表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界血ート剣客 拙者・葵光剣は異世界に貢献するでござる!  作者: 鬼京雅
二幕・異世界転生せし新選組動乱編
30/33

新選組一番隊組長・沖田総司との死闘

 永倉さんを倒した俺は、王の間の奥へ続く隠し扉から先へ進んだ。

 その一本道を進んで行くと、また扉がある。

 その扉を開くと、柔らかな微笑を見せる男がいた。

 その男は髪が俺のように腰まで長く、女のように色が白く、怪しい色香さえあるが女ではない。

 新選組の羽織の下の身体が鉄のように鍛え上げられた身体で、無敵とさえ言われた最強の男――。

 そこには新選組一番隊組長・沖田総司がいた。


「……ここにもクリスタルが無く、カツラ国王もいないとなると、更に先か。沖田さん、どうなんだ?」


「フフフ。その通りですよ。ですが貴方はここで死ぬ。私の刀でね」


 その沖田さんはすぐに刀を抜いた。

 どうやら無駄な会話をするつもりは無いようだ。


「好都合。後がつかえているからな。早急に貴方を倒すぞ沖田さん」


「異世界の技も面白いですが、やはり天然理心流の私としては天然理心流で戦いたいのものです」


「そうか――」


 俺は飛び上がり、流星斬を叩き込む。

 しかし、それは沖田さんの刀の鍔元で防がれた。


(流星斬を防いだ? ……来る!)


天然理心流てんねんりしんりゅう虎尾剣こびけん!」


 相手が攻撃してきたら刀の鍔元で受け止めて押し返し、相手の構えが崩れた所をすくい上げる様に胴を切り上げる天然理心流・虎尾剣こびけん。虎は、相手の攻撃をかわしつつ尾で相手を打つとされている事からこの名が付いたらしい。


「――螺旋斬らせんざん!」


 ギリギリの所で、螺旋のように身体ごと旋回させる螺旋斬にて防いだ。

 そして、その勢いで斬りかかる!


「つえぁ!」


「遅い! 天然理心流・龍尾剣りゅうびけん!」


 龍が尾を振るって相手を打ち倒す様に、剣を振るう返し技である龍尾剣。下段の青眼の構えで相手の攻撃を誘い、打ち込んできた相手の刀の切先をギリギリのところで鍔で受け、摺り上げて上段から相手の胴を斬る技。確か、近藤局長が最も得意とした技だった。

 その直撃を受ける俺は背後の壁に叩きつけられる。

 しかし、俺の目は死んではいない。

 その理由はただ一つ……。


「今日、今、ここで。俺は沖田総司を超える」


 俺はこの天才剣士を超える覚悟を改めて決め、刀を構える。


「その剣、清流刀せいりゅうとう。それは確か誰かきらの貰い物でしたね?」


「そうだ。この刀は貰い物……俺の大事な人からの貰い物」


「お金大好きの豪商・鴻池こうのいけでしたけっけ?」


「違う」


「なら、桔梗ききょうさん?」


「それも違う」


 キインッ! と刃がぶつかる。


「あーそうだ! 貴方の女からですね?」


「!? ――このっ!」


「ウブですねアオイさん」


 俺の乱れた斬撃は外れる。

 そして笑う沖田さんは言う。


「あぁ、思い出した。それは薩摩の西郷さんからの贈り物ですよ」


「西郷からの贈り物だと……?」


 俺は愕然とする。


「敵に塩を送るという言葉もあるし、第一に西郷はあの女……」


「黙れ――」


 スパッ! と沖田さんの首筋を斬る。

 微かに切れた首筋を抑える沖田さんはフフフ……と微笑み言った。


「いい殺気です。常にそういてもらいたい」


 沖田さんの目が笑っていない。

 童子のように相手を殺す無双心むそうしんが発動する前兆か?

