人妖戦争・裏幕の決着
血のような赤い髪が青く変化し、俺の……いや、拙者の血ート剣客モードが解除される。
ミツバは拙者のそばに駆け寄り、微笑んだ。
「アオイ。お疲れ様」
「あぁ、ありがとうミツバ」
「信じてたからね。アオイは絶対勝つって!」
(血を吸われ消耗が激しいだろうに、拙者の心配をまずするか。やはりミツバの笑顔には癒される……このミツバはまるで太陽でござるな……)
そう、拙者はこの桃色の髪の相棒に対して思ったでござる。
ふう、にしても中々手ごわい敵でござったなタカスギ・シンクウは。
そのタカスギは腹心のモンタやシュン、金粉シスターズにろくろ首のロコに囲まれていたでござる。
畳の上に倒れるタカスギは慢心相違のまま呟く。
「やっぱ……お前さんは根に持つタイプだな。最初の一撃を防がれたから、最後のとどめにもう一度放つ。全く、とんでもねー奴だよお前さんは」
「初めの奇襲を失敗した事は忘れているでござるよ? 拙者の性格はさっぱりのパリパリでござる」
「ケケッ……よく言うぜ……」
金粉シスターズに支えられるタカスギは横になったまま言う。
意識を失う前に、確認せねばならぬ事があるでござる。
このスザク王国の未来の為に――。
「戦いの中で約束した、このスザク王国の次期国王としてスザク王国に貢献する話。それはタタスギ自身が引き受けてくれるでござるな?」
「ケケッ、そりゃ負けたからにゃ引き受けてやる。俺は盆暗だが、やるときゃやるぜ。なぁ、皆?」
『はい!』
「ケケッ! いい返事だぜ全く!」
タカスギは仲間の返事に高笑いする。
そしてそのタカスギは言うでござる。
「簡単に言えば、モンタは金策担当。シュンは他国との政治担当。金粉シスターズは他国の王をもてなすサービス担当だ……」
「ロ、ロコは何ロコ?」
妖怪幼女・ろくろ首のロコはおかっぱ頭を小刻みに震わせ言うでござる。
盆暗煙管の紫煙を吐くタカスギは拙者を見てから、
「ロコはスザク魔法騎士団の団長として推薦する。死力を尽くして団員から認められ、軍団長としてスザク王国をまとめる騎士として成長しろ。……剣術指南役としてロコを頼むぜアオイ」
「はいロコ!」
「わかったでござるよ」
ロコと拙者は返事をした。
タカスギはロコを国の守りにつけと言う。
スザク王国の守りはロコを中心に軍事活動をさせるようでござる。
これにて、ロコも自分の剣技を大勢の人に披露する事が出来よう。
確かに、これはロコの成長にもなり一石二鳥でござるな。
タカスギの奴……中々部下を見ているな。
そして、タカスギと拙者達は別れる。
「それではさらばでござる。今度、一緒にカツラ国王に会いに行くでござるよ」
「ケケッ。親父と会うのは久しぶりだな……もう親父とは呼べねー外見だけどな」
「確かにそうでござるな。カツラ国王は見た目、二十代の女子でござる」
「面倒だが、親父に会っておくか。これからの為にもな」
何やら思案顔のタカスギは呟き、仲間に帰り用の転送ゲートを開かせた。
そしてミツバの手を取り、拙者は歩き出す。
「ではタカスギ。また会おう。今度はスザク王国を守る仲間として」
「ケケッ、いいだろう。けど、お前さんを部下にする事は諦めてねーかんな? 忘れるなよ?」
そのタカスギの瞳は戦闘中のように怜悧に研ぎ澄まされていた。
フッ……と笑い拙者も言うでござる。
「それは拙者に勝ってから言うでござるよ。また、機会があれば戦おうタカスギ」
「あぁ、その刀を折り、俺がお前さんを倒す。覚悟してやがれ血ート剣客」
「わかったでござる。では、さらば」
タカスギとその仲間達に見送られ、拙者とミツバは帰還用のゲートをくぐる。
異次元のようなゲート内部に入り、拙者は暖かいミツバの手を感じながら言う。
やはり、ミツバは拙者にとっての……。
「ミツバは太陽でござるな」
「え? ゲートの中でよく聞こえないんだけど? も一回言ってくれる?」
「何でもないでござるよ」
そして、拙者達は帰り道のゲートをくぐり、妖怪里の入口付近へとワープしたでござる。
まぶしい光が差し、目を開けた。
……?
はて?
周りの景色がやけにさっぱりしてるでござるな。
空気が薄く、空の雲が目の前にある。
足が地面についている感じがせず、どうにも浮いているような……。
浮いてる?
……拙者はこの状況を全て理解したでござる。
「何でもなくないでござる……ミツバ。大事態でござるよ」
「へ? さっきは何でもないって言ってたし!」
「下、下!」
「下? 下は地面――じゃない! 滝壺!?」
「そうでござる! タカスギの奴! 奴こそ根に持つタイプでござるよ! 落ちるーーーっ!」
「滝壺フォーーー!」
わーい! みたいなポーズでミツバは落下し、拙者はひゃあああ! と青ざめたまま落ちる。
ドッボーーーン! と二人は滝壺に落ちたでござる……。
ほーほー……。
※
数日後。
スザク王国王の間。
拙者はタカスギと共に、タカスギの父であるタカスギ・カツラ国王に会いに来ていたでござる。
怪我もあらかた癒えたタカスギは自分から拙者を訪ねて来たでござるよ。
ほーほー……という事態は、次の瞬間起こった!
