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怪物達の狂想曲〜彼方の獣達は電脳の夢を見るか〜  作者: 泥陀羅没地
第三章:魔人と魔女と人街の悪夢
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夕闇の包囲網

――ギリィィンッ!――


「――ッぶねぇ!?」

「ッ――チッ」


襲撃者の魔の手がレイナを掴もうとした瞬間、寸前で間に入った冒険者の剣戟が、その手を振り払う。


「アルフレッドッ!」

「おう、噛み殺したらぁ!」


仰け反る襲撃者に対し、冒険者と犬の聖獣が連携し飛び掛かる…その牙が襲撃者の喉笛へ迫ったその時。


「――フフッ♪」


――ググッ…ボキボキボキッ!――


襲撃者は自らの足を異常な程捻り、無理矢理体勢を整え、その場から飛び退く。


――ガシッ!――


「ギャンッ!?」


飛び掛かる犬の、その首を掴み上げて。


――ザザァッ――


「う〜ん、惜しい惜しい…実験には〝人間〟を使いたかったんだけどなぁ……でもまぁ、〝聖獣〟は〝聖獣〟で…試すには良いか」


互いに距離を取り、襲撃者はそう言いながら自身の手に掴まれた聖獣に顔を向け…腕に〝魔力〟を込める。


――ボコボコボコッ――


「ッ…!?」


すると、襲撃者の手は異常に膨れ…その瞬間、肉々しい触手の様な〝ソレ〟が…聖獣の口から、目から、鼻から脳に侵入する。


「――ガゥッ、ガッ…ギィッ…ァッ〜〜〜!?!?」

「テメェ、ソイツを離せ――!」


異物の侵入に、聖獣は悶え苦しみ身体を暴れさせる…その異様な光景に冒険者は怒りと焦りで冷静さを失くし…襲撃者へと突き進む…しかし。


「――ッ…ロ…ニゲロ――〝フリューゲル〟!」


聖獣がそう叫び、彼を諭したのも最早遅く…その瞬間…聖獣の身体は一際強く跳ねると脱力し…手を離されると、無慈悲に地面へと落下する。


――ドサッ!――


「ッ……アルフレッド!」


ソレはピクリとも動かず…完全に〝死んでいた〟…しかし…そんな死骸の頭部に満ちる不穏な魔力が、その肉体全域に渡った時。


「〝起きなさい〟…私の可愛い〝息子(眷属)〟」


その肉体に…異形の華が咲き開いた。



●○●○●○


《新たな【能力】を獲得…〈眷属作成〉を獲得しました、〈変形〉に統合します》

《〈変形〉のレベルが上がりました!》


――ゴポッ、ゴポポッ――


音を立てて、〝聖獣の死骸〟と融合する〝己の一部〟…ソレに伴い脳に響くアナウンスを聞いて…私は自身の試みが成功した事を悟る。


「起きなさい…私の〝息子〟」


完全に魔力が肉体に染み付いたのを確認し、私がそう言うと…その声に反応して〝その子〟は自身の身体を動かし…立ち上がる。


〝眷属〟…ソレは、自らの肉体を…自身の命の欠片を与える事で作り出せる〝己の子等〟…。


ベルゼが生成する〝蟲〟から着想を得た…私の〝新たな戦力〟…。


――――――

【無名】〈能力制限〉

【触魔の眷属(戦犬長ウォードッグ・リーダー)】LV15/20(LV27/30)

HP:2100/2100(4200/4200)

MP:1800/1800(3600/3600)

満腹:32%


筋力:D(C)

速力:D(C)

物耐:D(C)

魔耐:F+(E+)

知力:F+(E+)

信仰:F−(F−)

器用:E(D)

幸運:G(F)


【能力】〈寄生により初期化〉

〈鋭牙〉、〈鋭爪〉LV1/10、〈嗅覚強化〉LV1/10、〈指揮〉LV1/10、〈気配察知〉LV1/10


【称号】〈寄生により称号消失〉

〈マオ・ディザイアの眷属〉、〈下級眷属〉

――――――


〝寄生〟…〝眷属化〟である。


「――〝人間を殺せ〟」


自身の眷属をけしかけながら、私はレイナと、彼女と共にいる冒険者へと迫る。


「〝―――ッ〟!!!」


甲高い叫び声を上げて眷属は冒険者へと肉薄し…その触手から、無数の骨の歯を作り出しその触手を巧みに行使し敵を追い立てる。


「グッ…コイツ…!」

「〝―――ッ〟!!!」


――ザンッ!――


「ッ〜〜〜!?!?」

「ッ――この程度なら!」


とは言え、流石に生まれたばかりの眷属では攻めあぐねるか…二人の攻防は刹那逆転し、冒険者が果敢に眷属へと迫る…。


――ギンッ!――


だが、その剣戟が私の眷属を切裂くことは無く…振り抜かれた剣戟は、私の異形の腕によって抑え込まれる。


「〝残念〟――そう簡単に殺させないわよ?」

「ッ――しま…!」


この攻防に私が入ってくるとは思わなかったのか、彼は驚き…私の攻撃へ対応を遅れさせる…その隙は大きく、ソレを見逃さず…私は彼へ追撃の拳を振るう。


――ブンッ!――


振るわれた拳が目指すのは、彼の頭部…その頭部に私は魔力を込めた掌を差し向け…彼にもまた、眷属の〝苗〟を植え付けようとする。


「ッ……!」


ソレが分かったのだろう、彼の目にも明確な恐怖が浮かび上がり…その目は私の掌を捉え離さない…。


敵が恐怖している…だからといってこの掌が止まるはずもなく…私の手が彼を掴もうもした…その時。


――ゴォッ!――


「「「ッ!?」」」


刹那…もつれ合う私達の間に、〝高密度の魔力反応〟が突如現れ…瞬間、暴力的な熱波と衝撃が敵味方の区別無く放たれる…。


――ザザザァッ――


「〝――〟…〝―――〟…!!!」

「ケホッケホッ…やってくれたわね…!」


黒煙が私達を包む中、焼け焦げた腕と胴体を修復しながら…私の視線が彼女を睨む…同じく腕と胴…そして、顔を大きな火傷で覆った瀕死の冒険者を抱える、魔女レイナを。


「でも、コレでアナタの盾は居ない…仕留めるチャンスね!」


その姿を捉え、私は再び彼女を仕留めようと異形の腕を使い肉薄しようとする…しかし、まさにその瞬間…私は頭上から感じる殺気に、その場から飛び退いた…その行動から僅か数秒と経たず…空から――。


――ズシィィィンッ――


〝夜〟が降ってきた…。


「……怪我は?」

「ッ…私は無傷です、この方は重篤です、早く治療を…!」


現れた褐色肌と黒髪の男はその金の瞳でレイナを見捉え…それから、彼女の腕に抱かれる男を見据える。


「…〝アーク〟」


状況を把握すると、彼はその名を呼び…それから、凄まじい魔力を周囲に吹き荒らす…その高ぶりに連鎖して。


「――あぁ、任せてくれ」

「…それじゃあ我々は〝彼女の捕縛〟を優先しようか…ヴォルフ君」


――ドッ…ドッ…ドッ…――


凄まじい魔力の塊達が、一瞬にして私を包囲した…。


「さぁ、〝降参〟するのが身のためだよ…レディ?」

「……時間を掛け過ぎたかしらね」



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