 ならば、このままでは俺も勝てない……。

 ミツバの血が必要だ。

 この人に勝つには完全な血ート剣客モードにならないとならない。

 まだミツバはここに来ない。

 ならば……。


「ブラッドカプセルの二つ目だ。効果が消えるまで使うなと言われていたが、五割の力じゃ貴方には勝てない。二粒を短期間で飲めば十割の力が出るだろ……」


「そうですか。どうぞ。飲む時間はあげますよ」


 その沖田さんの言葉で、ブラッドカプセルを取り出す俺は二粒目を口に入れようとする――。

 しかし、そのカプセルは誰かに奪われた。


「誰だ! 俺の邪魔を……!」


「誰だ! 誰だ! 誰だーーー! 空に浮かーーぶ桃色最強美少女! ミツバちゃんだよ!」


 突然、ミツバが来た。

 どうやら、城下街の戦いは何とか魔法騎士団が持ちこたえているようだ。

 この相棒の登場に安堵するが、もう時間も無い。

 クリスタルも使わせないし、国王も殺させるわけにはいかない。


「時間が無い。ミツバ……血をもらうぞ」


「うん……」


 ねっとりと舌を這わせ、ねちょねちょとミツバの首筋に吸い付く。

 ペロペロペロ……と舐め、首の肌を刺激し、愛撫してからその唾液を吸う。


「あ……」


 ミツバも相当感じている。

 そして軽く甘噛みし、微かな血を吸う。

 舌先を小刻みに動かし、血と唾液でミツバの全身を快楽へ誘う。

 そう……もっと感じろ。

 その悶えと興奮が拙者の血ート剣客モードを更に強くする。

 腰をミツバの尻に押し付け、左手でヘソを刺激し、右手で頭を傾けて固定する。


「行くぞ……」


「はぁ……ああっ! ああああっ!」


 絶頂を迎えたミツバの悦楽の声と共に俺は噛み付き、血を吸った。

 ミツバの全てを屠るように吸った。

 

(……いい感じに俺の力が目覚めて来たぜ!)


 そして血を吸われ睡魔が襲い掛かるミツバは言う。


「んじゃ寝るから後、よろしく」


「任せておけ。このアオイ・コウケンにな」


「うん……って今回は寝ないよ。全て見届けさせてもらうわ」


「そうか。なら頼むぞミツバ」


 俺は、ミツバの桃色の髪を撫で、頬にキスをした。

 そして、真の戦いが始まる――。




「新選組最強・沖田総司。倒れてもらうぞ」


 その俺の言葉に少し遠い目をして、沖田さんは中空を見据え言う。


「私があの二人と肩を組み笑い合えるのは、自分が最強の剣士という自覚と力があるからです。故に、貴方に負ける事は無い」


 その確固たる自信に、俺はこの男の真の強さを見た。

 この男は無欲では無い。

 強烈に孤高の剣である自分の剣を極める事によって、その孤独を最強である証として他人に認めて貰いたい。

 そこが癒されれば、自分は自分である。

 天下も覇権も欲しがらず、共に笑う仲間を欲する。

 それが沖田総司――。


「ほーほー……。貴方の欲を知って、スッキリした」


「人を型に当てはめても、面白くはないでしょう? 私とて、人の子です。最強ですがね」


 言ってくれる……。

 この人は負けを知らない日本至上、数多くの死地を潜り抜けた最強剣士。

 どんな強者とて、生きるか死ぬかの斬り合いなどすぐにしなくなるが、この人は遊ぶように人を斬る。

 しかし、闇には堕ちない。

 だが、それは俺も同じ!


「……しかし、それは無い。何故ならこの異世界において、最強は俺だからだ」


 清流刀を構え、絶対の自信を持ち俺は言う。


「新選組一番隊組長・沖田総司。俺の異世界最強伝説に貢献してもらうぞ」


 そして、俺と沖田さんの刃が激突する。

 沖田さんは一振りで幾重もの刃を生み出して来た。

 何だこの技は?


「これが貴方の異世界での技か? という事は……」


「そう言う事です――」


 沖田さんの刃が光った。


空烈くうれつ百花繚乱ひゃっかりょうらん!」


 津波のような突きの群れが俺を襲う。

 これはガムシャラに剣を繰り出すしかあるまい永倉さんよ!

 そう、心でガム新こと永倉さんに言いガムシャラに攻めた!


