表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
人に向けて魔法が撃てない俺はニートになろうとしたら底辺クランに入団させられました  作者: いぬぬわん


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

33/47

第9話 異変

医療室を出て、扉を閉めかけたところで──


「陽翔」


呼び止められて、足が止まる。


振り返ると、廊下に立っていたのは澪だった。


「……はい」


「ちょっと、いい?」


穏やかな声。

だが、逃げ道はないやつだ。


陽翔は、素直に立ち止まった。


澪は、陽翔の体を見る。

触れはしない。ただ、視線だけ。


「無理、してるでしょ」


「……してない、とは言えないです」


「正直でよろしい」


小さく、笑う。


「身体強化、部分的に覚え始めた頃が一番危ないの」


陽翔は、黙って聞いた。


「力が“思ったより出る”から

止めどころを間違える」


一瞬、視線が鋭くなる。


「千景は自分より〝仲間〟を守る」

「烈は、〝仲間〟の為に突っ込んで無茶する」


そこで、澪は陽翔を見る。


「……あなたはね」


少しだけ、間を置いた。


「〝仲間〟の為に壊れても、前に出ようとするタイプ」


図星だった。


「だから」


澪は、ぽんと指で陽翔の額を弾く。


「私が止める」


「え?」


「医療担当の仕事でしょ?」


何でもないことのように言って、澪は微笑んだ。


「強くなるのはいい。

でも、命は大事にしなさい」


それだけ言うと、踵を返す。


「……はい」


陽翔は、深く頷いた。


廊下に残ったあとも、

その言葉は、胸の奥に残り続けていた。



────────────


ここ数日、近衛と月島は、フードの男の情報を集めるため、街のあらゆる場所へ出向いていた。


「……中々情報が集まりませんねぇ」

月島が小さくため息をつく。


団長は腕を組みながら街を見渡した。


「主な手掛かりはフードの男ってだけだからな」


「ですが、このままでは……」

月島の声には焦りが混じる。


二人が歩みを進めると、商店街の掲示板に貼られた小さな張り紙が目に入った。


近づくと、ここ数日、無差別斬殺事件が起きている。

そんな噂が、この街で現実となっているという。

現時点での被害は死亡者8名。

毎夜、被害が出ているらしい。


「斬殺事件ですか……」


月島の目が真剣に光る。


「放っておけません、団長!」


団長はしばらく沈黙し、状況を確認するように周囲を見渡した後、ゆっくりと頷く。


「そうだな……夜の街は、見回る必要がありそうだ」


二人は互いに目を合わせ、覚悟を固める。

誰に頼まれたわけでもない。

けれど、放っておくわけにもいかない。


夜の街に潜む影は、まだその正体を現さず、静かな不安だけが漂っていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