「ア! アオイーーーっ!」
長い金髪に青いドレス姿のカツラ国王は拙者に走り寄る。
そしてギュッ! と密着して来た。
ズボッ! と拙者の顔を自分の豊かな胸に沈めた。
(む、胸に顔を埋められると息が出来ないでござるよ!)
ケケッ! と笑い、タカスギは拙者の姿を嘲笑う。
何とかイケメン好き暴走国王をおとなしくさせ、カツラ国王とタカスギは話す。
(ほーほー……。これはこれは面妖な……)
この二人が本当に親子とは思えない……でござる。
天晴れ! といったカツラ国王は踊りつつ、まるで人妖戦争の裏で暗躍してた息子すらどうでもいいように言う。
「まさか、自分の息子が人妖戦争の裏で暗躍してたとは! 困った事だねアオイ!」
「いやいや、カツラ国王。ここはしっかりと盆暗息子に言うでござるよ。親子ならば、しっかりせねばならん。しかも、次期国王になる男でござるからなタカスギは」
ケケッ、とタカスギは煙管の煙をふかし笑っている。
あんまり自分の息子に興味が無いのか、カツラ国王は拙者にデカイ乳をこすりつけながら言う。
「にしても久しぶりだわねシンクウ。私は自分の美容とイケメン探しにしか興味が無いから息子の事など忘れてたわ!」
「あぁ、そうだな。それでいい。息子の事など忘れていてくれ。俺はこのスザク王国の国王なんてガラじゃねーからな」
「まだまだ私は現役の国王だからな! それに今はミツバの工事魔法でこの二十代の女の美貌まで手に入れた! 故に、このカツラ国王のスザク王国は永久に不滅なのであーる!」
『……』
拙者とタカスギは同時に溜息をついた。
そしてタカスギはカツラ国王に、これからのスザク王国の運営方法について話し、カツラ国王はそれを承諾した。ほーほー! これにて一件落着でござる!
拙者、アオイ・コウケンは異世界に貢献したでござるな!
すると、拙者の袖を引くカツラ国王は呟く。
「でもでもアオイ。またシンクウが暴発したらどうする? 今度は王国の内部に干渉してるからそうなったら大惨事だよ?」
「……ほーほー」
それでも自分の息子が謀反を起こした場合の事を言うカツラ国王に拙者は言うでござる。
「またタカスギが暴れても、拙者がギャフンと言わせてやるでござる!」
『ギャフン?』
と親子はシンクロして言う。
こういう所は親子でござるな。
「もう親子関係はバッチグーでござるな!」
『バッチグー! とか古いから!』
「な、なぬ?」
ハハハハッ! と二人に笑われる。
ミツバめ……拙者に死語を教えたでござるな。
帰ったらくすぐってやるでござるよ!
そして、今回の騒動はこれにて決着がついたでござる。
「今回の事は不問にしよう。これから、スザク王国に貢献し、次期国王としてさらなる飛躍を目指すのじゃシンクウ! 天晴れ!」
天晴れ! と書かれた二つの扇子で決めポーズを取った。
あまり乳を強調すると、そのドレスからポロリするでござるよ?
盆暗煙管で肩を叩き、頭をかくタカスギは言う。
「へいへい、わかったぜ親父」
「親父はやめいぃ!」
「そんな事を言われても、お前は俺の親父だろ。そんな女装姿じゃ、わからんがな」
ヒラヒラと手を上げて、タカスギは去る。
そして、拙者はカツラ国王に言われる。
「ねぇ、ねぇアオイ。いいかなぁ?」
「ぬ? ダメでござる。密着や変な行為はしないでござるよ」
カツラ国王は拙者に甘い吐息を吹きかけ、膝をツツキながら言うでござる。
「アオイ……いいじゃろ?」
「駄目です。駄目でござる」
「じゃあ、唇だけでいいから」
「駄目です。駄目でござる」
「じゃあ指を舐めさせて」
「駄目です。駄目でござる」
「じゃあお臍をペロペロさせて」
「乳首をコリコリさせて」
「駄目です。駄目でござる」
「お尻をモミモミさせて」
「駄目です。駄目でござる」
「アオイー! 余を受け入れんかー!」
暴走するカツラ国王を清流鬼神流の流水のような動きの回避技・無明朝夜にて回避する。清流鬼神流とは、このような時に使う技ではないが、ここは仕方ないでござるよ。そしてカツラ国王が疲れてきた頃合で、拙者は言う。
「尊敬する人物は男でござるが、拙者は男色の気は無いでござる」
まぁ、新選組副長・土方歳三殿は魔性の男でござるから新選組内部でも男にモテていたな……拙者もあの色気のある冷たい二重瞼にときめいた事があるが、それは憧れがあっての事でござる。
「それでもアオイが好きじゃああああっ!」
「駄目です。駄目でござるーーーっ!」
拙者達は王の間で一時間ほど鬼ごっこをしたでござる……。
ミツバよ、この国王の人格をまともに矯正する魔法を開発してくれ……。
と、拙者は切に願ったでござる。




