表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
人に向けて魔法が撃てない俺はニートになろうとしたら底辺クランに入団させられました  作者: いぬぬわん


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

11/49

第3話 入団式 ②

大広間の隅では、烈と千景が何やら言い合いをしていた。

澪はその様子を苦笑しながら眺め、薫は机に向かって静かに書類を整えている。


穏やかで、どこか家族のような空気。

昨日まで想像していた“荒れた底辺クラン”とは、あまりにも違っていた。


陽翔は、月島の方へ視線を向ける。


「……月島さん。ひとつ、聞いてもいいですか」


「はい?」


「なんで……こんなに普通で、いい人たちなのに、悪い噂が立ってるんですか」


月島は一瞬だけ言葉に詰まり、それからゆっくり息を吐いた。


「……噂、間違ってない部分もあります」


陽翔は思わず、言葉を失った。


「暴黒の獅子は、もともと本当に噂通りのクランでした。

実力の低い人も多くて、任務も失敗続きで……」


視線の先で、近衛が団員たちと何気ない会話をしている。


「それでも近衛さんは、見捨てなかったんです」


月島は、少しだけ遠い目をした。


「一年前……この拠点が、魔人に襲われたことがありました」


当時のメンバーで魔人を討伐できる実力者がいるはずもなく、被害はただただ増えていく一方だった。


「そのとき、近衛さんは偶然居合わせて……迷わず、助けに入ってくれたんです」



壊された建物。

逃げ惑う人々。

混乱の中で、ただ一人前に出た男。


「……その惨状を見て、私、思ったんです」


月島は胸元に手を当てる。


「このままじゃ、何も変わらない。

弱い人は、ずっと切り捨てられたままだって」


彼女は、クランを変えようとした。

無茶な依頼を断り、最低限の規律を作り、

“弱くても守れる組織”を目指した。


「でも……誰も、ついてきませんでした」


理想論だと笑われ、

お前らにはついていけないと背を向けられ、

一人、また一人と脱退していった。


「気づいたら、残ったのは……近衛さんと、私だけでした」


静かな沈黙が落ちる。


「それでも近衛さんは言ったんです。

『これでいい。最初からやり直そう』って」



月島は小さく笑った。

「任務を受けるより先に、仲間を集めようって」


無理に仕事を取らず、

評価を取り戻すよりも、

“信頼できる人間”を集めることを選んだ。


「そして薫さんと澪さんが加わって、

そのあとに千景さんと烈さんが来ました」


そして今。

陽翔がここに立っている。


「だから……この一年、暴黒の獅子はほとんど任務をしていません」


月島ははっきり言った。


「評判が更新されることもなく、

昔の“底辺クラン”って印象だけが、残ったままなんです」


「だから……暴黒の獅子は、今も“底辺”って言われてます」


悔しそうに月島は、はっきりと言った。


「過去が、そうだったから」


陽翔は、胸元の獅子の紋章を見る。

横を向いた獅子の顔と、金色のたてがみ。


誇示するでもなく、吠えるでもなく、

ただ静かに前を見据えている。


「……でも」


月島は、ほんの少しだけ誇らしげに微笑んだ。


「今は、違います」


陽翔はゆっくりと頷いた。


噂は、過去の影。

そして暴黒の獅子は——まだ、変わり続けている途中なのだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