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悪点稼ぎ  作者: さおん
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12/22

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(嫌な所に遭遇してしまったわ)


セシルは学園の校舎の回廊で揉めているらしい集団を見付けて溜め息を吐いた。


見える先ではロゼッタの取り巻きをしている令嬢3人がゾフィーに詰め寄っていた。


「たかだか男爵令嬢ごときが生意気だと言っているのよ!」

「男に媚びばかり売って恥ずかしくないの?」

「殿下にはロゼッタ様がいるのよ!」


3人に詰め寄られているゾフィーは『可哀想』と思わず思ってしまいそうなか弱い令嬢を演じている。


「そんな!私はそんなつもりではありませんわ!皆様怖いことばかり言って酷いです!」


可哀想な令嬢にしては大きな声で反論するゾフィーは、他の人の注目を集めて現場を見せることが目的なのだろう。



セシルはゾッとした。

今まではセシルもあの中に交じっていたのだ。


(なんて、醜いの!)


部外者として外から見ればこそその異常性が分かる。


(皆様言っていることにまとまりがないし、ゾフィー様の言い返しも何だかおかしいわ)


どうしてこんなことを日常的にやっていたのか。

この愚かな行いに正義感すらもって行っていたというのだから恐ろしい話だ。


(オルガ様は婚約者がいない苛立ちを。シェリー様は父親より年上の方に嫁ぐことへの不満への苛立ちかしら。ヘレン様は婚約者と上手くいっていないらしいからそれね)


セシルはロゼッタの取り巻きとして行動している3人の心情を推測した。


(その苛立ちの『八つ当たり』よね)


3人がゾフィーに詰め寄る理由はおそらくそれ。

本来の苛立ちの原因の解消にはならない八つ当たりなので、どれだけゾフィーに当たったところで3人の苛立つ気持ちはほんの少し紛れる程度だろう。

否、紛れればまだいい方か。

本来の原因から逸れることで本来の原因に気付く可能性が遠退いただけなのかもしれない。


(私は、まだ気付けただけましなのかもしれない)


セシルは見ているのも馬鹿らしくなってその場が見えない所にでも行こうとしたのだが、そちらの方にロゼッタとエミールが向かって行くのが見えて立ち去ろうとした足を止めた。


「皆様、もうそれくらいにしましょう?」


ロゼッタが声を掛けると、取り巻き3人は大人しくなった。

ゾフィーだけはゾフィー劇場の為に声を大きくして言う。


「酷いですわ、ロゼッタ様!いくら私が憎いからって、こんな虐めをすることないでしょう?」


因みに今までのゾフィーへの詰め寄り全て取り巻き達が勝手にやったことで、ロゼッタにしろと言われた事は一度もない。


「ロゼッタ嬢が君を虐める理由などないだろう?」


ゾフィーに声を掛けるエミールの声は、セシルが思っていたよりも冷たく聞こえた。

いつもの、誰に対してもにこやかに対応するエミールらしく顔は笑顔なのに、普段よりも言い方にトゲがあるように感じた。


「そんなぁ!エミール様はその方達に騙されているのです!」

「僕が騙されているというのなら僕が悪いのだろう。君に騙されるよりはましな気がするけどね。さて、どうやら僕の目的はここには無いみたいだ。ロゼッタ嬢、僕は先に失礼する」


エミールは何をしに来たのかすぐにその場から去っていった。


(エミール様!)


セシルは今週初めて見るエミールに心がざわつくのを感じた。

おそらく、エミールは第2王子を探しているのだろう。

いつもどこかにふらふらと行ってしまう第2王子を探すのがエミールの大切な役割なのだから。


(殿下を探すように、私の事も探してくれたらいいのに)


まだ諦めきれない恋心がエミールを求める。


紳士科と淑女科は建物が違うので、お互いが予定を合わせようとしないと中々会うことが出来ない。

第2王子を探すことで忙しいエミールとは予定を合わせようとすることも難しかった。

第2王子と会う可能性が高いロゼッタの側にいる方がエミールに会える可能性は高かった。


(殿下にも困ったものだけれど)


第2王子は何人もの女性との噂もあるし、授業もよくサボって良い噂が全くない。

最近は特にゾフィーに入れ込んでいると噂されている。


(それでも、殿下はロゼッタ様を想っていると思うのだけど)


第2王子をとにかく学園に来させる為にロゼッタが朝に会うことを提案すると、第2王子が学園に来ることが多くなった。

ランチも、想定したよりも来ることが多かった。


(ロゼッタ様が他の男子生徒と話していると邪魔されるし)


その時の事を思い出してセシルは1人苦笑した。

その時のセシルは、せっかくロゼッタが他の生徒と交流しているのに何故邪魔をするのかと心の中で怒った。

今のセシルは、第2王子がロゼッタのことを気にしていた証拠のようで嬉しく思うと共に、エミールにもそういうところがあれば良かったのに、と羨ましく思う。


(ただ、ロゼッタ様がどう思っているのかは分からないのだけど)


ロゼッタは黒髪の美しいくっきり美人で、女性らしく羨ましい体型をしていて、セシルの憧れでもあった。

悪点稼ぎの最中ではロゼッタに対しても陰口を言ったこともあったが、正直なところは憧れている。

ロゼッタは見た目に反して、意外と大人しい性格をしている。

大人しいことをいいことに、自称取り巻き達が好き勝手しているのだが。



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