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セシルは今日もポリーヌ達とランチを取ることになった。
「俺、ただ飯食えるとこ知ってるぜ」
そうアンリに声を掛けられて、連れて来られた所は案の定ロバートとポリーヌの所だったのだ。
どうやらアンリは、セシルとオレリーのやり取りを見ていたらしい。
アンリと同じ貧乏男爵家のオレリーに、セシルがランチのサンドイッチをあげたことがアンリの好感を上げたらしい。
セシルは貧乏どころか少し裕福な子爵家の娘なので、ランチなら食堂に行ったり買ったりしたらいいだけなのでアンリの言う『ただ飯』は必要無かったのだが、昨日のアンリとの微妙な雰囲気を考えるとアンリの好意である誘いを断る事が出来なかった。
アンリに連れられて来たセシルを、ポリーヌもロバートも快く迎えてくれた。
どうやらアンリは貧乏男爵家の出身でお金がないので、食事を賄う為にロバートのランチを貰っているらしい。
「ロバートは来る者拒まず、去る者追わずだからな」
「こんな見た目の良くない僕と時間を共に過ごしてくれる者は全て友人だと思っているよ」
ロバートは己を卑下しながらも、近付いてくる者は決して断らないという。
(寛大な人なのだわ。ポリーヌの大切な人が良い人で良かった)
セシルは改めてポリーヌの幸せを喜んだ。
「ロバート様はあまり怒ったりはしなさそうですね」
セシルが言えばその場が微妙な空気に包まれた。
「そうだな。食べ物さえ関わらなければロバートは凄く寛大な男だ」
アンリの言葉にポリーヌも続く。
「そうね、食べ物の事以外ならロバート程心の広い人もいないと思うわ」
どうやらロバートは食べ物が絡むとダメらしい。
「お腹さえ空いていなければだいたいのことは気にならないよ」
ロバートはお腹が空くと怒りやすくなるらしい。
あえてそのことは知らなくて良かったような気がする、とセシルは思った。
ポリーヌの婚約者は良い人だと思えていれば良かった。
空腹になると怒りやすくなるということは、1日3回は怒りの危機があるかもしれないということではないか。
「明日は休日なんだし、この後は学園の外のカフェにでも行ってみないか?」
ランチも食べ終わる頃、ロバートが校外に出ることを提案してきた。
「マジで!行く!」
アンリが乗り気でその提案に乗った。
セシルは、もしかしたら自分がランチを分けてもらったせいでロバートのお腹が満たされなかったのではと心配した。
「セシル、2人はこの後の授業に出たくないだけよ。紳士科の次の授業は剣術だから」
セシルの心を読んだかのようにポリーヌが教えてくれた。
紳士科でも午後の授業は選択制のはずなのだが、選択制を取りながら強制されるのが剣術の授業だった。
「ロバート、たまには体を動かしたら?アンリ様も、もっと筋力をつける為に剣術の授業には出るべきではないかしら?」
ポリーヌの言葉に2人は悪びれもなく答えた。
「ポリーヌ、このメンバーでカフェに行けるのは今日だけかもしれないんだよ?剣術の授業に出てしまえばきっと僕は機嫌が悪くなり、カフェどころか休日の間中ストレスで暴食してしまうかもしれない」
「俺は儚げな美少年が売りだから。筋力とかいらないから」
これを聞いてポリーヌは諦めたみたいだ。
それよりも当たり前のようにセシルが人数に入っているのが気になる。
「あの、私は」
行かない方が良いのではないか。セシルが行けば楽しい雰囲気が台無しになってしまうのではないか。
そうセシルが言おうとしたのを察したのか、アンリが言ってきた。
「あんた、このバカップルと俺だけで行けとか言わないよな?これでも2人のデートに着いていくのは俺だって気が引けるんだから、あんたが来ないと俺だって行きにくいんだぞ」
アンリにそう言われてしまうとセシルは拒否が出来ない。
確かに仲の良い婚約者同士の間に入って行くというのは行きにくいかもしれない。
結局セシルも一緒に行くことになった。
荷物を取りに淑女科にポリーヌと戻る。
「セシル、嫌じゃなかった?」
ポリーヌに心配そうに聞かれて、セシルは全く嫌だと思っていないことに気付いた。
「嫌じゃないわ。むしろ、とっても楽しみ」
セシルは自然と笑顔で答えた。
学園の学友達と授業の後にカフェに行くのは初めてだった。
しかも午後の授業をサボって行くのだ。
どちらかというと型にはまったような生き方をしてきたセシルはその刺激を楽しく思った。




