契約と言う名の隷属
本日の投稿…2本目は未定です。
――ゴキッ、ゴブッゴボッ!――
「――やっぱり、下半身に脳が付いてる連中は扱いが楽で良いわね…その分脳味噌がお粗末なのが難点だけど」
其処は路地裏、人気も何も無い、所謂スラム街の様な瓦礫と廃屋で出来た人工の迷宮の中…袋小路で私はそう言い、崩れ落ちる二つの肉塊を見下ろす。
「ヒィィッ、ば、化物…!」
「――態々叫ばなくても見て分かるでしょ、無駄に騒ぐのは止めてちょうだい、私は別にアナタを殺す気はないから」
そんな私へそう言い恐怖の混じった目で見詰める〝生き残りの人間〟に、私はそう言いながら〝爪〟を元の形状に戻す。
「う、嘘だッ…だったら何でアスアとグル・ガドを殺したんだよ…!?」
「そりゃ、私が大人しくすれば命は助けるって言ったのに襲い掛かってきたしね…下手に暴れられて誰か来ると面倒くさいし、仕方ないわよね」
騒ぐ彼へそう言いながら、私は後退る彼へ近付き…グッと顔を近付けて言う。
「ソレに、貴方は助かったんだし良いじゃないハルバン・アントン♪――別に貴方が特別な訳じゃないし、この子達も大人しく従ってくれたなら、〝良い思い〟も出来たのにね」
私はそう言いながら自身の身体から触手を幾つか生やし…その触手に其々〝契約書〟と〝硬貨を詰めた麻袋〟を揺らしながら彼へ告げる。
「そう言う訳で、貴方にちょっとした取引をお願いしたいの♪――〝10万z〟を貴方に上げる…代わりに、〝この契約書〟にサインして、契約の内容を守って欲しいの♪」
私がそう言うと、〝殺さない〟と言う私の言葉と、目の前に揺れる硬貨の擦れ合う音に、彼は臆病ながら確かに〝冒険者崩れ〟なのだと思わせる強欲を見せ、私の話を聞く気になる。
「契約だと?」
「そう、内容はシンプルで〝この契約〟を他者に教えてはならない、声や文字による伝達は疎か、自身の意志でこの契約を明かそうとする行為はしちゃ駄目…罰を破れば目玉を砕くわ…そして、此処からが本題――」
そんな彼に私はヒラリと1枚の契約書をハルバン・アントンの目の前に持ってきて告げる。
「定期的に生き物を殺して、その経験値を少しだけ上納して欲しいの♪…そうね…1日に3匹位ね♪…契約してくれるって言うならこの〝10万z〟は貴方の物よ?」
私がそう言うと、アントンは何か考える様な素振りを見せ…それから口を開く。
「…〝20万z〟なら――」
その口が、〝交渉〟を紡ごうとしていると分かった瞬間、私は触手を彼の目の寸前に向ける。
「ヒッ…!?」
「〝勘違い〟しないで欲しいんだけど…コレは〝正当な交渉〟じゃないの、貴方の生命を取らない代わりに、この契約を結べと言ってるのよ?……思い上がるな」
そして、怯える彼にそう脅しを掛けると、彼は首がもげるほど頷き、両手を上げ…言う。
「わ、分かった…契約を呑む、だから殺さないでくれ…!」
「……そう♪――なら良かった♪」
その言葉に私は触手を戻して彼に〝契約書〟を与え、サインを書かせる。
――キュィィィンッ!――
すると、条件を満たした契約書が淡く輝き…私の手と彼の手に契約の証が刻まれる。
「――それじゃ、契約は成立ね…〝精々働いてちょうだいね〟…それと、契約は破らない様に♪」
ソレを見届けると、私は彼から契約書を取り上げて代わりに硬貨の詰まった袋を渡し…その場を後にする。
――ゴーンッ、ゴーンッ、ゴーンッ――
それから僅か数分の後。
《経験値の譲渡が発生しました!》
「――フフッ♪」
私は…自身に送られる〝経験値〟に笑みを零し…その場を去る。
――ドンッ!――
「あら、ごめんなさい」
そして、路地裏から抜け出すその時…不意に角から現れた女性とぶつかり、私は謝罪を口にする…。
「…(ペコッ)」
その謝罪に、深く外套を纏った女性は…ペコリと頭を下げると、そのままいそいそと歩を進めて…路地裏を進んでゆく。
そんな彼女へワタシも背を向けると…そのまま人混みの中に紛れて、手頃な〝獲物〟を探して、歩を進めるのだった…。
○●○●○●
「んしょ……コレ下さい」
場所は変わって、其処は大通りに面した雑貨店…そのカウンターに、目一杯の道具を広げ…魔術師らしい美少女が店主に目を向ける。
「あいよ――〝低級魔法袋〟が2つと、〝応急処置キット〟が3つ…〝低質魔力ポーション〟が10本…合計48万zだぜ」
「どうぞ」
――チャリッ!――
店主がそう告げると、少女は何の迷いも無く懐から硬貨の詰まった袋を取り出し、紐を解く。
「――へぇっ、即決で支払うってこた中々稼いでるんだな嬢ちゃん…大体の若え冒険者は値切ったり高えだなんだって文句ふっかけてくるもんだ」
「そうですか?」
「おう、冒険者に成り立てで金がねぇ奴や、物の価値を知らねぇ奴、理由はどうあれそこらが未熟な連中は多いのさ…だからこそ、熟達した冒険者や、優秀な兵士達は物の価値に沿った値に文句は付けねぇ」
袋から硬貨を取り出し数えながら店主はそう言い、少女に言う。
「――そう言う〝行動〟を、店側は観察して、コネを作んのさ…ってな訳で、将来有望そうな嬢ちゃんにゃ、オマケに魔力ポーションを3本と程度は低いが魔石をくれてやらぁな…今後とも〝ポールの雑貨店〟を贔屓にしてくれよ」
そうして、商品に色を付けながらニカッと、歯を見せて笑う気の良い店主に少女は笑みを浮かべ、感謝を告げる。
「ありがとうございます!…それと店主さん…私、最近この街に来たばかりであまりこの街に詳しくないんですけど…最近この辺りで何か何時もと違う出来事とかって有りますか?」
そして、少女が商品を収納袋に納めながら店主にそう問うと、店主は顎に手を当てて空を見上げながら考え込む。
「ん?…どうだろうなぁ……この辺は滅多に魔物の襲撃とかもねぇからなぁ…冒険者にとって飯の種に成りそうなもんはねぇ……」
「…そうですか」
しかし幾ら考えても出てこないのか、店主は唸りながら顔に皺を寄せる…ソレに少女はそう言い、この話を止めようとしたその時。
「あぁ…そういや今朝だったか…この街の領主様から街に伝令が有ったらしいな…何でも〝暫くの間夜間の外出〟を禁止するとか何とか…なんか事件でもあったかね?」
店主がそう言い、朧気に覚えている出来事を口にする。
「――そうですか、ありがとうございます」
ソレに少女は反応し…それから、少しの間を置くと…用が済んだのか、店主にお辞儀をして背を向ける。
「おう…つっても詳しい事は知らねぇんだがな…嬢ちゃんも気を付けろよ?」
「はい…また来ますね」
そんな少女に店主はそう忠告をすると手を振り、去ってゆく少女を見送るのだった…。




