表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
怪物達の狂想曲〜彼方の獣達は電脳の夢を見るか〜  作者: 泥陀羅没地
第三章:魔人と魔女と人街の悪夢
90/96

街を目指して獣は駆る

2、本目。


ちょいと短いのは御愛嬌。

――オォォォォ…――


噎せ返る程の〝殺気〟が…城門から放たれる。


――ゴクッ――

「……」


その気配に充てられたニュートの街は、不自然な程、静けさで満ちていた。


誰も、彼もが…〝迫り来る戦の時〟を予感して。


――ブゥゥゥンッ!――


そんな彼等の、張り詰めた神経が…街全体を包む様に発せられた〝魔力〟の波紋を知覚し…その殺気が唸りを上げる…そんな彼等へ届ける様に…その〝声〟が、場に響き渡った。


『あー、あー…テステス、此方〝ドクター〟…うん、聞こえているね人類聖獣諸君』


その声の主は、場の空気に対して酷く呑気にそう言い…前線に立つ彼等の呆れを意にも返さず続ける。


『さて、〝敵魔獣の襲撃開始〟まで残り5分を切った…トイレは済ませたね?…食事は取ったかい?…ありとあらゆる対策を講じ、万全の備えを以てこの戦線に立っているかい?』


とは言え、さしものドクターもこの場の空気が感染ったのか…その声は徐々に真剣な物になり、その言葉に充てられた彼等もまた…面持ちを改める。


『――僭越ながら、私がこの忌々しい祭りを、恐るべき地獄の戦線の音頭を取らせてもらう流れとなった…諸君、我等が共に歩みし人類諸君…今日この日こそ、君達の命運を分かつと言って良い』


その淀みない事実に、北の白鴉は深く息を吐き。


『コレは魔獣退治ではない、〝戦争〟だ…我々と魔獣の戦争だ』


その迷いない宣言に、南の黒狼は閉じた目を開く。


『我等が盟友たる人類よ、心せよ』


その厳粛なる警句に、東の冒険者長は己の身の丈程は有ろうかと言う大剣を二対構え…剛腕を震えさせる。


『我が同胞たる聖獣よ、臆するな』


その激励に、西の兵たる聖獣達、冒険者達は…緊張と、ソレを飲み込むほどの〝戦意〟で、前線を満たす。


『〝全身全霊〟を持って、敵の試みを打ち砕き…我等が〝街〟を守り抜くぞ!』


――ウオォォォォォォッ!!!!――


そして、ドクターがそう呼び掛けた…その瞬間、四方の戦線に…人の咆哮が空を揺らす…そして。


『さぁ!――〝戦闘開始〟だ!』


白く、聡き賢者はそう…祭りの開始を宣言した……。


一方…その頃。



――ブゥゥゥンッ!――


『――はぁい、皆…準備は良い?』


対岸…四方の森に隠れ潜む様に居た…〝彼等(魔獣)〟の側にも、そんな声が響き渡っていた。


○●○●○●


『満願成就の時が来た、待ちに待ち侘びた〝私達の舞台〟…〝私の劇場〟が幕を上げる』


草木を踏み締める彼等へそう語るのは…暗き、黒き…濡羽の黒を纏った妖婦…彼女はそう言葉を紡ぎ上げながら…その顔身体には不釣り合いな、禍々しい肉と骨の腕を構え…その目に映る〝人の街を見ながら〟…言葉を続ける。


『私が命じる事はただ〝1つ〟…〝殺せ〟』


人を。


『〝殺せ〟』


聖獣を。


『〝殺せ〟…汎ゆる敵の、その一切合切を食い破れ、抉り裂け、踏み潰し斬り殺し、食い殺せ!…誰の赦しも必要無く…ただ只管に生命を貪る〝獣〟で在れ…それこそが〝私達の本質〟だ』


その舌声から繰り広げられる演説は…彼等魔獣の腸の奥に広がる〝生命の薪〟に、仄暗い悪意の炎を焚べ…その場に集う何千匹の魔物たちの目は、赤く朱く…血に染まり…来たるその時を待ち望んでいた。


『さぁ、皆…残す時間はあと僅か!……覚悟を決めろ、ただ〝蹂躙〟を、ただ〝殺害〟を!――』



そして、その炎が黒く…彼等の身体の末端に至るまで…熱を灯し切った…その時。


――カチンッ!――


「――〝悪虐の限り〟…〝人を殺せ〟!」


その瞬間…すべての獣達が抑留していた〝邪悪の烈火〟が…爆炎を上げて、人の街へと振り注いだ。 



●○●○●○


「「「「「始まった…!」」」」」


駆け迫る〝悪獣〟達を見ながら、遥か彼方の〝観測者〟はその迫力に感嘆を紡ぐ。



『『『始まったね(な)♪』』』


空を裂く弩の行進を見ながら、世界に根差す■■■は悦楽を述べる。


『……』


大地に響く人と獣の軍靴の進軍に…自然の〝守護者〟は忌々しげに沈黙を貫き。


「「「「「さて、此度の〝試み〟は…如何なる〝刺激〟を世界に齎すか?」」」」」


衝突が間近に迫る、その一幕に…〝管理者〟達は、興味と関心の声を紡ぐ…そして。


「さて、さて…さて……〝新たな劇場は幕を上げた〟…」


〝異端の管理者〟は独り…交わり合った〝劇場〟に歪な笑みを零し…その空間に浮かぶ〝数人の顔〟へ、視線を彷徨わせる。


「この劇場の主役は…一体誰に成るだろうか……そして、選ばれた〝主役〟が齎す〝結末〟は…どんな物に成るだろう…?」


その〝時計頭の異形〟から放たれる気配は…何処までも〝享楽〟に染まり切っていた。



人と獣…人ならざる者達が、一同に〝集う〟…その場所は正しく〝混沌の坩堝〟…故にこそ、世界は大きく捻じれを生み…その結末は誰にも予想する事は出来無い〝未知〟へと姿を変える。


画して劇場は観客の歓声を浴びて幕を上げ。


《第一回Evolve&Monster大型イベント――〝人獣混濁魔境〟――〝ニュートの街殲滅・防衛戦〟を開始します!》


世界はその頁に〝1つの舞台〟の名を刻み込んだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