第3話 入団式
⸻
翌日──
陽翔はまだ体の疲労が残る体を引きずりながら、暴黒の獅子の拠点に向かった。
昨日の手合わせの悔しさと、契約書にサインしてしまった現実が頭の中をぐるぐる回る。
「……本当に、俺で大丈夫なのか?」
心の中で自問しながらも、足は自然と拠点の扉へ向かっていた。
────────────
拠点の大広間。朝の光が木の床を淡く照らす。
近衛がゆったりと立ち、皆を見渡す。
「さて、今日から新しい仲間が加わる。陽翔、まずは一言自己紹介してくれ」
陽翔は少し顔を赤らめ、深呼吸する。
「え、あ、はい……赤月陽翔です。人に魔法が撃てませんが、これから精一杯頑張ります。よろしくお願いします!」
団員たちは笑顔や軽い拍手で迎える。
「おい、声が小さいぞ!」と烈がからかい半分に言う。
優しそうな男性がゆっくり立ち上がる。
あまやかおる
「僕は雨夜薫です。副団長を務めています。陽翔くん、困ったことがあれば僕に相談してくださいね」
紺髪を七三に分けた髪型に丸縁メガネをかけ、穏やかな笑みを浮かべている。
落ち着いた雰囲気で、先輩として頼れる存在感があった。
もりやみお
「私は守谷澪。前線と回復を担当してるの。怪我したら私が治すから、遠慮しないでね」
薄紫がかったピンクの髪と瞳、グラマラスな体型とお姉さん気質の柔らかい立ち振る舞いが、初対面でも安心感を与える。
気が強そうな女性がら腕を組み、ぴしっと立つ。
はがねさきちかげ
「鋼崎千景。近距離から遠距離まで万能に動けるわ。……何かあったら言いなさい」
小柄で華奢な体型、灰髪のショートに黄色い瞳。少しツンとした雰囲気がある。
とどろきれつ
轟烈が腕を振り上げて元気に手を振る。
「昨日ぶりだな!俺は轟烈!陽翔!また手合わせしような!」
近衛が大きく深呼吸して立つ。
このえかずま
「改めて────俺は近衛一真。団長だ。陽翔、ここではお前の体術がみんなの力になる。困った時は俺を、皆を頼れ。任務でも普段でも、俺たちは一緒にやっていく仲間だ」
そして月島が優しく微笑み、陽翔に手を差し伸べる。
つきしまゆいな
「私も改めまして、月島結菜。ここのオーナーです!と言ってもそんな畏まらなくていいから安心してね。困ったことがあったらいつでも相談してね!」
柔らかい笑顔と落ち着いた声が、大広間に温かい空気を作っていた。
陽翔は胸が温かくなり、笑顔で答える。
「はい……皆さん!よろしくお願いします!」
近衛が大きく手を広げ、声を張る。
「よし、それじゃあ入団式のメインだ。陽翔に隊服を渡す」
目の前に置かれたのは、黒を基調にした精悍なデザインの隊服。
胸元には「暴黒の獅子」の紋章が刺繍されている。
紋章は横を向くライオンの顔だけが描かれ、たてがみは鮮やかな金色で縁取られ、黒い隊服とのコントラストが力強く映える。
ライオンの鋭い瞳は薄紫の糸で刺繍され、光を受けるたびに微かに輝き、威厳を放っていた。
「これを着れば今日からお前も正式な団員だ」
陽翔は慎重に手に取り、しばらく見つめた。
「……ありがとうございます……!」
近衛は軽く頷く。
「動きやすさと耐久性も考えて作られている。基本的に任務時は必ず着用だ」
「はい!」
近衛がにっこり笑い、手を広げて言った。
「よし、陽翔。ほら、あっちで隊服に着替えてこい」
陽翔は少し緊張しながらも指示に従い、更衣スペースへ向かう。
手にした黒い隊服は精悍なデザインで、胸元には横を向くライオンの顔の紋章が刺繍されていた。
たてがみは鮮やかな金色で縁取られ、薄紫の瞳が光を受けるたびに微かに輝き、威厳を放っていた。
袖を通し、肩を整え、ズボンを履き、ベルトで腰を締める。
鏡に映る自分を見て、胸が高鳴る──黒い隊服と金色の紋章、そして新しい仲間としての自分の姿。
「……かっけえ……」
自然と小さな声が漏れた。
更衣スペースから戻ると、団員たちの視線が一斉に集まる。
烈は目を丸くして手を叩いた。
「おお! 陽翔!似合ってるじゃねぇか!」
薫は静かに微笑み、頷く。
「うん、いい感じだね」
澪は胸元の紋章を指さしながら言った。
「この紋章がいいのよねぇ。皆同じだから仲間って感じ」
千景は腕を組んで、少しツンとした表情を作る。
「……なかなか悪くないじゃない」
月島は穏やかに微笑み、陽翔の肩を軽く叩く。
「とっても似合ってるよ、陽翔くん。今日から本当に仲間だね」
近衛はゆったりと笑い、両手を腰にあてる。
「よし、これで今日から正式な団員だ。さあ、これから一緒にやっていくぞ」
陽翔は胸が温かくなり、仲間たちの視線を受けて自然と笑顔になる。
「はい……よろしくお願いします!」
大広間には、少しだけ緊張と、たくさんの期待が混ざった、温かい空気が流れた──。




