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ぱんでみっ!  作者: 陽碧鮮
第壱章 始まる生活 終わる日常
26/34

対生徒会戦-前編-

         ☆


 日曜日。戦いの日だというのに外は土砂降りの雨で、憂鬱な気分になりながらも俺たちは生徒会室へと訪れていた。前回来た時は神宮寺先輩の他に一人しかいなかったが、今回は五人全員が揃っているようだ。まあ当たり前の話だが。

 それに加えて、俺たちと生徒会メンバーに挟まれる形で一人の少女が立っている。制服、というよりはアイドルが着ていそうなキラキラとした服装で、だからこそ腕に付けられている『放送委員会』という腕章が違和感を放っていた。

「あーーー♫ あーーー☆」

 そんな発声練習を終えた少女はコホン、とあざとい咳払いをした後——発声練習くらい事前にやっとけよ、と思ったのは俺だけではないはずだ——ようやく話し始めた。

「皆さんこんにちは♫ 本日はお日柄もよく——」

「早く本題に入ってください」

 前々から考えていたのだろうか、せっかくの挨拶を神宮寺先輩に潰された少女はしょぼんとした表情を見せるが、すぐに立ち直る。

「改めましてこんにちは♫ 今日の決闘の審判兼立会人を務めさせてもらう放送委員長、学園のアイドルこと偶像愛でぇーす☆ あ、サインとかは後にしてもらっていいかな?♡」

 一言言っておくが誰も頼んでいない。

 しかし、偶像先輩はこんな空気は慣れているとばかりに進行を進める。

「えぇーと、じゃあ愛からの話はこれくらいにして…こちらをご覧ください♫」

 その声と共に偶像先輩は背後にある大型のスクリーンを起動させた。

 真っ白のスクリーンはそれに従って切り替わり、目の前にいる姿とはまた違った衣装に身をまとった偶像先輩が映し出された。

『皆さんこんにちは♫ 本日はお日柄もよく——』

「これ、スキップできないのですか?」

「……できます…♫」

 再びの神宮寺先輩の無慈悲な言葉により偶像先輩はリモコンを操作。スクリーンからはピッ、ピッ、といった無機質な音が流れる。

 少しだが途中、偶像先輩がステージで歌ってるシーンが見えた。いや、見間違いか。

 どれだけ長い映像なのか。長い沈黙に耐え切れなくなった俺は間を持たせようと偶像先輩に話かけた。

「こういうのってどうやって作ってるんですか?」

 すると偶像先輩はこちらに向き直り、疲れた笑顔で、

「ううん…自主制作……昨日徹夜で…♫」

「あっ…。なんかすいません」

 とっさにでたその『すいません』という言葉が、徹夜で作ってもらったという申し訳なさからなのか、自称学園のアイドルが陰で自身のキャピキャピ映像を自身で編集していたことを聞いてしまったことから来た罪悪感なのかは深く考えないことにした。

 スキップが終わったのか、再びスクリーンから独特のアニメ声が流れる。

『——愛が話すことは大きく分けて三つ♫ よぉーく聴いててねっ☆ まず一つ目♡』

 スクリーン上に大きなテロップが浮かび上がる。

『『学園封鎖』!♫ どんな決闘になるか、まだ決まってないから、今日限りだけど学園内全てへの生徒の立ち入りを禁止しました☆ これによってみんなはのびのびと決闘ができます♡』

 昨日この通知を受けたときは驚いたが、まあ生徒会の権力が関わってるとなれば普通か。委員会とも結託して動いていたみたいだし。

「ふふっ、今この場に立っているのは俺様を含めた十一名——選ばれし者のみ!」

 白谷が何か言ってるが、ここはスルーしておこう。気にしなくてもクリス先輩が相手してくれる。

 そんなことを考えているうちに次、二つ目のテロップが流れた。

『——『決闘形式』!♫ はいっ、この決闘形式についてですが、一対一の五開戦、そして先に三勝した方の勝ちです☆』

 それに続いて更に別のテロップが浮かび上がる。

『更に、『決闘内容』のことなんだけど、それはこちら!♫ 選挙管理委員長の巡君が作ってくれた、ボックス☆ この中にたくさんの決闘内容が書かれた紙が入ってるから、毎回決闘が始まる直前まで内容はわかりません♡』

 実際にいる偶像先輩も、皆に抽選箱のような箱を見せる。やけに映像の箱とは違うが、デコレーションを施した結果だろう。ハート形の風船や紙を切り抜いて貼り付けてあったりと見ているだけで胃もたれを起こしそうな箱だった。

『あ、この決闘は能力の使用が禁止されているわけじゃないからどんどん使っていいよっ♫ っていうか能力の使い方次第で勝負の命運を分けるといっても過言じゃないかな☆』

 これは予想できた。ただの勝負なら生徒会チームにも負ける可能性があり得るのだから。だから考えてきた——俺だけの設定能力を。

 できれば三回連続勝利で俺の出番がないのが理想だが。見る限りそんな甘い考えは捨てた方がいい——むしろ三回連続敗北で俺の出番が回ってこないことの方が十分あり得る。

『——そろそろお別れのお時間が近づいてまいりましたっ♫ 最後は愛の新曲、『ラブリー♫ ラブリー☆ ラブリー♡』を歌いながら終わりたいと思います☆』

 はっ?

『聞いてください…偶像愛で『ラブリー♫ ラブリー☆ ラブリー♡』』


『——この放送は』

『——放送委員会副委員長、前川花と』

『——学園のアイドル、偶像愛でお送りしましたっ♫』

「「「…………」」」

 …どうすればいいんだ、この空気。神宮寺先輩も何も言わないし。ただ淡々と自作の歌を聴かされて。

 正直、この状況は予想できただろ。なんで挑戦した?

