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異世界血ート剣客 拙者・葵光剣は異世界に貢献するでござる!  作者: 鬼京雅
一幕・人妖戦争の闇 タカスギ・シンクウ一派との戦い編
14/33

農作業を急襲するカツラ国王

 太陽のまぶしい昼前―。

 拙者は今、魔法研究所裏の畑で畑を耕していたでござる。

 今は大根、キャベツ、白菜、ニンジン、レタスなどの種を蒔き育てている。

 愛情をかけて育てている効果を発揮したのか、すでに芽が出ているのもあるでござるよ。

 ほーほー。

 スザク王国に野菜の文化が起こったのは拙者がキッカケかも知れぬが、元は妖怪の里に様々な野菜が植えられており、その種を頂戴して拙者が野菜の美味しさを広める為に畑を耕しているでござる。畑を耕すという作業は足腰が鍛えられ、魔法騎士団の連中も剣を振るだけではなく農作業により様々な経験を得られるでござるよ。室内で魔法や剣術をしているだけでは、良き人間は生まれぬでござる。

 人妖戦争が終わった今、妖怪と仲が良くなった拙者は妖怪達から野菜を分け与えてもらいタカスギの部下であるロコがスザク王国の軍の一部を使い運んで来てくれたでござる。まだ、拙者の畑の野菜が育つまでには時間がかかるでござるからな。軍の人間は倉庫に野菜を運んでくれるでござる。そして拙者はその先頭にいるロコに言う。


「これはかたじけないでござる。ロコ」


「こんなん楽勝ロコ! それにしても人間は野菜を食べないロコね。肉ばかりでは太るばかりロコ」


「確かにそうでござるな。肉は栄養価は高いが、そればかりでは駄目でござる。肉と野菜をバランス良く取り健康を保つ。これは人間と妖怪が良好な関係を保ち互いに平和である事と同じでござるよ」


「上手い事言うロコねアオイ」


 ほーほーと拙者は照れる。

 そのロコは腕まくりをし、えいえいおー! と手を上げたでござる。


「ロコも農作業するロコ! 農作業は足腰にも効果てきめんで、軍の訓練にもなるかんね!」


『はっ!』


 と、ロコの部下達は返事をする。

 しかし、ここは拙者の畑でござる。

 そして、軍には軍の畑を作る為に土地が与えられたと拙者はタカスギから聞いたでござるよと、張り切るロコに伝えると、


「んじゃ、軍は軍でタカスギ様が指定した土地を耕すロコ! みんな頑張るロコ!』


『はっ!』


 と軍の人間は返事をし、魔法研究所の畑から去って行ったでござる。

 新鮮な野菜を届けてくれて感謝する。

 これは後で確かめるとして、今は農作業と行こうか。

 拙者がクワを持つと、どこからか奇声が聞こえたでござる。


「フォー!」


「ミツバ?」


 そこには、桃色の髪をポニーテールで纏め麦わら帽子で隠し、桃色のツナギを着たミツバがいるでござる。


「私も農作業するよアオイ!」


「ほーほー。ありがとうでござるよミツバ」


「フォーフォー。感謝せいアオイ」


「ぬ? それはどっかで聞いたような……ほーほー」


「フォー!」


 ふと、拙者はニヤニヤ笑うミツバに多少イラつきつつ、


「それは拙者の口癖のほーほーのマネでござるか?」


「名付けてコウケン殺し。フォー!」


 と、両手を広げ堂々と言うでござる。

 全く、厄介な娘でござるな。


「……やめるでござる。ミツバもシジイみたいな口癖と言われるでござるよ?」


「え? マジで! ジジイとか言われたらミツバちゃんショック死しちゃうよ! ならやーめっぴ! ピリリ!」


 そして拙者はミツバと共に農地を耕す事になったでござる。




 二人で黙々と農作業をしつつ、ミツバは話す。


「ねぇ、知ってる? 野菜から生まれる妖怪もいるんだよ? 妖怪図鑑によると、野菜を無下に扱っていると突如として現れる伝説級の妖怪らしいんだよね。ま、私達は大丈夫でしょうけど」


「野菜妖怪でござるか……それはそれで会ってみたい気もするが、拙者は会う事は無いであろう。スザク王国の人間が野菜を粗末にしなければ、出会う事は無いでござるよ」


「確かにそうだよね。さっき魔法騎士団が運んで来た野菜はどうすんの? あれだけあってもすぐに全部食べられないよ?」


 ほーほー。

 ミツバ、それは考えが甘いでござる。

 野菜というものはただ焼く、煮る以外にも食材を活かす方法はあるでござる。

 それを教えてやるでござるよ!


