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ぱんでみっ!  作者: 陽碧鮮
第壱章 始まる生活 終わる日常
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対生徒会戦-中編-

「待たせたな。上杉は安らかな表情で寝ているからまあ大丈夫だろう」

 それ本当に大丈夫か⁉︎

「また愛のファンが増えちゃった♫」

 多分お前が思っていることとは真逆の意味で天に召されそうだぞ。

 あれ? そういえば——

「これって完全な抽選ですよね? もしもロシアンルーレットが最後まで選ばれなかったらあの危険…いえスープはどうするつもりだったんですか?」

「そうだねー♫ 勝ったチームの祝勝会に提供したかなぁ☆」

 上杉先輩まじグッジョブ。

 この瞬間だけ相容れぬ生徒会チームと心が通じ合った。

「えー、それでは第二戦を始めたいので代表者の方は前にぃ♫」

『ワタシが行く』

「…よし、行ってこい」

 心配じゃないと言えば嘘になる。しかし、クリス先輩の真剣な表情を見て俺は信じ送り出した。

 ライオンは子供を強くするために谷からわざと落とすという話を聞いたことがある。

 そのライオンも今の俺と同じ気持ちなのではないか。いや、言いすぎた。

 それにどうせ皆戦うハメになるのだ。だったら焦らされるよりも早々に終わらせた方が気持ち的にも楽だろう。

「続いての第二戦、挑戦者チームからは二年——クリスティーネ・ハーシェル♫ 生徒会チームからは三年書記——大萌(おおもえ)(びょう)に決定しました☆」

 二人は先ほどの戦いのように中央へと向かう。

「ぼ、僕の名前は大萌描。よ、よよろしくね、ヒヒッ」

『ワタシはクリスティーネ・ハーシェルです。よろしくお願いします、大萌先輩』

「合法ロリキタァァァ! こんな可憐な幼女に先輩と呼ばれる日が来るとはもう現世に悔いはないでござるぅぅぅ!」

 急に元気になった。ござるって忍田と気が合いそうだな。

「お二人の能力は『みんなのまとめ役(メディエーター)』と『巧妙な贋作ペイント・クリエーション』でお間違えないですね?♫」

 頷くとスクリーンに二人の能力が。っていうか大萌先輩なんでそんなに汗かいてるの?確かに太ってるけども…強いて言えばクリス先輩と話したくらいだよな。


 『みんなのまとめ役(メディエーター)』…同学年、又は下級生の非行や喧嘩を強制的にやめさせ、一時的に対象の能力を封印する能力。

 『巧妙な贋作ペイント・クリエーション』…描いたものを一定の間創造する能力。描いたものならオリュンポス十二神や絶対の盾なども創造できるが、あくまで『贋作』なので虚仮威(こけおど)し程度にしか使えない。


