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異世界血ート剣客 拙者・葵光剣は異世界に貢献するでござる!  作者: 鬼京雅
二幕・異世界転生せし新選組動乱編
15/33

百鬼夜行・新選組の出現

 タカスギとの戦いから一月あまりが経ち、スザク王国は平穏を保っているでござる。

 拙者とミツバは魔法研究所近くの農園にて野菜の成長を促すように、土をいじり虫などにちょっかい出されないように周囲を綺麗にしていた。野菜畑に植えた種の一部はニョキニョキと芽を出してきたものもある。フォー! と叫びミツバはだんだん遊び出す。


「ミツバ。遊ぶのはお昼になってからするでござるよ」


「もうこんな地味な事をしててもしょうがないよ。ミツバちゃんはメッチャ良い事を思いついたのでござる!」


「拙者の口癖を真似るなでござるよ。で、そのメッチャ良い事とは何でござる?」


 ニシシ! と笑うミツバは言う。


「私の魔法でチョイチョイ! と成長促進させてみる?」


「な! そんな邪道な事が出来るでござるか!」


 まさか! そんな魔法があるとは!

 人間には通用しないらしいが、植物などには通用するらしく、ミツバその魔法・ノビノビグーンにて農園の野菜を急成長させる案を提案してくる。メッチャ拙者の顔に近付きながら。


「どうなのアオイ? そんな邪道な事は出来ぬでござる! みたいな悩み顔をしてないで答えてよ。皆、早く野菜食べたいと思ってるよ〜どうなの、どうなの?」


「うっ……それは……」


 甘いミツバの吐息が拙者の頬にかかり、ドキドキしつつ考える。

 次第にミツバは拙者の身体をツツキ出した。

 や、やめるでござる……。


「早く野菜食べたくないの〜? 貢献したくないの〜。アオイは他人に貢献したいんでしょ〜?」


 ツンツン! と拙者は脇をつつかれ、観念した。

 脇をツツくのは卑怯でござるよ!


「で、では頼むでござる。やはり、早くこの国にも野菜の美味しさを広めたいでござるからな。そう、それには邪道も糞も無いでござる!」


 そしてミツバは成長促進魔法・ノビノビグーンを使う。


「ノビノビビーノ! ノビノビビーノ! あそこもドコも? ノビノビ……グーン!」


 シュパアァァァ! という輝きと共に、農園の野菜はグググ……と、成長するでござる!

 これは凄い!

 大根もキャベツも人参も白菜、レタス、トマトなどの野菜が一斉に急成長したでござる。

 これで、魔法王国の人間達にも配れる量が生産出来そうでござるな。いや、これは商売になるかも知れぬ。初めはこの野菜の新鮮な味をタダで味わってもらい、もし良かったらお金を貰うでござる。

 農園の前にお金箱を設置し、魔法王国の人間が自由に必要な分を畑から野菜を持ち出し、好きな額を払う。ふと、そんなシステムが出来ればいいな……と考えたでござるよ。


(……ん? これは!)


 野菜畑に合傘に丸印の新選組の合印の印籠いんろうがあるでござる。


(これは新選組の合印……もう、拙者を付け狙っているのは確か。ん?)


 拙者はその裏に書かれている文字を見た。

 そこにはこう書いてある。


<今晩、貴様の転生先の岩場にて待つ>


 どこの誰かは知らぬが、強制的なメッセージでござるな。

 応じてやるでござる。

 拙者を転生させた人物からの招待状かも知れぬからな……。

 拙者はその合印をミツバに見せず懐にしまい、そろそろお昼ご飯にする事にした。


「さて、お昼にしよう。今日は何でござるか?」


 すると、ミツバは布で覆われたテーブルの布をバッ! と外した。


「ジャジャーン! 今日はミツバちゃん特製大根トマトシチューだよ! お好みでチーズもかけちゃうといいよ。とろーりとろけたチーズをね!」


 トマトと大根がグツグツと鍋の中で踊るマグマのような血の色のシチューだった。

 大根の中にトマトのエキスが染み込み、かなり旨いでござる。それに、この熱してとろーりとろけたチーズをかけると、この世界のピザという食べ物の味がしてこれまた旨いでござる。いやはや、ミツバの料理は素晴らしい。けども、赤い色の食べ物中心ばかりだと、流石にどうかと思うでござるな……。