「ガアアアアアアアアムッ!」


「それは永倉さんの十八番おはこでしょう? 困ったアオイさんですね。はあっ!」


 しかし、真空の刃を飛ばされ肩が多少切れた。

 血を抑える俺は体勢を立て直す。


「これが私の空の技。卑怯と思うなら、マネてもいいですよ?」


「そんなもの真似る必要も無い」


「ならば受けるがいいです。空神烈風くうじんれっぷう!」


空覇斬くうはざん!」


 シュパ! と互いの空の技が激突する。

 そして、刀と刀が衝突した。


「やりますねアオイさん。その技は自分で編み出したオリジナルという奴ですね?」


「元の世界ではここまでの破壊力は無いからオリジナルだ。清流鬼神流は滅びの剣。一人の師が様々な剣才のある弟子に教え枝分かれし、様々な剣士が生まれる。そしてそれは、時代の最強剣士となり存在するのだ」


「私の前で最強を語るなど未来永劫ありえない」


 瞬間、光が発した――。


「!? ぐふっ!」


 首筋、手首、心臓を同時に刺された。


「これは沖田さんの三段突きの進化版か!?」


「そう、これは天剣てんけん飛天三段ひてんさんだん。人体急所を同時にハつ攻撃し、相手を始末する。けど……アオイさんは血ート剣客だから簡単に死ねないようだ。もっと苦しみを与えて、絶望に平伏し、心を折ってから殺してあげますよ。フフフ」


「今のは手加減したのか? それに同時に八の剣……飛天三段とは間違っている名前だな」


「いえ、合ってますよ。何故なら、私は同時八斬を一度ではなく三度放てます。つまり、二十四回の攻撃をかわしてこそ、私の必殺技は破る事が出来る」


「……新選組一番隊組長・沖田総司。貴方は本当に化け物だ。流石の俺も、その技だけは真似られないな……身震いする……」


「武者震いでしょう?」


「……残念ながら怖い方さ。しかし、この恐怖が俺の力を高める糧となる」


「いいですね……血溜まりの夢に沈みなさい」


 笑う沖田さんに、俺は言い返す。


「フ……俺は血を流せば流すほど強くなる!」


 そして、二人の最強にこだわる男は激突する。

 その最中、沖田さんは言った。


「八ヶ所の急所。咽頭、脊柱、肺、肝臓、頚静脈、鎖骨下動脈、腎臓に人体の最大急所である心臓。この八ヶ所の人体急所の内、どれを刺されるのがお望みですか?」


「全てだ!」


「いい答えです! それでこそアオイさん!」


 バッ! と剣を交え、二人は距離を取る。

 そして、互いにこれが最後だと思いながら最後の技に出る構えになった。

 それを見守るミツバは息を呑む。

 俺は、ゆっくりと息を吐き出し、言った。


清流鬼神流せいりゅきじんりゅう無刀陣むとうじん


 無刀陣とは刀を捨て殺気を消し、無から有へ心と身体を切り替えるカウンター。

 いわば剣士が完全に思考と行動な一体化した最高の剣を放つ無想剣を意図的に放つ技である。

 鬼神光きじんこうは刀を持ち、意図的に心臓の動きを止めてから動かした瞬間の全身の血流の巡りを利用し、全身に行き渡る神経との合体した力で放つ技。殺気を絶ってから放つ技と、殺気そのものを利用する技とでは根本が違う。

 それにいち早く気付く沖田さんは言う。


「無刀陣と鬼神光は相容れない。刀を持った状態からの脱力と、持たずに殺意を消す脱力とでは根本が違うはず。土方さんも言っていたはずですよ」


「俺はあの人も超えるから問題無い」


 言いますねぇ……と沖田さんはフフフと口元を笑わせた。

 ……にしても、沖田さんの天剣・飛天三段。

 これをまたくらったら流石に死ぬかもしれん。

 こうなったら……やはりアレしかないか。

 まだ、未完の思い付いただけの技だが、ここでやらなければ沖田さんは越えられない!