 この大萌先輩の能力ってバラしちゃったら足止めくらいにしか使えないんじゃ…。

 まあそれよりもクリス先輩の方が悲惨だけど。なにせ対戦相手が一年先輩なのだから。これも早乙女同様機能しないと見ていいだろう。

 全ては勝負内容で決まる。

「今回の勝負内容、それは——お絵描き対決ぅー♫」

 あの箱の中身はみんなこんな内容なのだろう。気にしたら負けだ。

「内容は簡単明快っ♫ 十分でより良い絵を描いた方の勝ちです☆ あ、絵の審判員は愛ね♡」

 二人に紙とペンが配られ、勝負開始——となる前にクリスが手を挙げた。

「ん?♫ なになに?☆ お姉さんになんでも言ってみなさい♡」

『お題とかは?』

「失敬失敬♫ 愛、失念してたっ☆ お題はねー…可愛いものっ♡」

 その言葉で、ようやくスタートする。

 クリス先輩はいつも通り笑顔で、さながら園児のように紙の上に色を置いている。

 一方の大萌先輩はというと、何やら一人変な笑い方で笑いながら迷いなくペンを走らせていた。

 クリス先輩を信じていないわけではないが、なんだか不安だなぁ。

 開始から五分が経とうとした頃、突然大萌先輩が口を開いた。

「ヒヒッ! ぼ、僕は今描いたこの絵を僕の能力によって想像する!」

 大萌先輩の掲げる手には、今描いたであろうたくさんのアニメのキャラクターたちが。

「来るんだ! ぼ、僕の応援団たち‼︎」

「おおおおお‼︎」

 いや、俺はただの危ない人だなと思っていたが、中二病患者である白谷なんかは明らかに興奮の色を見せていた。

 女子たちは無言。俺に向けられているわけでもないのに、彼女たちの視線が辛い。

 というか決闘の最中に何やってんの?半分の時間使って。

 大萌先輩はたくさんの応援団の方々に激励されながら再び描き始め、

「…そろそろ十分だよ♫」

 二人はそれに従って手を止めた。と言っても最後の方は二人とも完成していたようで、少しの手直しを行っていただけのようだが。

「それじゃあ…どっちから発表する?♫」

 それに真っ先に反応したのは大萌先輩だった。

「ぼぼ僕から発表するよ!」

「おおっ♫ それじゃあどうぞ☆」

「ぼ僕の最高の芸術…とくとご覧あれ」

 大萌先輩が見せた紙、そこには——

「クリス、先輩?」

「そうっ! 僕はクリスティーネさんの可愛さを完全に再現した!」

 描かれていたのはクリス先輩。いわゆる萌え絵というやつでだ。一回り大きいサイズの裸ワイシャツで恥じらうクリス先輩という究極の可愛さがそこにはあった。

「俺様…この世に生を受けてから数万年…ここまでの『美』というものを未だかつて見たことがねぇ」

 隣の白谷がそんなことを呟く。そう、これは、

「「俺たちの負けだ」」

 これ以上の絵がこの世に存在しようか? いや存在しない。

「うぅ…視界がぼやける」

 白谷なんて涙を流す始末だ。

「なあ、姫野。この戦いは俺たちの負けだ。今回ばかりはしょうがないよな」

「…はぁ?」

 俺の思いとは裏腹に姫野、いや女子陣の反応は酷いものだった。

「あれ唯の絵じゃない。紙とインク。なに、あんた紙と結婚したいわけ? それにあんなキワドイ格好が許されるわけないでしょ! クリスを見なさいよ! 呆然としてるわよ⁈」

 見るとクリス先輩は固まっており、白谷はいいとして、薫は無言。相手サイドでは神宮寺先輩があからさまに不快だという表情をしていた。

 支持は得られなかったようだ。仕方ない、これは男のロマンなんだ。

「えぇー…♫ 続いてはクリスティーネさんの発表です☆」

 場を仕切り直すかのように偶像先輩の声が入り、クリス先輩が絵を開示する。

 そこには——幸せが溢れていた。

「白谷…」

「ああ…俺様たちが間違っていた」

 リボンやぬいぐるみ、動物や洋服。

 紙にはクリス先輩が可愛いと思ったもので溢れていた。

 俺たちはなんて穢れていたんだ。何が究極の可愛さだ。何が美だ。これこそが芸術だろう。

 俺たちはイラストのクリス先輩という偶像に汚れた劣情をぶつけていただけだったんだ。

 俺と白谷は無言で拍手する。クリス先輩が一番だと言わんばかりに。

「結果発表っ♫ 勝者は…挑戦者チーム、クリスティーネさんです☆」

◯☆%(やったぁぁぁ)!」

 ぴょんぴょんと飛び跳ねて喜ぶクリス先輩。

『やった! やったよ秀勝!』

「ええ、すごかったです。純粋な頃の気持ちを思い出しました」

「——?」

 これで一勝一敗。このまま流れに乗る!

