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カフェに行くまでに他の店も覗いたりして、ゆっくりとカフェに向かった。
歩いたことで良い運動になったようで、暑がったロバートの希望で店の外の席に座ることになった。
来た店はケーキの種類が豊富なようで、気になりセシルもケーキを頼んだ。
歩いたおかげもあり、ケーキは美味しく食べられた。
ロバートとポリーヌは第2陣のケーキとお土産用のケーキを買おうと2人でケーキが並ぶ棚を見に行った。
セシルはまだ食べるつもりなのかと呆れて笑ってしまった。
ロバートとポリーヌは既に3つずつケーキを食べていたし、アンリすらお代わりはしなかったというのに。
「なぁ、昨日は悪かった」
2人になった時に、アンリが謝ってきた。
セシルは驚いて何も言えなかった。
「昨日も言ったけど、俺はただ文句言いたかっただけなんだよ。まあ、ちょっと卒業後のこととか、不安はあるし?あんたにはそういうイライラぶつけてもいいだろう、とかアホなこと思ってた」
セシルはその言葉に返事を返せない。
それでは昨日のアンリも本当に八つ当たりをしていたというのか。
「あんたに前言われたことは確かにショックだったけどさ、俺が見ないようにしてた現実を突きつけられただけで、俺が勝手にショック受けて腐ってただけだから」
「でも、私は酷いことを言ったでしょ?」
ポリーヌの時のように許される流れを感じたセシルは、自分が言ったことが酷いことだったのは変わらないと思った。
「ははっ。あんた本当に反省とかしてるんだ?まあ反省もしてないやつはそんな事言わないだろうしな。昨日も言ったけどさ、俺は文句言いたいだけのクソ野郎なだけだし、なんなら、ちやほやされていい気になってただけの勘違い野郎だし」
セシルは唖然としてアンリを見た。昨日から彼は自分のことを平気で悪く言う。
「この見た目でそこそこピアノが弾けるからってちやほやされて人生楽勝、って調子に乗ってたところをあんたに頭叩かれただけだからな、俺は」
アンリは自嘲気味に言い、セシルを真っ直ぐ見てきた。セシルはその視線に少しドキッとした。
「あんたが厳しいこと言うのは知ってたけど、どうせ俺の事は褒めると本気で思ってた。ほら、女って同性には厳しくても、男には媚びるやつの方が多いだろ?だからあんたも同じだろうと高くくってたら、厳しいこと言われて驚いた。っていうかまあその時は本気でショックだったのも本当だけどさ、あの時頭叩かれて良かった、っていうのも本当なんだよ。じゃないと俺はまだ勘違いクソ野郎のままだったからな」
そういえば昨日、アンリが絶叫していた時に、それらしいことを言っていた気がする、とセシルは思い出した。
いきなり叫声を上げられてただただびっくりしたのだったが。
アンリに言われて、セシルは確かに自分は男女関係無く悪点稼ぎをしていたなと思った。
他の者達は男性の前だと本性を隠していることが多かった。
「私は、ただ………」
醜い八つ当たりをしていただけなのだ。とセシルは言葉を続けることが出来なかった。
謝らなければならない流れの気がするのに、謝ることで自分の言ったことが無しにされるような勘違いを自分がしそうで嫌なのだ。
「あんたも俺の事は気にすんな。変に気にされると俺も気持ち悪いし。あんたのその偏屈そうな顔、止めてくれねえ?俺、基本単純思考でいたいし。それに、さっきの笑ったあんたの顔はまあまあ可愛かったぞ」
アンリの話の流れに付いていけずにセシルは首を傾げた。何か褒められた気もするのだが。
「アンリ・ロイドール氏、婚約者のいる女性を口説くのは止めたまえ。君はそうやって女性の機嫌を取りすぎるぞ」
ケーキを選び終えたロバートとポリーヌが戻ってきた。
そこでアンリと2人だけの話は終わった。
「セシルが可愛いことに今更気付いても遅いわよね。でも私もセシルは最近の服よりも今の服の方が似合ってていいと思うわ」
ポリーヌに褒められてセシルは少し頬を染めた。
セシルは褒められ慣れていないのだ。
服のことも姉妹に言われても実感が無かったが、ポリーヌに言われてそうなのかもしれないと思うことが出来た。
結局支払いはロバートがまとめてした。
女性に払わせたら男として廃ると言われ、セシルはロバートに甘えることにした。
ポリーヌは素敵な婚約者を持てているんだな、とセシルはまた嬉しくなった。
笑ったのはとても久し振りな気がした。
放課後に、親しい友人とカフェに行ったり買い物に行くことは、セシルが望んでいた学園生活だった。
セシルの悪点稼ぎによって今まで叶うことのなかった望みだったが。
(エミール様とはお出掛けすらしたことないのよね)
婚約者とカフェに行くことも夢見ていたが、1度も叶ったことがない。
それどころかセシルはエミールと出掛けたことすらない。
(私達、本当に婚約者だったのかしら)
セシルは自分で考えて自分で落ち込んだ。
せっかくポリーヌ達とカフェに行って久々に楽しかったのに、家に着く前には気落ちした状態だった。