 後、前川先輩はなんで手を貸した? 撮影、照明、衣装——何かは知らんが最後の一言からかなりの達成感が伝わってきたぞ。

「愛からのお話は以上でぇす♫ では、早速第一戦を始めていきましょうっ☆」

 笑顔でスルー⁉︎この人何も感じてないの? 羞恥心ってものがないの?

「それぞれ、代表者を選出してください♫」

 …………プロだ。


 偶像先輩の言葉で俺たちは一箇所に集まり、話し合う。

 初戦は勢いに乗るためにも逃せない大切な戦いだ。だから——

「私にお任せください」

 俺が口にする前に、早乙女が名乗りを上げた。この万能執事には、言わなくともわかっていたようだ。

「任せた」

『がんばってー』

「負けるんじゃないわよ!」

「お嬢様の言いつけとあらばこの早乙女、必ずや勝利を挙げましょう」

 早乙女は深々と一礼すると、偶像先輩の元へと向かった。

「負けても俺様が秘められし暗黒の力によって全てを覆してやるから安心して戦ってこい‼︎」

 バカっ! 縁起でもないこというな!

「はいっ♫ それでは第一戦、挑戦者チームからは二年——早乙女薫☆ 生徒会チームからは二年会計——上杉(うえすぎ)(きゅう)に決定しました♡」

 二人は対峙し、残りの俺たちはそれぞれ端に逸れる。

「お二人の能力は『淑女優先ワンセルフ・ファースト』と『超再生能力者(ハーフ・アンデッド)』でお間違えないですね?♫」

 二人が頷くと同時、先ほどまでライブ映像を映し出していたスクリーンに、それぞれの能力名と効果が映し出される。


 『淑女優先ワンセルフ・ファースト』…自身の認めた者を周囲よりも優先してお世話できる能力。

 『超再生能力者(ハーフ・アンデッド)』…あらゆる傷を、瞬時に完治させる能力。


 勝負ありーーーー!

 これは酷い。早乙女の能力なんてあってないようなものだ。

 だが、早乙女には何の不満もないようで対戦相手である上杉先輩をドヤ顔で見つめていた。馬鹿だ。

「そして、みんなが気にして止まない一回戦目の勝負内容は——逆ロシアンルーレット対決ぅー♫」

 は?

「今から用意する数々の料理の中で、一つだけ愛が作った料理があります♫ お二人は順番に好きな料理を選んでもらって、見事愛のお手製料理を食べた方の勝利となりまぁす☆」

 は? どこの芸人だ。

 偶像先輩は生徒会室から出て行き、やがて大きな布が被せられた配膳台車を運んできた。

 偶像先輩が部屋に入ってくると同時、皆は思わず顔をしかめる。なぜなら配膳台車から、嗅いだこともない異様な臭いが漂ってきたから。

「抽選の結果、初手は上杉君から♫ では、好きなものを選んでねっ☆」

 偶像先輩が大きな布を引き剥がすと同時、異様な臭いが明らかに強くなり、偶像先輩以外は隅へと避難する。

 臭いが、どれから放たれているのか。それはすぐにわかった。一番端に置かれた寸胴鍋、そこから何やら紫色の湯気が上がっているのだ。

「ふふっ♫ どれが愛の作った料理なのか見当もつかないねっ☆」

 あいつ視覚も嗅覚も味覚もイカれてんじゃねぇか?

 偶像先輩の作った料理。それは十中八九あの謎の紫スープだろう。平和な雰囲気から一転、一気に本格ロシアンルーレットへと早変わりだ。

 正解はわかった。問題は——

「え? ぼっ、僕があれ食べるの?」

 そう。勝つということは命を捧げる(食べる)ということと同義なのだ。

 上杉先輩は、鼻をつまみながら配膳台車へと近づいていく。

「…………」

 正解の前へとたどり着いた先輩は無言で、寸胴鍋を見つめる。

 すると突然、上杉先輩は大粒の涙を流し初めた。

「そこまで無理するな上杉! お前が負けても俺たちが取り返してやるから!」

 目の前の恐怖には勝てない。そう思った生徒会メンバーはそんな言葉をかける。しかし、上杉先輩はそんな先輩の言葉に対して首を横に振った。

「違うんです。…この紫色の湯気が目に入って…」

 とんだ劇薬じゃねぇか! 目に入って涙でるって玉ねぎか化学の実験でしかないぞ。

 先輩は、涙を流しながら他の生徒会メンバーへと微笑んだ。

「僕の能力は『超再生能力者(ハーフ・アンデッド)』。あらゆる傷を、瞬時に完治させる能力です。安心してください」

「…………すまない」

「何を謝ってるんですか。じゃあいただきます」

 何このドラマ。両方涙流してるし。

 上杉先輩は震える手で紫色スープをすくうと一口——口に運んだ。

「…食べたこともない味…ほら平気です。でも…少しだけ…眠…く…」

 その言葉が上杉先輩の今日最後の言葉だった。頭から床へ倒れこむ。

「上杉いぃぃぃぃ⁉︎」

「あれ、天に昇るほど美味しかったみたい!♫ ということで正解です☆」

 上杉先輩は、生徒会メンバーに抱きかかえられ、保健室へと運ばれていった。

 今、ホッと安堵のため息を漏らした早乙女を誰を責めることはできないだろう。

「第一戦、生徒会チームの勝利ということで——」


  第一戦  逆ロシアンルーレット


  ★早乙女薫  VS  上杉穹☆


 その星は素か? わざとか?

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