 そして夜になり、拙者は魔法研究をする為に研究所にこもるミツバと別れ、自室に戻る。

 拙者は一人、ぬらりひょんと戦った転生先である岩場に行く。

 鋭利な刀のような三日月に、怪しい雲がかかり出していたでござる。





 白い月が夜空に映える真夜中――。

 拙者はタカスギとの戦いに向かう時に迷路結界により、森の中で見つけた新選組の合傘に丸印の印籠いんろうに導かれ、ぬらりひょんと戦った岩場へ赴いた。

 これは拙者との個人的な因縁の可能性がある為にミツバは連れて来てはいない。もしかすると、呼び出した相手は拙者をこの世界に転生させた人物かもしれないからでもある。


「すでにこの場所も懐かしいな……拙者がこの世界に来てから一月が過ぎた。早いものでござる」


 夜風を感じ、拙者が転生してミツバと出会い、ぬらりひょんを倒したこの運命とも呼べる岩場を感じる。

 この場所でこのバクーフ大陸の人と妖怪の人妖戦争が終わり、長きに渡る戦乱の世は終結した。そして、拙者は血ート剣客としてこの世界で起こる戦乱や混乱を解決し、貢献するよう努めている……。


「さて、感慨にふけっている場合ではないでござるな。――!?」


 すると、足音を立てない無音歩行術で移動する集団が拙者の左右を駆けた。

 しかし、拙者はそれに反応出来ない。

 何故なら、その人物達の服装は――。


浅葱色あさぎいろにダンダラ模様の羽織――まさか、新選組!」


 拙者は、周囲を囲まれた。

 かつて、仲間であった新選組隊士に。

 ……ある程度は覚悟して来てはいたが、実際に会って見ると動けぬものでござるな。

 まだまだ拙者も未熟という事か。

 周囲を見渡すと、見知った顔もいるでござる。

 その集団は全員刀に手をかけ、拙者を牽制している。

 よく統率された動きだ。

 これはどの組長が指揮してるでござるかな?


「ほーほー。この囲み方は正しく新選組隊士の動き。その方等は本物の……」


「口を謹め。今より我等が総大将が貴様にお見受けする」


 と、一人の隊士が言う。

 艶やかな総髪に阿修羅のように鋭い眼光。

 服越しでも筋肉の動きが伝わるような獣のような男。

 あれ……は永倉ながくら殿?

 間違い無い!

 新選組二番隊組長の永倉新八ながくらしんぱち殿でござる!

 神道無念流しんとうむねんりゅうの使い手で常にガムシャラに剣を撃ち込んで行く様からガム新と呼ばれた剣豪……。この隊士達は永倉殿の二番隊?


「フフフ、中々悪く無いですねこの世界は。私の身体も調子が良い。ねぇ、葵さん?」


「お、沖田殿!?」


 そこには、新選組一番隊組長の沖田総司おきたそうじ殿がいた。

 子供と大人が入り混じったつぶらな瞳。まるで赤児とも仏にも見える屈託の無い笑み。そして、刀を抜けば悪鬼羅刹なども一瞬にして斬り伏せる天に選ばれし天剣の持ち主。これこそが、新選組最強と呼ばれた沖田総司殿でござる――。

 唖然とする拙者を嘲笑うかのように、その沖田殿は言う。


「永倉さんの言った事を忘れましたか? 総大将は我々では無いですよ。感が鈍りましたか葵さん?」


 フフフ……と口元を笑わせ、沖田殿は崖の上を見た。

 真っ白な月を背後にし、一人の長身の男が現れる。


「相変わらずジジイのような口癖が抜けないな、葵」


 スッ……と崖の上から氷柱を落としたような冷徹な声が聞こえた。

 女のような白い肌に、色香のある唇。

 眉目秀麗、容姿端麗。

 全うな男ですら男色に目覚めさせてしまうような美しさを持ちながら、悪鬼のように身内だろうが悪とみなせば死を与える断罪者――。

 それは拙者の命を助け、新選組隊士として成長させてくれた命の恩人……。


土方歳三ひじかたとしぞう……」


 新選組副長・土方歳三殿が現れたでござる……。

 真っ白な満月を背に、土方歳三を総帥とする新選組の一団は現れた。浅葱色にダンダラ模様の羽織。久しぶりに見る一団の姿は、全ての人間が揃っているわけでは無いが、皆命懸けの毎日を過ごしていた猛者揃いの為に戦いになれば拙者も手加減などは出来ず、相手を一人一人殺すしか生き残る方法は無い。

 土方殿の目の見える範囲で億すれば、敵に斬られずとも身内に斬られるのは隊士の誰もが常識として理解している。


「土方殿……お久しぶりでござるな。合傘に丸印は貴方が多摩の薬売りだった時代の石田散薬いしださんやくの頭文字の石を表したもの。いつ、貴方方はこの異世界バクーフに転生したでござる?」


