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異世界血ート剣客 拙者・葵光剣は異世界に貢献するでござる!  作者: 鬼京雅
二幕・異世界転生せし新選組動乱編
27/33

ザキヤマの罠 

 新選組の海底アジトをつきとめ侵入すると、ぬらりひょんの腹心の三人の妖怪幹部が現れたでござる。

 大きな石の壁である妖怪・ヌリカベは地面に転がる石を弾丸のように浮遊させている。

 そして、妖気を両手に溜める砂かけ魔女は怪しげな瞳で両手をゆらり、ゆらりと動かしているでござる。

 悠然と空中を飛ぶイッタンモメンは口笛を吹き、背後に部下の妖怪達を呼び寄せたでござるな……。


「ミツバ、おそらくぬらりひょんの残党で人間と和解したくない妖怪が百以上はいる。そのおかげで新選組隊士の居る奥のワープゲートはちと、見えぬでござるよ。最悪の場合、拙者一人で先に新選組を追う可能性があるがどうでござる?」


「それは平気よ! このミツバちゃんもパワーアップしてるかんね! もし、あのワープゲートを動かす妖気が先に溜まって新選組隊士がワープしちゃったら、別に先に行って構わないよ!」


「どうやら最悪の場合、奴等は一人でどうにか出来そうでござるな。その顔を見れば、自信のありようがわかる」


「ヘヘッ。だってミツバちゃんは天才だからね!」


 そして、気力を充実させる拙者とミツバは大柄の妖怪・デブゴブリンの群れを見た。

 すると、巨大な壁であるヌリカベは言うでござる。


「行け、デブゴブリンの群れよ! ぬらりひょん様を倒した男を血祭りに上げるのだ!」


『デブーーー!』


「拙者は痩せているでござるよ……」


 シュン! と一足飛びでデブゴブリンの群れの中に飛び込んだ拙者は、螺旋斬らせんざんにてデブゴブリンの群れを無双した。そして遠くの敵に空覇斬くうはざんの空気斬りをかまし、華厳けごん刺龍しりゅうにて突き倒し、昇り龍の如き飛翔斬ひしょうざんにて二十倒したでござる。


「残りは約八十。後はミツバに任せる。頼んだでござるよ。拙者はあの三人を始末するでござる」


「わお! 早いね。でも後八十か。よっしゃ! やったろーじゃないの!」


 ミツバに残りのデブゴブリンを任せて、拙者は横に移動してぬらりひょんの腹心の三人を無理矢理移動させる。どうやら拙者との決着はつけたいようで、すぐに乗って来たでござる。


「ぬらりひょんの腹心三人よ。あえて言うが、今更ぬらりひょんよりも弱いお主達では拙者には勝てぬ。すぐにお主達を倒して、ワープした後の新選組を追う事になるでござるよ」