「拙者の時代には糠床ぬかどこというものがあったでござる。これは御飯を更に美味しくし、食欲をかきたてる魔法のアイテムでござるよ」


「糠床? 何か変な名前だね?」


 ? という顔のミツバに拙者は説明する。

 キュウリ、ナス、レタスに白菜……。

 色々と糠床には出来るでござる。

 野菜は何にでも応用が利き、主食にも副菜にもなるコストのかからない神の食べ物でござるよ!


「……へぇ。色々と糠床には種類があるんだね。妖怪達も糠床を知ってれば、塩だけの味付けキュウリとかだけじゃなかったのにね」


 ポリッ! とミツバはぬらりひょんの住処にあった隠し財産らしい糠床キュウリを食べる。

 どうやら気に入ってくれたようでござる。

 そして、拙者はお昼のメニューを伝えた。


「今日は味噌汁でござる。ミソを使ったスープでござるな」


「ミソスープ? それはそれで美味しそうね。早く飲みたいよぅ!」


「まずはお湯を沸かすでござるよ」


「ほれ! さ、早くミソスープ! フォー!」


「相変わらず火炎魔法の素早さはピカイチでござるな……」


 拙者は多少、ミツバの食欲に呆れながらも、こうまでも別世界の食べ物に興味を持ってくれるのを嬉しく思った。ミツバ……本当にこの娘は空の太陽のようにまぶしいでござる。


「ぬ?」


 ふと、拙者とミツバの間に、金髪ドレス姿の美女が現れたでござるよ。

 この美女は、拙者の苦手とするこのスザク王国の女装国王――。


「うぴょーん! カツラちゃんの登場だよーん!」


 金髪の美女が現れるでござるが、それは間違いでこの人物はスザク王国の国王である男性のカツラ国王でござる。誰もが知る、オネエ国王でござるな。女王が病死した後にオネエに目覚め、ミツバが生み出した工事魔法とやらで女性に性転換した人物でござるよ。

 ちなみに、拙者の事が好きらしい……。

 ほーほー。

 そのカツラ国王は無駄に元気でとんでもない事を口走る。


「うぴょーん! 味噌汁シルシル我慢汁! アオイの味噌汁我慢じ……!」


『コラ!』


 と拙者とミツバ同時にツッこむでござる。

 あまり変な事を言うのはよくないでござるよ?