「つい、最近だ。俺達はお前のように完全な肉体を持って転生したわけではない。どちらかと言えば霊体として転生している。多少、この異世界の特殊能力は身に付けてはいるがな」


 しん……と静まり返る隊士一同を警戒しつつ、拙者は崖の上から見下ろす熱き氷の男に言う。


「何故、拙者をここに呼び寄せた? この異世界バクーフで新選組は何をするつもりでござる?」


 こればかりは聞いておかねばならない。

 新選組がかつて、京都・大阪の治安維持に当たっていた経験を生かし、この地域の治安維持をするならば分かる。しかし、その強大な力をこの国を支配するという事に使うならば拙者は許す事は出来ない。


「……当然、この得意な世界に転生したからには好きな事をさせてもらう。それにはこの霊体である身体から生身になり、この国を支配せねばならない」


「支配……か。治安維持活動をせず、この国を乗っ取るつもりでござるな?」


「将軍も大名も、会津藩あいずはん薩摩藩さつまはん長州藩ちょうしゅうはんも無い。ここはそんな自由は場所だ。そんな場所で何故、治安維持活動などをしなければならない? すでにこの新選組はかつての新選組とは違うんだよ。お前は、相変わらずのお人好しのようだがな」


「拙者は……お人好しではない! 貢献したいだけでござる!」


「変わらぬ奴め」


 土方殿の口元が笑い、拙者は怒りが増した。

 何故、新選組がこの世界を支配する必要がある?

 かつての土方殿は敵とみなせば容赦なく殺す男だったが、この異世界に来てからそんなにもこの世界を憎むような出来事があったでござろうか?


「土方殿! 貴方がこの世界を憎む理由は何でござる!?」


「理由? 理由などは無い。俺はもう狭い世界で争いたくは無いんだ。戦国の武者のように新しい領土を支配し、天下統一をしてみたくなっただけよ」


「天下統一……確かに貴方らしいな。拙者はそれに貢献出来ぬが」


「別にそれでいい。葵……いや、アオイよ。貴様は聞いた話によると、女の血を使って血ートという最強モードになれるらしいな」


「誰から聞いたでござる?」


「お前と同じ部署にいた奴さ」


山崎丞やまざきすすむ……ザキヤマでござるか」


 新選組・諸士調役兼監察しょしとりしらべやくけんかんさつ方、山崎丞。

 拙者がライバル視していた観察のエリート忍者でござる、

 医療行為にも通じていて、幹部だけではなく隊士からの信頼も厚い皮肉めいた事を言う男だった。

 拙者は皮肉を言われまくったのでザキヤマと呼んでいたでござる。

 そして、忍装束のザキヤマの姿は一瞬だけ現れて消えた。


「……」


 相変わらずの忍装束でござるな。

 おそらく、拙者の事を異世界チ○コ剣客とか言ってるでござる。

 奴は他人をからかうのが好きな根暗の皮肉屋。

 ザキヤマめ……!

 堂々と下ネタを言うなど許さないでござるよ!

 え? ザキヤマはそんな事は言ってない?

 拙者は観察時代に散々色々言われたので奴の言う事は予測がつくでござると断言する!

 たまに人に甘えるから猫のようで可愛げがあると誰かが言っていたが、ザキヤマはこの世界で言うツンデレではないでござるよ。ただのツンツン! でござる。……いや、今はザキヤマどころではない。

 悪鬼のような土方殿は殺気を消さずに言う。


「貴様は女がいるようだな。その女からの血で血ート剣客になれる」


「ミツバは関係ない。手を出すなら拙者だけにしてもらおうか」


「その娘の血が必要ならば、もう他人ではないだろう?」


「ミツバは相棒。拙者の大事な相棒でござる。拙者は新選組の天下統一に手を貸す事は出来ぬ。故にここで倒れていただく」


「天下統一の前に百鬼夜行だ。百鬼夜行を行い、スザク王国を支配し俺達は霊体から肉体のある身体に進化するのだ。満月の夜に、この国は滅ぶ」


 そして、土方殿は真っ白な月が浮かぶ天に手を掲げ言う。

 新選組隊士全員はそれを英雄のつるぎのように見つめた。


「百鬼夜行の始まりだ」


 瞬間、新選組隊士が粒子のようになり消えて行く……。

 沖田殿も永倉殿も、土方副長までもが粒子になるでござる!


「ま、待つでござる! 勝負はここでつけるでござるよ!」


 拙者の叫びも虚しく、一陣の風が吹き抜けた。

 そして、新選組は霊体となりこの岩場から消えたでござる。



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