 すると、空中を浮遊するイッタンモメンは言うでござる。


「ここからは出られるだろう。お前は俺達より強いからな。しかし、あのゲートをくぐった時に目にするのは絶望だ」


「そうよ。私達は貴方よりも弱い。けども、それなりの時間稼ぎは出来るの」


 と言う、砂かけ魔女の台詞にやれやれ……と溜息をついて拙者も答えるでござる。


「復讐をしているかと思いきや時間稼ぎとは。つまらぬ三馬鹿でござるな」


『何!?』


「絶望はせぬよ。お主達など三分でケリをつける」


『やってみるがいい……』


 三人の妖怪は、一気に妖気を高めたでござる。

 ズズズ……と巨大な壁であるヌリカベは浮遊させる石を見つめ言う。


「弾丸発射!」


 シュパパッ! と雨のような弾丸がヌリカベの身体から弾き出された。


清流鬼神流せいりゅうきじんりゅう鋼鉄岩壁こうてつがんぺき!」


 地面の石で同じような弾丸を生み出し全てを弾いた――が、足元に砂かけ魔女が居たでござる。


「!? 今のは罠か」


 砂かけ魔女は犬のように、素早く動き言う。


「その身体を石化させてあーげるわ!」


 まるで犬が自分の糞を砂で隠すような仕草で砂かけ魔女は妖気で生み出した砂をかけて来る。


空覇斬くうはざん!」


 空気の刃で全て吹き飛ばしたでござる。

 そして、一撃をかまして迫ってきていたイッタンモメンに激突させた。

 それを見て思う。


「ん?」


 イッタンモメンの背中に何か書かれているでござる。

 背中に萌えな感じの絵が描かれているのに気付いていないらしく、拙者は言った。


「その背中にあるのは落書きでござるか?」


「背中にある絵と言えば入れ墨に決まっとるだろ! ボケ! 縛りこらしてやるぞ!」


『こらして?』


「こ、殺してだボケ!つか、お前達まで言うな!」


 と、この場の全員がツッコミを受けたイッタンモメンは言う。

 ほーほー……と思っていると、デブゴブリンを倒したミツバが現れたでござる。

 これにてワープゲート前での攻防は最終局面に入る。


「ミツバちゃんの魔法で、一気にカタをつけてやるわ!」


「ぬ? ならば任せるでござる」


 桃色のミツバの髪に、白い聖なる粒子が舞い、魔力が高まる。

 聖なる光で妖気を減退させ、そこに激しい嵐を叩き込む。

 それが光と嵐の合体魔法――。


「シャイニング・トルネード!」


 シュパアァ! という光の嵐に呑み込まれ、その三匹の妖怪は消えたでござる。

 拙者の相棒に倒されてしまった哀れな三人を思いながら、その消えゆく光を見つめる拙者は言う。

 

「復讐に他人の力を借りるな」


 そして、拙者達はワープ寸前の新選組の元へと辿り着いた。

 すでにワープする妖気は溜まっているらしく、これから隊士達は転移を始めるようでござる。

 気付く沖田殿は笑いながら歩いて来る。


「もう私達はスザク王国へワープします。邪魔をするならここで殺しますよアオイさん」


「アオイか。俺達は先に行く。スザク王国を潰しにな」


 そう言った永倉殿は刀に手をかける。

 それに応じるように拙者も清流刀に手をかけた――瞬間、


「きゃあああああ! アオイーーー!」


「!? ミツバ!?」


 突如現れた黒い影にミツバ人質に取られたでござる!

 そしてどこからか投げられた苦無を回避した。


「相手の死角から放つ苦無……ザキヤマでござるな。恐らくミツバを人質にしたのも奴」


 刀の鯉口を切り、海底洞窟の奥のワープゲート前の天井に黒い糸でぶら下がるミツバを見る。

 怪我はしてないようだが、これは拙者の失態……。

 ザキヤマめ、人の嫌な所をつくでござるな。

 フフフ……と沖田殿は微笑み、永倉殿は言う。


「アオイ。戦場に女など連れて来るからこうなる」


「女でござるが、拙者の相棒。背中を任せる事が出来るからこそこの場にいる」


「人質に取られてよく言うぜ」


「ミツバは人質に取った方が困るおてんば娘でござるよ」


「けったいな事だぜ」


 永倉殿は笑う。

 すると、拙者の感覚に氷のような冷たい殺気であるのに、熱い修羅のような熱気を持ち合わせた感覚が走った――これは! この超絶に不快な感覚は……!


「フン、いい面構えだなアオイ。今すぐに殺してやりたいぐらいだ」


 長い黒髪をこの世界で言うポニーテールにし、浅葱色あさぎいろではなく近藤局長が着ていた白と黒のダンダラ羽織を着た土方歳三殿が現れたでござる。これで役者は揃ったでござるな。形勢は不利であるが、ここで倒せばスザク王国に被害は無いでござるよ。


「土方殿。ミツバを人質にしたのは貴方の作戦でござるか?」


「そうだ。新選組時代に言ったはずだ。常に相手の裏を、弱点を徹底的につけ。さすればいかな強敵とて倒せる。監察方最強の山崎のお手並みは貴様が一番見て知ってるはずだがな」


「……確かに。そういえば、拙者が監察に入った理由も……」


「そうだ。お前のような者こそ新選組隊士を観察する監察を、更に裏から観察する裏監察・闇の武にふさわしい。山崎とかだと、生真面目で陰気な所があり本音をぶちまける隊士は少ないだろうからな。無邪気な子供なら言いやすいだろう。そこがお前の仕事になる。そんな話だったはずだ」


「そうでござるな。そんな人を欺くような事を……」


「それが、新選組だ」


(確かに……。闇の武だけではない、それが新選組そのもの)


 鋭い瞳を光らせる土方殿は指を鳴らし、ワープゲートを開放する。

 ズズズ……と膨大な妖気がこもるゲートが開放され、その光に圧倒されるでござる。

 すると、すぐにそのゲートに侵入した者がいた。


「ではお先に。私が一番にカツラ国王の首をはねて、魔力秘宝クリスタルを手に入れます。そしたら私が総帥ですかね土方さん?」


「総司の野郎……」


 土方殿が舌打ちすると、沖田殿はゲートの中に消えた。

 誰よりも早くワープし、カツラ国王の首をはねる……だが、今の魔法騎士団ならばこの前のように簡単に突破はされぬでござろう。すると続々と新選組隊士達もワープゲートに入って行く。拙者はまず、天井にぶら下がるミツバを助けなければならぬので動けない。それを見る土方殿は言う。


