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東京魔法戦線 〜人に魔法を撃てない魔術師の成長録〜  作者: いぬぬわん
第1章

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第39話 〝悲しき現実〟

七瀬は、ゆっくりと肩をすくめた。


「説明? 別に……

この子の魔眼が欲しかっただけやで」


白銀の銀瞳が鋭く光る。


「それだけの理由で、この惨状を?」


七瀬は軽く笑った。

だが、その笑みは

どこか凍るような狂気を孕んでいた。


「それだけ? 何ゆーてんの、団長さん」



「僕にとって魔眼は────憧れ、崇拝、渇望、

欲しくて、欲しくて、たまらんもんや」


視線は倒れた陽翔に向けられる。


「あとホンマにちょっとで手に入ったのに……

そりゃないわー」


軽口を叩く七瀬。

真剣な眼差しを向ける白銀。


「俺たちは……仲間じゃなかったのか」


「仲間?」


七瀬は鼻で笑った。


「まぁ居心地は悪くなかったけどな。

でも……ほら」


ゆっくりと服の裾をめくる。

そこに刻まれた黒い太陽の印が

光を吸い込むように黒く輝いた。


「僕は最初から〝こっち側〟やねん。

だから仲間とか裏切りとか、

全然なんとも思ってへん」


衝撃の事実が白銀を襲う。


「……なん……だと」


驚く白銀を特に気にする様子もない七瀬。


「はぁ……流石に2人相手するのはきついなぁ」


雨夜の瞳が、燃えるように光る。

鋭い視線が七瀬を貫き、胸ぐらを押す。


「逃げれると思ってるのか?」


七瀬は肩をすくめ、笑う。

しかしその笑みは消えず、指先が無意識に動く。


「思うってか、逃げれるで別に」


ギリッと歯を食いしばる雨夜。

息が荒く、周囲の空気すら揺らす。

七瀬が何かを仕掛けようとした瞬間────


「────させねーよ」


轟音と共に空間が裂け、砂埃と魔力の残滓が舞う。

近衛が背後から現れる。


目に見えて膨大な魔力が拳を覆い、

圧縮された魔力の青白い光が、

膜のように脈打ちながら揺らめく。


────身体強化Lv3。

その拳が七瀬の顔面を捉える。


「がっ────!?」


壁を砕き、床を軋ませ、七瀬は宙を舞った。


破片と煙が渦を巻き、

空気が焦げる匂いに満ちる。


なんとか立ち直るも、

全身の感覚がビリビリと痺れている。


「てめぇ……覚悟できてんだろうな」


怒りのオーラが全身から迸り

拳の振動で空気が震える。


拳の一点に集中する殺意が

まるで地を揺るがすかのようだった。


「エグすぎる……なんとか軽減できたけど……

こりゃ、アカンな、死んでまう」


七瀬は呻き、咳き込みながらも後退し

体勢を立て直す。


「楽に死ねると思うなよ」


雨夜の刀に魔力と冷たい殺意が宿る。


「諦めろ、七瀬」


白銀の声は冷たく、鋭く。

声と共に、空気がピリッと張り詰める。


七瀬は苦笑し、指先に魔力を集中させる。


「しゃーない、ここは引かせてもらうで」


足元の地面が裂け、爆発が煙と粉塵を巻き上げる。

視界を遮られ、近衛達は一瞬目を閉じる。


「クソ!」


その隙に、魔力で形作られた

漆黒の渦が立ち上がる。

まるで異次元の穴。


────中を覗くと光の筋が螺旋を描き

吸い込まれるように揺れていた。


空気が押し込まれ、

粉塵や煙が渦の中心へと吸い寄せられる。


耳をつんざく低い唸りが胸を震わせ

肌を刺す冷気が走る。


「陽翔くんが起きたら伝えとって」


七瀬は一歩踏み出す。

黒い渦に飲み込まれる瞬間、

光の筋が裂けるように走り、

煙と粉塵が空間に炸裂する。


そして、異次元の渦は、跡形もなく消え去った。


「────君の魔眼、絶対貰うでってな」


その声だけが、残った世界に響いた。



近衛が拳を下ろし、焦げた地面と漂う埃を見つめる。


「……あれは」


冷静にしかし悔しそうに答える白銀。


「転移魔法だろうな」


「……クソっ!!」


雨夜は剣を握りしめ、荒い息を吐きながら、

悔しい気持ちを押し殺す。



急いで陽翔の元へ駆け寄る。

その手に触れると、かすかに呼吸がある。


「良かった……生きてる」


荒れた髪をかき分け、血だらけの顔を確認する。

微かな鼓動。

それだけで、胸がぎゅっと締め付けられた。


「千景と烈は!?」


近衛は、倒れた千景と烈を抱き上げ、

慎重に隣に寝かせる。


「……2人は……もう」


その言葉に、雨夜は凍りつく。


「そんな……」


言葉にならない絶望が、

戦場の灰の中で重くのしかかる。

血と泥にまみれた仲間たちの姿を前に

胸が痛みで引き裂かれるようだ。


2人に駆け寄り雨夜は膝をつき

嗚咽混じりに泣き叫ぶ。


「なんで……なんで……」


そのとき、遠くから淡い光が差し込み

紫がかった髪が揺れる。

澪が駆け寄ってきた。


「どう……したの?」


雨夜は涙で視界が滲む中、声を震わせる。


「………千景と烈が…………」


その言葉に、澪の手が止まらない。


「……嘘よ……嘘、嘘、嘘よ!」


澪が駆け寄り両手をかざして

烈と千景に《活性》をかけ続ける。


魔力が尽きるまで

治せないとわかっている。

それでも、諦められない。

まだ仲間の死を受け入れられない。


烈の肩に触れ、千景の額に手を置く。


「まだ……まだ……嫌よ……お願い!」


魔法の光は弱々しく揺れながら、

必死に命を繋ごうとするが……。

澪の魔法、活性は死者には効かない。


その光景を見て、近衛の瞳にも涙が滲む。


「澪、もう……」


「嫌よ!私が諦めたら!誰がこの2人を……!」


仲間を守るために戦い抜いた者たちの命を、

何としても繋ぎ止めたいという決意が

全身から滲み出る。


白銀は静かに動いた。

倒れた姫華の遺体を両手で抱え、

戦場の煙と埃をかき分けるように進む。


烈と千景のそばまで辿り着くと、

丁寧に、しかし迷いなく姫華を横たえる。


「辛い思いをさせてすまない」


その声は低く、冷たく、

だがどこか慰めを含んでいた。


雨夜は一瞬、白銀の動きに気づき視線を向ける。


銀白の髪が光を反射し

冷たい銀の瞳が姫華をそっと置く手元を見守る。


姫華は動かない。

だが白銀の手に抱かれ、

烈と千景の隣で静かに横たわる姿は、

戦場の混乱の中でもひとつの

安らぎの中心のように見えた。


白銀は、遺体を置き終えると

周囲の惨状を静かに確認する。


一切の感情を押し殺したその瞳が

次に何をするべきかを

確かめるかのように鋭く光った。




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