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怪物達の狂想曲〜彼方の獣達は電脳の夢を見るか〜  作者: 泥陀羅没地
第三章:魔人と魔女と人街の悪夢
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ルールと定石

――ヒュンヒュヒュヒュヒュンッ!――


空を埋め尽くす矢の雨…その光景は、かつて襲撃した〝村〟の攻防を彷彿とさせる…まぁ。


――ドドドドドドドドッ!――


「グァァッ!?」

「ギェッ!?」

「ゴバァッ!?」


その一撃一撃は、村の粗末な攻撃とは、比べ物にもならないのだが。


――ギィンッ――


「弩と大砲の波状攻撃…加えて聖獣の力を使えばどんな攻撃も〝魔力の籠もった攻撃〟に強化されて、一射一殺が成立する…【兵士(ソルジャー)】が居なかったらやってられないわね」


このイベントの詳細を、少し明かしましょう…イベントの基本は〝襲撃と防衛〟…けれど、襲撃・防衛に参加するプレイヤーには、イベント期間中、3つの特別な〝役割〟から、最も適した役割を振り分けられる…。


1つが【兵士(ソルジャー)】…このゲームにおける〝縁の下の力持ち〟…汎ゆる局面で運用し、戦局を有利に進める為の〝最多の役割〟


その性能は要約すると〝安い駒〟…自前の能力以外には何も持たないが、リスポーンに制限が無く、物量押しに使える。


そして【指揮官(コマンダー)】…言うまでもなく【兵士】を操る役割を持つ。


先ず、【指揮官】は基本の全ステータスが1段階強化される…CがC+になると言えば分かりやすいだろう。


そして、【兵士】のマップへ印を付けて優先目標を設定したり、逆に戦線を退かせたり等のシステム【集団指揮フィールド・タクティクス】を行使でき、且つ範囲内の【兵士】を一時的に大幅強化する事が出来るシステム【精鋭化(エンチャント・ナイト)】を有する。


とは言え、流石に【兵士】程自由は利かず…難点として【指揮官】のリスポーン回数は有限だ、最大で3回の猶予が与えられ、且つ【指揮官】は1陣営に5人までと言う制限が有る…リスポーンを使い切って死ねば、【指揮官】〝傍観者〟として、イベントを眺める事しか出来ず…同じ傍観者の人間と話す以外には、何も出来無い。


最後が【王様(キング)】…このイベントの〝最重要役職〟であり…〝ぶっ壊れ〟と言って良い〝役割〟…。


先ず、【王様】に選ばれたプレイヤーは、イベント開始時に、〝全ステータス〟を大幅に強化される…具体的にはステータスの値が〝3段階〟上がる…化物だ。



そして…【王様】は【指揮官】と同じ能力を有する…加えて、【指揮官】の【精鋭化】と違い、【王様】が発動すると〝エリア全域〟の魔獣に一時的な超強化が起きる。


基本的に、【王様】は【指揮官】が複数人か、同じ【王様】が相手でなければ倒せない化物だと覚えておくと良い。


さて、そんな化物染みた【王様】だが…強力な力の代償は勿論存在し…基本的なシステム行使は〝一度限り〟の消耗品、指揮官は3回の能力行使権限があるが、王様は一度こっきり。


加えて、このイベントの勝利条件は〝2つ〟有る…1つは、〝街の中心に【瘴気核(ケイオス・コア)】〟を形成する事…コアの形成は【王様】しか出来ず、必然的に王様は最前線に出てこなければならない…そして、もう1つが…〝【王様】の討伐〟だ。


(つまり、私達が勝つには【王様】を街の中心に運ばなくては行けない…しかし、街の中心に向かう道中、【王様】は暗殺の危機に直面する…)


コレが【王様】のデメリット…とは言え相手も【王様】を抑える為には向こうの【王様】を出さざるを得なくなるだろうから、此方だけが不利と言う訳ではない。


「――とは言え、〝タイムアップ(時間切れ)〟も有るから、襲撃を悠長にはしてられないんだけどね」


思考を切り替え現在…戦線の状況を見ながら、私は今の最適解を思考する。


(さて、彼我の距離は依然離れている…このままジリジリ戦線を縮めても後方援護が厄介――だったら)

「先駆けて〝一基〟…手札を切ろうかな♪」


――ブゥゥンッ――


脳内で作戦を練り上げると同時に、通信で周囲の【兵士】に呼び掛ける…。


「『はぁい、皆…〝指揮官命令〟――♪』」


早くも膠着しつつある〝戦局〟に、私は手ずから一石を投じに動き出し…〝編成〟を始めた…。



●○●○●○


「――さて、そろそろ向こうも〝一手〟を打ってくる頃合いだね」


遠巻きに蠢く魔獣達を見ながら、ドクターは各方角に散った【指揮官】達と連絡を取る。


『んにゃ〜…此方は弓矢と砲台で進軍がだいぶ遅れてるにゃし…そろそろ〝特攻〟をかましてくるかもにゃね』

『……此方に動きは無い』

『此方も同じく』

『拙者の所は、斥候に行かせた【兵士】が討ち取られてるでござるが、問題無いでござるね』


序盤の立ち上がりは優勢、場が固まりつつある状況に、聖獣達は確かに気を張りながらもそんな歓談の余裕を持つ…しかし、ドクターの一声で聖獣達に緊張が走る。


「――〝此方西方〟…〝向こうが動き出した〟…!」


ドクターの目には、遥か遠くの森林から、空めがけて飛び上がる〝無数の影〟…その正体は…無数の〝鳥の魔物達〟…。


「狙いは〝上空〟からの奇襲…壁を越える腹積もりかな?」

『ドクター、援護は?』

『――んにゃ、此方も動き出したにゃ!』

『ッ…俺の所もだ……成る程、同時に仕掛けてきた…』

『〝城門〟の突破を優先してきたか』


ドクターの声を皮切りに、他の戦線でも同じく敵の動きが確認され、状況は一気に慌ただしくなる…そんな中でもドクターは一際冷静に一言。


「――だったら此方も対抗するとしよう…総員迎撃準備…まだ敵に城門に触れさせる訳には行かないだろう?」


――そう言うと、彼の魔力が周囲の人々に振り注ぎ…矢と砲弾の狙う先には…無数の鳥類魔物と共に街を目指す、黒い大きな鴉が戦線の変化をその眼に捉えていた…。



○●○●○●


――バサッ――


「ん〜……〝向こう〟も手札を切ったわね?」


羽撃く私は、先頭の景色を視界に収め…その先々に満ちた〝白い魔力〟に、〝聖獣の動き〟を読む。


「狙いはオーソドックスに〝私の妨害〟かしら…分かりやすい定石ね」


だったら、次の動きも単純ね…〝地対空攻撃〟による、此方の撃墜…たしかに、この編成で、強化された攻撃を受けるのは酷だろう…しかし。


「――〝ソレが定石なら〟…の話だけどね」


私は、【兵士達】に散開の指示を出し…1人更に前方へ加速する。


――ギィィッ――


その功有ってか、狙いはどうやら私一人らしい…絵面だけ見ればリンチの構図…実に危機的な状況…だが。


「――まだまだ〝詰めが甘い〟わね、ドクター?」


その実、この行動は寧ろ〝都合が良い〟状況と言えた。

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