縁の伊達メガネに、関西弁の軽い雰囲気。

細身ながら180cmと堂々たる体格。

男性にしては長めの銀髪に毛先の方は黒いグラデーション。

笑顔で手を振りながらこの空気にもめげてない。

とんでもないメンタルだ。


「……どえらいのが入ってきた」

烈が小さくつぶやく。

千景も思わず目を丸くする。


姫華は少しだけ口元を歪め、七瀬を一瞥する。


「コイツが……ゴホンっ。

この方も白銀の翼からの参加者として

今回の合同任務に加わってもらうわ」


「え、ヒメちゃん、今コイツってゆーた?

ゆーたよね!?」


「…………」


「ちょ、ヒメちゃん!無視せんといてや!泣いてまうでぇー」


余程、鬱陶しいのだろう。

姫華の顔が見たこともないくらい引きつっている。


(普段からアレだと確かにあの顔にもなるか……)


「では任務の説明をする」


この終わった空気を変えようと団長が話を進める。


「まず内容としては、魔人の確保だ」


千景、烈、陽翔は互いに視線を交わす

あの日以来となる3人で任務。

それに魔人となると自然に力も入る3人。


「神奈川の箱根で魔人の拠点が複数発見されたらしい」


「え、でも神奈川って管轄外ですよね……?」


千景が眉をひそめる。

白銀の翼も暴黒の獅子も東京のクランだ。


「あぁ、基本的にはな。

ただ白銀の翼は依頼があれば県外だろうと

行う方針らしい」


「じゃあ本当は白銀の翼への依頼って事か」


烈が理解を示すように呟く。


「あぁ、それに魔人の拠点が複数となるとどうしても人手がいる」


「そこでや!

なんとか暴黒の獅子さんの力をお借りできんかなと!ヒメちゃんがウチの団長に相談したんですわ!」


七瀬は軽い足取りで前に出て、両手を大きく広げて説明する。


「ちょっ、七瀬さん!それは言わないでいいやつでしょ!」


千景が慌てて口を挟む。

手を軽く前に出して

七瀬の動きを抑えようとする仕草が入る。


「あぁ、堪忍堪忍。ついつい口が滑ってしもうた!」


ついにスルーを決め込んだ、団長は任務の続きを話始める。


「任務の目的は、魔人の拠点の調査と確保。

発見されている拠点は3箇所。

各拠点には複数の魔人が潜んでいると見られる」


団長は手元の資料を開き、地図に指を当てながら説明を続ける。


「動きとしては、西側と東側の拠点を同時に落とす。

そして最後に全員で北側の拠点に突入」


「この流れであればスムーズにいけるはずだ。

そこでチームを分けたいんだが…………」


「戦力を分散させるのはわかるけど……」


千景が地図を見ながら眉をひそめる。


「暴黒の獅子も白銀の翼も、相手の能力をまだ把握してないわけだし」


陽翔も頷く。


「ぶっつけ本番でもいいぜ俺は」


烈が拳を軽く握る。


姫華が静かに口を開く。


「……少し、お互いの力量を確かめてみるのも悪くないかもしれないです」


七瀬がにっこり笑い、軽く手を振る。


「それやったら、ちょっと戦ってみるのもアリやね!

ここで軽くやって、互いの力を知るんや!」


「そうね、でも時間はあるの?」


「まあ、軽くやるだけなら。

終わったらすぐ箱根に向かうで」


七瀬は笑顔のまま肩をすくめる。


「ならとっとと済ませましょ」


千景が少し笑みを浮かべ、腕を組む。


烈も肩を軽く叩き、準備の姿勢を取る。


「よし、ならまずは互いの力量確認。燃えてきたー!」


「お、あんちゃんええねぇ!

その熱さ、嫌いやないでぇ!」


七瀬は軽く跳ねるように前に出る。


姫華は静かに微笑み、陽翔たちに視線を向ける。


「では、移動しましょうか」


ラウンジの空気が一気に引き締まる。

合同任務前の小さな実戦、準備万端で幕が開こうとしていた。



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