「き、君達」

 負けた大萌先輩は生徒会たちの方へは戻らず、俺と白谷を呼ぶ。

 俺の心は浄化されたんだ。今更何の用もない。

「——君達とは友になれそうな予感がしたんだ。こ、これ、お近づきの印に」

 そう言って渡されたのは先ほど描かれたクリス先輩の絵。

「「…………」」

「…お近づきの印ならしょうがないな」

 白谷が受け取る。曇りのない笑顔で。だが俺は騙されない。

「待て、お前じゃ不安だ。また下衆な気持ちが生まれるかもしれない」

 俺は白谷から絵を強奪、否、引き取った。

「おい、お前の方が危ないだろ。俺様はきっちり保管してやるからさっさと渡せ」

「てめぇやるのか⁉︎」

「ああ‼︎ 上等だコラ‼︎」

「その天使は俺のもんだ‼︎ この野郎‼︎」

「クソ野郎‼︎ その女神は俺様に微笑んでるんだよ‼︎」

 この世は弱肉強食。勝った者が全てだ。

「あんたたちうるさい!」

「グヘッ⁉︎」

「ゴフッ⁉︎」

 …姫野の拳は効くなぁ。姫野は俺たちの宝を強奪するとびりびりに破り捨てた。

「「ああ⁉︎」」

「クリスも何か言ってやりなさい。このどうしようもない奴らに」

「…………」

 クリス先輩が若干の羞恥が入り混じった冷たい目でこちらを見る。

「ち、違いますよ? クリス先輩! 俺はこの馬鹿が欲情しないように———」

「姐さん! 誤解だ! 実はこいつが狙ってたから守ってたんだ!」

 クリス先輩は少しの間黙った後、

『知らない』

 そう言い残して早乙女の方へと駆けて行った。

「「あぁ…」」

「ほら、次の戦いが始まるわよ」

 打ちひしがれる俺たちをよそに決闘は進んでいく。


  第二戦  お絵描き


  ☆クリスティーネ・ハーシェル  VS  大萌描★


「続きましては第三戦っ♫ 代表者は前へ☆」

 俺が行ってもいいんだけど、姫野に最後って言われてるからなぁ。姫野と白谷、どちらが行くのか。

「俺様が出向く」

 自信満々といった表情でそう言う白谷。

「そして、かっこよく勝利して姐さんの機嫌を直してもらう」

 私利私欲。私情しかないじゃねぇか。

 白谷は両手を組んで、あたかも強者の雰囲気を演出しながら偶像先輩の元へと向かう。

 ちなみに俺は応援しない。お前だけクリス先輩に許されようとするのは認めない。せいぜい派手に負けてこい。

「決闘も中盤の第三戦、挑戦者チームからは一年———白谷龍也♫ 生徒会チームからは三年庶務———星野(ほしの)(しょう)でぇーす☆」

「よろしく頼む」

 さっき上杉先輩を保健室まで運んでいった先輩だ。普段から鍛えてるのか服の上からでも筋肉が隆起しているのがわかる。

「フッ、あんたはかなりの実力者だ。ただ、相手が悪かったな」

 お前物理的にボコられるぞ?

「お二人の能力は『真剣勝負(フェアマッチ)』と『高位召喚術師(ハイ・サモナー)』でお間違えないですね?♫」

「ああ」

「うむ」


 『真剣勝負(フェアマッチ)』…自身が関与するあらゆる勝負事において、一切の不正を行えなくする能力。

 『高位召喚術師(ハイ・サモナー)』…ドラゴン、アンデットは勿論のこと、高位の魔獣や精霊までも召喚できる能力。


 勝負の内容次第では使える能力かもしれないが、そもそもこの先輩は不正なんて行いそうもない。元よりガチンコ勝負だ。

「勝負内容は——腕相撲対決ぅー♫」

 あっ、負けた。

 こんなの消化試合だ。

「ふぅーー」

 結果は絶望的、のはずなのに白谷は伸びを始め身体をポキポキと鳴らす。

 次は指、そして首。なんだ、虚仮威(こけおど)しか。

「さて、本気出すか」

 そんな白谷の目の前にいる星野先輩はというと、ワイシャツを脱ぎ捨て肌にぴっちりと馴染んだシャツに。臨戦態勢へと移行していた。

 丸太のような腕はワイシャツを脱ぐことによってさらにその筋肉の質が見て取れる。

 指を鳴らすことによって生まれた音は白谷が出した高い音とは別次元と言って差し支えがないほどに低く、(うな)っていた。

 そんな様子を見て、俺が諦めの表情を浮かべているのを見た白谷は語り始めた。

「面駅…この前、お前の部屋のコップをバラバラに壊したことあったろ」

 確かにあった。姫野のお気に入りだったからかなり怒られてたな。しかしそれがどうした?

「あれな、間違っちまったんだ——力の入れ方をよ」

「なん、だと?」

 まさかいつもはセーブしてたとでもいうのか⁉︎

 嘘——そう思って白谷の顔を見るが、そこには自信満々の、負けるとは微塵も思っていない表情があった。

 もしや、いけるのか?

「それでは二人とも組んで♫」

 身体の大きさでは圧倒的に小さいはずの白谷がなぜか大きく見える。いけ!

「レディ——ファイト‼︎♫」

 ダンッ!という大きな音が響く。俺の目に映ったのは一瞬で負け、小さく見える白谷の背中だけだった。

「勝者、生徒会チーム、星野召!♫」

「…………悪りぃ」

「いや、俺でもあれには勝てない」

 いつまでもしょげてちゃダメだ。ただ、

「コップを壊した話は?」

「ああ、軽く持ちすぎたせいで落としてバラバラに割れた」

 期待を裏切らないな。最高だぜ。


  第三戦  腕相撲


  ★白谷龍也  VS  星野召☆

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