「スザク王国は陥落させ、俺達はクリスタルの魔力で完全転生する。百鬼夜行の始まりだ」


 そして、新選組隊士達は土方殿と共にスザク王国へワープしたでござる。




 気持ちを切り替える拙者は人質にされ、海底洞窟の天井にぶら下がるミツバを見上げる。

 この状況は簡単に動けない。

 ザキヤマがまだ何かを企んでいるかも知れぬでござるからな。

 すると、黒い忍装束の男がぬっ……と現れたでござる。


「哀れ哀れ。迂闊に敵陣に浸入するからだアオイ。お前達が後から来るなら罠を仕掛けるのは至極当然。獅子身中の虫とはお前の事だな、アオイ」


「このタイミングで姿を現わすとはザキヤマ……お主は本当に性格が悪いな」


「そうではければ新選組の監察などはつとまらん。味方に最高、敵に最悪の状態や状況を作る情報を扱う事こそ俺の仕事よ。お前には出来ぬ俺の仕事」


「監察としてはお主には勝てなかったが、新選組隊士としては負けてはいなかった。鳥羽伏見とばふしみの戦い以降の拙者の活躍を見て欲しかったでござる」


「そんな過去は知らん。今ある現状が全て。この現状において、新選組は妖怪の力を使い百鬼夜行を行う。そしてスザク王国は新選組の新しい屯所となるのだ。哀れ、哀れ。アオイも死ぬのだ」


「拙者は死なぬ。転生したこの命で、この世界に貢献すると決めているでござるからな」


 その拙者をザキヤマはククク……と笑い、ミツバはぶら下がりながら苦しんでいるでござる。

 この男は、やはり好かぬ。


「聞いたぞ。人を快楽で斬っていたせいで、血ート剣客モードでは髪まで赤くなったか。やはり、お前は殺人趣向者だな。哀れ哀れ」


「確かに血ート剣客モードになれば髪は青から赤になる。それを殺人のせいにするには考えが安易でござるなザキヤマ」


「そう怒るなアオイ。大義無き人斬りの末路が英雄とは哀れ哀れ。すぐに新選組に倒され、忘れ去られる英雄となるのだからな」


「少し黙るでござる」


 拙者は刀を抜き、一気に仕掛けようとするが、ザキヤマの投げた苦無に足止めをくらう。

 そして、その一本の少し先にもう一本の苦無があり、その先にもまたあった。


「……?」


 拙者囲むように地面に刺さる八本の苦無を見て思った。


「この苦無の陣は……ザキヤマの得意とする八卦捕縛陣はっけほばくじん!?」


 八卦捕縛陣とは、新選組時代にザキヤマが敵や脱走した味方などを捕まえる為に使う陣でござる。普通なら下に布などがあり、それで無理矢理全方位から包み込むように相手を捕獲する技でござった。しかし、これはそれとは違うようだ――。


「……その顔、気付いているようだなアオイ。この八卦捕縛陣は元の世界とは違う。この世界の力で更に強力になった八卦捕縛陣だ」


「くっ……これは!?」


 ズバババババッ! と電撃が走り、身体の自由が一瞬奪われる。

 そして、天井でぶら下がるミツバは気を失っていたでござる。

 それを笑うザキヤマは、


「そして、お前はまた女を失うのだ。過去は繰り返す」


「黙れ……!」


「眠り薬だ。これにてこの女は動かぬ人形」


 どうやら眠り薬でミツバを眠らして、どこかに連れ去るようだ。

 電撃から脱した拙者は刀を鞘に納め言う。


「馬鹿めザキヤマ。ミツバを攫うという事は、地獄を見るのと同じ事でござる」


「強がりを言うな。これにてゴメン」


 眠るミツバと共にどこかに去ろうとするザキヤマを無視し、拙者は耳栓をした。

 すると、凄まじいイビキが聞こえたでござる!

 同時にザキヤマは平衡感覚を失い倒れる。


「な、なんと言うイビキか! アオイ……貴様女の趣味が変わったか!? この女……只者ではない……」


「ミツバは寝てれば無敵でだから大丈夫なのでござるよ。迂闊なりザキヤマ」


「確かにこれは失態。次はこうはいかんぞ寝小便のアオイ」


「な! そんな過去の事を!」


 ザキヤマ観念しどこかに消えたが、嫌な捨て台詞を吐いたでござるな。

 昔の寝小便の事など誰にでもあるでござるよ。

 十五まで寝小便をしてても、今はもうしない……でござるからな!

 本当にあの男は好かぬでござる!

 ほーほー!

 そして拙者はミツバ助け出し、ワープゲートからスザク王国へ向かう。

 特に怪我もなく目覚めたミツバに言う。


「行くでござるよミツバ!」


「オッケー! やってやろーじゃないの!」


 シュパアアアッ! と拙者とミツバはワープゲートにて、スザク王国へと転移したでござる。

 そこでは、新選組の百鬼夜行が始まっていた――。





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