「……」


 俺は目の前の地面に刀を突き刺した。

 そして俺は脱力し、心臓の鼓動を止める準備に入る。


「……無刀陣かと思いきや、その脱力は必殺の居合いである鬼神光を使うようですね。土方さんから教えてもらった技でしたか? ですが、それは元の世界でと私は知っている。通用しませんよ」


 口元だけ微笑む沖田さんは天然理心流の基本の型・平青眼ひらせいがんの構えに出る。

 無論、これこら発動する技は天剣・飛天三段であろう。

 これを受けたら死は免れ無い。

 故に、この一撃勝負が全てを決める。


『……』


 俺達は高まる全身全霊を、次の一撃に込めようと意識する。

 十秒……。

 そこから技の発動までは互いに十秒かかった。

 それは技の発動までの所要時間ではなく、互いの過去を振り返る十秒。

 俺が新選組に入隊し昼は監察方、夜は闇の武として働いた。

 いつも子供達と遊び、大人とは道場か屯所の広間で話をしていて、この人の周りには人が常に多数居て騒がしく、大いに慕われている。そんな無邪気な男だが、ひとたび刀を持つと鬼になる。この人の剣で死んだ者は新選組の中でもそれなりに居る。土方さんが許した者ですら、沖田さんは斬る事があった。土方さんは鬼と呼ばれていたが、正直この人こそが裏の鬼だった。沖田さんは人の本質を見極める天才でもあったから。そんな二面性を持つこの人に俺は憧れていた。

 監察と闇の武で働く俺は、そうやって自分を区別出来るこの人のようになりたいと思った事もあった。しかし、天才は天才、俺は俺。孤高の剣は他の追随を許さない。故に真似出来ず、弟子も存在しない。あの人は人が好きだが、常にその中で一番であろうとするから強い。自分が近藤さんや土方さんのように組織をまとめる人間ではなくて、孤高の天才剣士と自覚し、欲に溺れ他の事を望まぬから強い。正に剣に生き剣に死ぬ、武士の中の武士ー誠の男!

 俺は……アオイ・コウケンはその新選組最強の男を超える――!

 そして、運命の十秒が過ぎ沖田さんの技が発動した。


「天剣・飛天三段――」


 光のような同時八段突きが、咽頭、脊柱、肺、肝臓、頚静脈、鎖骨下動脈、腎臓、心臓――全ての人体急所に迫る――。

 瞬間、血が、舞った。


「!」


 カッ! と目を見開き、俺は俺の清流鬼神流を発動する。


無刀むとう鬼神光きじんこう!」


 新選組のダンダラ羽織が宙に舞った――。

 それは無論、沖田さんの身体……。

 身体の八箇所の傷さえ気にならず、俺は何かを叫ぶミツバの声さえ聞こえないまま呟いた。


「か……勝った……勝った……」


「お見事です。アオイさん」


 地面に倒れる沖田さんは弱々しく言う。

 無刀・鬼神光。

 刀を捨て、相手の刀が刺さった瞬間に発動するカウンター。

 その俺のオリジナル技が決まった。


「あの刹那……まさか、相手の攻撃を受けてから技を繰り出すとは、アオイさんは狂っていますねぇ」


 まるで子供のように沖田さんは言う。


「俺もただの鬼神光では沖田さんには勝てないと思った。だからこそ、俺の清流鬼神流を発動させないといけないと思い、刹那の技を一か八かで試した……やはり、実戦で得るものは大きい」


「その技は実戦という殺し合いの中でしか完璧に仕上げる事は出来ないでしょう」


「確かに、そうだな」


「フフフ」


「ほーほー」


『ハーハッハ!』


 互いに笑い合う。

 長く話していたいが、ここは道場ではなく戦場だ。

 故に、この人ともお別れをしないとならない。


「ではさらばだ沖田さん。俺は土方さんを倒し、魔力秘宝・クリスタルを悪用させない」


「また会えますよ。この世界には私達を勝手に転生させた人間がいる。その人間は同じ事をするはずです。そこを捕らえなさい」


「……命令ですか?」


「命令です。沖田総司としての」


 全く、この人は子供のような笑みで、無茶な事を平然と言う。


「わかった。受けよう。これは俺の問題でもあるしな。では、さらば」


「えぇ……強くなったものです。アオイ・コウケン」


 そして、沖田さんは粒子となり消えた。

 俺とミツバは目指す。

 この迷宮の奥にいる、新選組総帥・土方歳三を――。

 

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