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怪物達の狂想曲〜彼方の獣達は電脳の夢を見るか〜  作者: 泥陀羅没地
第三章:魔人と魔女と人街の悪夢
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時満ちて、災いは氾濫せん

――ブチッ、ブチブチブチ…!――


其処は西の森に作られた洞窟…獣達が死して蘇る為に作られた〝瘴気の煮凝り〟の中…粘性を帯びた破壊音を響かせて…〝ソレ〟は繭から零れ落ちる。


――ゴボッ、ゴボォッ――


ソレは零れ落ちる〝肉泥〟…赤黒く、水気を帯びた不気味なソレは…その繭の中から這い出ると…直ぐに一つの意志に導かれるまま…〝人の姿〟を象る。


「ンンンーッ!…ハァァァーッ!…やっと復活ねぇ♪」


その美女は、伸びをしながらそう楽しげに言い…暗闇の中に混じる事の出来無い、血色の宝石をその目に宿し…歩き始める。


「って言っても、さっきまでドクターの複製相手に遊んでいたから…其処まで退屈じゃなかったけれども♪」


思い起こすのは、無数の情景の中で繰り広げられる〝闘争〟…ドクターや〝原住民〟と違い、感情と言う要素を欠落させた〝敵〟…情感も糞もない〝無慈悲な殺意〟には…中々どうして心が躍った…。


「まぁ…最適解を取るだけならやりようは幾らでも有るから…大した敵じゃ無かったけれど…」


洞窟を抜け出すと…出迎えるのは爽やかな風と暖かな日差し…微かに血の香る風の匂いを嗅ぎながら…私は今街に起きている状況の把握に努める。


「さてさて!…私が死んでた間、皆はちゃんと動いてくれてるかしら?」


そうして、私が街ニュートの街へ目を向けた瞬間。


「――ん?…何アレ?」


私の目には…天から街へ向けて振り降ろされる〝光の柱〟が映っていた。



●○●○●○


――バサッ…バサッ!――


「……は?」


ファニルの声が、はためく白いマントの先から響き渡る。


「――うむ、うむ!…流石は我が友、凄まじい破壊力だな!」


そんなファニルの声の後、続いて己の前から響くその声に…(レリック)は己の頭上を見上げる。


「――とは言え、既に手負いの獣だったようだが…いやすまん、其処の人間!…お前の手柄を簒奪するつもりは無かったのだ!」


其処には、太陽のように眩しい〝金色の髪〟をした男が…人間の域を遥かに超えた〝美〟と共に己へ笑い掛けていた。


「アンタ…は……」


その姿に呆然とそう呟く…その問いに、男が言葉を紡ごうとしたその時――。


「お前ッ…〝金獅子〟か…!?」


その巨躯の凡そ6割を吹き飛ばされた黒曜の大蜥蜴が、信じられないと言う様にそう言い…〝男の正体〟を口にした。



○●○●○●


「――ほう!…俺を知ってるのかお前は?」

「ッ――マジかよ…!」


〝金色の眼〟が俺を射抜く…その視線らその口から紡がれたその言葉に、俺は驚きと、焦りと、諦めと…何より疑問が心に渦巻いていた。


「――テメェが〝金獅子〟だってんなら…何だその姿?…まさか、ウチの大将や姐御と同じ〝人化〟の能力かよ?」


そして、明滅する視界の中で…俺は奴へ問う…すると、奴は軽く己の得物である、白を基調に金の模様と、赤い丸い宝石をあしらった鞘を手に…言う。


「いいや、俺のコレは〝借り物〟だ…この身体の主は〝この剣(コイツ)〟…事情が事情でな…今は〝人間〟の身体になっているだけだ」


俺の問いに、奴はそう答えると…俺の元にツカツカと歩みながら問い掛ける。


「さて…そちらの問いには答えた…次はお前が俺の問いに答える番だ…お前の〝仲間〟は何処だ?」


問いと共に、剣が俺へ突き付けられる…その目が放つ、萎縮しそうな程鋭い眼光に…冷や汗が流れ出る。


――『…』――


「――ハハハッ…誰が言うかよ…って、言いてぇが…確かに、俺だけ答えてもらうってな、ちと不公平か…とは言え、今さっき〝東側の城門〟も突破されたらしいし…どうせ直ぐに分かるだろうが…良いぜ、教えてやんよ」


俺は、俺を見下ろす金獅子の眼光にそう返しながら…最後に一言言葉を紡ぎ…〝その場所〟を告げる。


「〝上を見てみな〟…〝聖獣共〟」


俺がそう言い、奴等が俺の言葉に頭上を見上げた…その瞬間。


――〝ブブブッ〟――


〝悪意の羽音〟が…鳴り始めた。



●○●○●○


「――うっひゃあ…なぁに、あの〝男〟…とんでもなく強いわねぇ?」


私は街の真上を滞空しながら北東部に寄り集まる〝強力な気配〟…その中でも取り分け異彩を放つ〝金色の勇者〟に目を向ける。


『……』

「――レベル60…いや、もしかしたらそれ以上?…何にしても、相当な手練れである事には間違い無いわね」


そんな奴に狙われるなんて、ファニルも運が無いわねぇ…いや、あの子はあの子で頑張り過ぎじゃないかしら?


「――と、行けない行けない…危うく本来の目的を忘れる所だった♪…よしよし、気を取り直して♪」


逸れる思考を正し…私は一度、彼等から目を離し…〝街の状況〟を見渡す…。


「〝四方の門は破られた〟」


東西南北…各方角に設けられた城門は破り去り…魔物達が外から延々と流れ込んでいる。


「〝街〟に溜まる〝血肉〟の数も申し分ない♪」


そんな魔獣を食い止めんと立ちはだかる聖獣達や冒険者…家の中にて隠れ潜んでいた人間達の血と肉が街を朱く染め上げている…。


「――そして、街には〝敵の全勢力〟が集結済み♪」


【兵士】はもちろん、【指揮官】…そして、【王様】も……成る程。


「〝これ以上無い御披露目タイムね♪〟」


私は状況を総括し…この場が最高の〝条件〟である事を認めると、早速〝準備〟を始める。


――ズズズズズッ――


体内の魔力を放出し…自身の〝声〟を…街中に響き渡る様に〝強化〟し…私は始める。


『「〝暗闇に住まう者よ〟――〝穢れたる同胞よ〟」』


――『「〝時は満ちたり〟」』――


私の声が響き渡ったその瞬間…街中に広がっていた騒乱の、その殆どが止まり…多くの聖獣と魔獣が空を見上げる。


『「〝四方の門は破られた〟…〝盃に贄血は注がれた〟」』


その空には私の昏い魔力が拡がり…その魔力が怪し気な〝紋様〟を象り…一層強く暗い輝きを放った。


「――〝全ての縁は繋がれた〟――〝故に今〟…〝災厄の箱は開かれん〟」


――ガタガタガタガタガタッ――


街全体が…凄まじい振動で揺れる…その揺れは街の下…己らの眼下より生まれ…意志を持って〝地下と地上〟の入口へと集結する…そして。


『「〝貪食の災厄よ…来たれ〟」』


その瞬間…〝黒き災い〟は…遥か地下より溢れ出た。

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