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エピローグ

病院から出て見上げた空は青かった。

なにせ女神との戦いでズタボロになって骨まで折れてた俺は、慌ててソレイルとリュミエールに夜間病院に担ぎ込まれ、疲労と回復魔法の疲労のダブルパンチでぐうすか1週間も眠りこけていたらしい。筋肉が悲しんでいる。また鍛え直さなくては!


「遅かったな」


手続きを終えて出てきた病院前にソレイルが待っていた。少し、驚く。


「何度も見舞いに来てくれてたんだってな!眠ってて悪かった!」

「それだけ疲れたんだろう。」

「お前は大丈夫だったのか?」


心配して問うと、ソレイルはぴしりと固まった。


「お前とリュミエールのおかげで俺は一番軽症……というか無傷だった。リュミエールもそうだ、ほぼ無傷だ。………助かった。」


ふい、と顔をそらされた。こいつ、照れてるな?

とりあえず商業街のいつもの酒場へ向かう。俺の顔を見た途端、クロエが驚いたように目を見開き……抱きついてきた!?


「バカ!公爵家の長男と次男を守ったって聞いたわ!ガルドらしいけど……無理しないで!」


涙目のオレンジ色の瞳がこちらを見上げてくる。……流石に罪悪感。


「ごめん……でも、ほら!もうすっかり元気だぜ!」

「快復祝いに今日は好きなものただにしてあげる!ただし、1品よ!」


勝手にきめるなよ……まあいいか。そんな酒場の親父さんの愚痴が聞こえる。ソレイルは目をそらしていた。


「えっと……とりあえず、いつもの窓際の席で大丈夫?ソレイルさんも!」


ニコリと笑ったクロエに、俺たちはいつもの席まで案内された。ああ、日常に戻ってきたんだな。そんな気分になった。


「それで?」声を落としてソレイルに聞く。「あのあとどうなったんだ?」

「事件の顛末をリュミエールと、すべて父親に報告した。………死ぬほど怒られた。」


けれど、ソレイルの瞳は何処か嬉しそうな色をたたえている。


「あんなに怒られたのなんて、初めてだったな……」


ギクシャクしてるより、罪悪感を抱え込むよりずっといい顔をしてる。

この親子も、もっと自然な関係になれればいい。


「師匠からも聞いた。この1週間で、闇魔法コミュニティの中で、異変が起きてる。確実に、暴走が弱まってきているらしい。」

「えっ……!」


じゃあ、いつかあの子も近い将来、この街に帰ってこられるのかもしれない。


「まあ、そう簡単には行かないだろうがな……父や師匠と協力してその噂を流してみたが、皆半信半疑だ。結果は芳しくない。」

「でも、いつかは戻れるかもしれないって、希望はあるんだよな?」


ソーダ水をぐっと飲み込んで、続けた。


「希望があるだけでも、大進歩だ!」

「それで……お前に話があるんだが。」


急にソレイルは言いにくそうに視線をうろうろさせた。


「お前、俺の家の騒動でも俺を守り切っただろう……今回の事件は、原因の女神の話はぼやかしてあるが、公爵家の子息二人を守り切ったとすっかり話も広がっていてな。」


伺うように、ソレイルがこちらを見た。


「父が……お前を、うちの近衛騎士にぜひ、と。……半分強制的に。」

「えっ……!?」


公爵家の近衛騎士。騎士としては頂点にすら近い。田舎から出てきた、この間まで騎士見習いだった俺が!?


「俺も、お前に向いてると思うぞ。お前は避け、受け流し、反撃がうまい。スピードが速いのもいい。粘り強い剣士だ……しかし。」


ソレイルは視線を落とす。


「街の巡回はなくなる……リヴィやクロエたちには会えなくなってしまう……」

「なーんだ、そんな事!休みに会いに行けばいいんだよ!」

「……普通、近衛騎士の休みってもっと……」

「俺は俺だし!変わらないものや変えられないものってあるよな。お前だっていける限りは孤児院に行くんだろ?"先生"。」


ソレイルは静かに頷いた。


「そうだな…、そうだと、いいな……」


その言い方に、少し不思議なものを感じた……が、ソレイルが口を閉ざしたので、それ以上は俺には何もいえなかった。

そして俺たちは孤児院にも向かう。しばらく向かえないとなると、寂しさが倍増した。

今日の孤児院は静かだ。どうやら子供たちは祈りの時間らしく、隣の教会で静かに祈っていた……なんかこそこそ動いてる奴らもいるが。

リヴィはせっせと孤児院の掃除をしていた。が、俺とソレイルをみて、ポロポロ涙をこぼす。


「騎士様……先生………!」

「ああ、泣くなよほら。」


ハンカチを渡してやると、涙をぬぐった。うれしそうに笑っている。


「しばらく来られなかったから、不安だったんです。騎士様が先生を守ったって噂だけ聞こえてきて……心配で。でも、元気そうで良かった……!」

「おう!これからはちょっと仕事の関係上、来る回数少なくなるかもしれないけど、休みには来るから!」

「どうされたんですか?」

「昇進みたいなもん!」


騎士様すごい!と目を輝かせるリヴィ。……なんか半分身内人事みたいなもんじゃないのかな?と、少し気まずい。

そしてしばらく俺たちは祈りの終わった子供たちの相手をしてから、孤児院を離れた……



公爵家の門は、以前より静かだった。けれど、門から馬車に乗るのは変わらないらしい。


「歩いて玄関に着くのにどれだけかかると思っているんだ」

「ですよねぇ……」


馬車は相変わらず広い。今回は2人のメイドさんが世話を焼いていてくれた。……少し、執事のことを思い出した。元気でやっているだろうか……?


「ソレイル様、ガルド様、どうぞ。」


開かれた扉から公爵邸の玄関に下り立った。相変わらずきらびやかで芳しい……

2人のメイドさんに扉を開けられ、前と同じようにズラッと並ぶメイドさんたちに頭を下げられる……これ緊張するから止めてもらう……わけにはいかないんだろうな。

ゆっくり足を進めると、公爵様が階段から降りてきた。


「ガルド。今回は、2人を助けてくれてありがとう。」


前のように、どこか切羽詰まった声ではなくなっていた。印象も、すこし柔らかい。


「2回もソレイルを守ってくれたんだ。ぜひ、うちの近衛騎士になってほしい。」


……流石に公爵さまに言われて断れる人間なんて、王様くらいだろう。


「……承知しました。」

「ならばとりあえず簡略で、ここで式を。正式には後に。……誰か、儀式剣を!」


肩に感じる刃の重み。けれど、それは前に騎士認定されたときよりも重く感じた。



取りあえずの儀式が済んだ俺たちは、ソレイルと中庭で休憩していた。


「近衛騎士かー……」

「見習い騎士だったお前が、ずいぶんな進歩だな?」


隣で笑うソレイル。今日は、少し笑っていることが多い。けど……何か違和感が。


「次期公爵はリュミエールなんだ。しっかり守ってやってくれよ?近衛騎士様。」

「もちろんお前も守るけど?」

「どうだろうな?俺は割と強いぞ?」

「知ってる」


軽い会話をしながら、ソレイルは部屋(地下室……?)に、俺は案内された部屋へと向かった。

………だがそこで、ノックの音が聞こえる?いったい誰だろう………

扉を開けると、そこにはしずしずと頭を下げたメイドさんがいた。


「公爵さまがお呼びです。」

「公爵様が……?」


いったい、何の用なんだろう?


次で本編最終話となります。

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