 ここでカツラ国王を帰すと後で面倒そうなので、拙者がどうにかするでござるよ。


「カツラ国王が来たのは丁度いい。お湯を沸かしてもらおうか」


 とりあえず、カツラ国王は暴走する可能性があるので、お湯を沸かしてもらうでござる。

 お湯が沸くのを見ていればとりあえず安心だろう。

 そして、拙者はミツバと共に、キャベツをザク切りにしてボールに入れる。

 それを水洗いし、ザルに入れて水を切る。


「出汁というものも、味噌汁には大事でござる。では、カツラちゃん。出汁を頼むでござる」


「はーい」


「そして、キャベツを入れて味噌を入れる。味噌は少しづつ溶かして、丁度良い味になるまで調整するでござる。これは拙者に任せてもらおう」


 拙者はこの国の人間が多少濃い味が好きなようなので、多少濃い目に味噌を入れて味を確認する。

 ミツバもカツラ国王も真剣でござるな。

 良い事でござるよ。


「後はもう少し待つだけでござる。この間に、ごはんを茶碗によそろう」


『はーい!』


 ミツバ、カツラ国王は手を上げ返事をした。

 そして、ごはんと味噌汁が揃い、ぬらりひょんの住処にあった糠床からタクワンを小皿に分け、久しぶり? に日本の食事を取れるでござるよ。


「では、いただきます」


『いただきます!』


 皆がまず、味噌汁に手を出した。

 チラッ……と拙者は二人の顔を確認する。

 ミツバの桃色の瞳が輝き、


「美味しい……肉が無くて何か物足りないと思ったけど、味噌汁も漬け物も凄くごはんが進むね! 凄いよアオイ! フォー!」


「うんうん! 凄いよコウケン! チューしよ、チュー!」


「くぉらカツラちゃん国王……チューはしないでござる」


 カツラ国王の暴走を止めつつ、二人が日本食を好んでくれて嬉しかったでござる。

 どうやら、日本食はこの国に受け入れられそうでござるな。

 そして、小さなお昼の晩餐会は幕を閉じた。

 別れ際に、拙者はカツラちゃんに言う。


「カツラちゃん。ついでに、ミツバも魔法研究は拙者との冒険の日々で新しいのが完成するまでじっくり待つでござる。糠床と一緒で魔法も時間が必要でござるよ」


「確かに工事魔法も時間がかかったわね……わかったわ。アオイがそう言うならミツバのより良い魔法研究の為に、期間などは設けずに魔法研究費も出す!」


「それでこそカツラ国王でござる」


「もうっ! カツラちゃんでしょ!」


「そうでござるな。カツラちゃん」


「アオイ……」


 目がハートマークになるカツラ国王の頭を撫で撫でする。

 カツラ国王の思いには答えられぬが、国王とも上手く付き合わねばならぬ。

 新選組の中では拙者は任務をこなす駒であったが、今は異世界バクーフの英雄として他人と他人との仲も取り持たなくてはいけない。

 これは結構神経を使うでござる。

 幕府相手に近藤局長も土方副長も、こんな面倒な事をしていたとなると、本当に尊敬するでござるよ。

 何はともあれ、これでミツバも拙者と冒険が出来るでござる。

 楽しみが日々が待っているといいでござるな。

 そして、拙者とミツバは魔法研究所の倉庫にある糠床へ向かい新しい野菜を仕込んだでござる。

 にしても、最近のカツラ国王はスキンシップが多い。

 これはカツラ国王に警戒する必要があるでござるな。

 ほーほー。





 その深夜――。

 三日月がバクーフ大陸全土を照らすその夜に魔法研究所にて事件が起こったでござる。

 夜寝る前に完成した、ミツバ作の拙者のダミー人形であるアオイ君を作り、畑にカラス対策としてカカシとして置くと言い、着物と青い髪のカツラを作っていた。それは今、ミツバが着てしまって寝ているでござる。

 ほーほー。

 そして寝静まる魔法研究所の自室で眠る赤褌姿の拙者はすやすやと眠っているでござる。


「……」


 しかし、ふと拙者は目を覚ます。

 それは、この魔法研究所の裏口の鍵が開いたからでござる。


(人の気配……これは拙者を狙ってか、ミツバを狙ってか……それは分からぬが、やるしかあるまい)


 拙者は素早く着物に着替え気配を消しつつ、前進した。

 魔法研究所内部は暗闇でほぼ前は見えないが、新選組時代に培った夜の戦闘での夜目があるでござるよ。

 無音歩行術にて、拙者は自室を出て廊下を歩き、賊の気配を辿る。


(賊は近い……。一階から散策しているのか?)


 この魔法研究所は特に結界なども無く、鍵さえあれば誰でも自由に出入り出来る。今、鍵を持ってるのは拙者とミツバのみ。という事はこれは完全に賊でござる。窓を破壊された場合はどうあってもわかるでござるが、まさか魔法で精製された特殊な鍵のコピーを作り進入してくるとは……。


(賊は一階か……一階はミツバが寝てる可能性があるでござる。基本的にミツバは自室で寝るよりも、一階の広間などで寝ている事が多いでござるからな)


 そして、一階に降り壁の裏に隠れ賊の姿を確認する。

 その賊は口を開けて寝ているミツバにそろり、そろりと近づいていくでござる。

 寝てるミツバからはピンクの髪ではなく青い拙者のカカシ用のカツラの髪が、見えているでござるな。

 いや、それよりも賊がミツバを襲おうとした瞬間にしとめる。

 そこが賊の隙が生まれる最大のチャンスでござるからな。


(……動け賊よ。その瞬間お主は倒れる。ぬ?)


 ふと、拙者は賊を退治するのを止めた。

 おそらく、ミツバが賊を退治してくれるであろう。

 ここで拙者は傍観者になるでござるよ。

 スッ……と賊の手が、ミツバの柔らかな胸に伸びる――。

 すると、その賊は踊らきの声を上げる。


「あれ? アオイにおっぱいがある?」


 と、その金髪ドレスの賊は呟いた。

 同時にカッ! とミツバは目を見開いた――。


「寝起きは機嫌悪いんじゃ!」


 ガスッ! というパンチでカツラ国王は窓ガラスを突き破り、遥か彼方へ飛んで行った。

 キラーン! と星になり、魔法研究所に平穏が戻るでござる。


「拙者に夜這いをかけにきたカツラ国王を倒したミツバは、もう寝ているでござるな……。どうやら、この気配で目覚めたわけでは無いらしい……」


 そういえば、ここはカツラ国王の別荘でもあった場所だから、鍵があるでござるな。

 この国王がいるからこの国は問題が起こるのでは? と拙者は思ったり思わなかったりしたでござる。

 一番星になるカツラ国王の煌めきを見て、ミツバの鼻に洗濯バサミをして拙者はまた眠りについた。

 ほーほー。




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