そして魔物は人里へ
1本目!…2本目は未定!
漸く今章のメイン舞台に主人公が交わります。
「――此処でも、か」
暗闇の中、その暗がりに溶け込む様な暗い髪を靡かせながらそう呟き…路地裏に草臥れている人に近寄る。
「……」
その男は語らない…いや、そもそも語る舌の根を持っていないのだ。
「――おやおや、コレは珍しい顔が居るね」
そんな頭の爆ぜた死体を調べている黒髪の男へ、そんな声と共に一匹の白い梟が舞い降り…その双眸で黒髪の男を捉える。
「〝黒の孤狼〟が人里に来るなんて、滅多な事も有るモノだねぇ」
クックックッと、人の悪い笑みを浮かべながら賢者は笑う…その姿を金色の双眸に捉えながら、その男はソレの呼び名を紡ぐ。
「…〝虹の賢梟〟」
「気軽にドクターと呼び給えよ、その呼び名は少し小恥ずかしい…ともあれ、我々のコミュニティでもあまり姿を現さない君が、何故ニュートに居るのか…気になるね」
――バサバサッ――
両者共に面識が有るのだろうその二人は、互いに視線を送り…そして、その二人を結ぶ〝縁〟となったその〝死体〟に目を向ける。
「――よもや〝コレの元凶〟…と言う訳ではあるまい…君は人に友好的と言う訳では無いにしても〝無力な人間〟を殺さない〝武人的傾向〟を有していた筈だ」
「……」
冷たい血肉をジッと眺めながら、その梟は男へ向き直る。
「ともすれば、君も我々と同じ〝この事件〟に携わる協力者と言う訳かな?」
「…そうだな」
「ならばどうだろう…一度情報交換の機会を設けないかな?…何、此処で立ったままとは言わないさ…この街に私の〝拠点〟が有る…其処で話そう」
そして、男へ幾らかの問いを打つと…調べたい事もなくなったのか、彼の肩に飛び乗り…羽で行先を示す。
「〝コレ〟は良いのか?」
「大丈夫だよ、魔力でマーキングしてあるから、直に人の調査員が回収に来るだろう」
1人と1匹はそう言いながら歩を進める…そんな彼等を囲む夜の街は…不気味な静けさで満ちていた。
●○●○●○
「お待たせしましたー!――〝特製イチゴパフェ〟です!」
「「ふぁぁ…!」」
照り付ける日差しが窓辺を照らす昼下がり…街にあるカフェ、〝リリィの喫茶店〟と看板を掲げたその店の奥の席で…私とレイナは、己の目の前に置かれた、赤と白が幾重の層を織り成す、美しい〝芸術品〟に見惚れていた。
――パクッ♪――
「「あっま〜い♪」」
そして、その芸術品を掬い上げその甘味を堪能すると…その滑らかさや甘酸っぱさに顔がとろける。
「ん〜やっぱり人間の食事は良いわねぇ♪…携帯食料とは全然違うわ♡」
(この為だけに味覚再現機能を最大にして良かったわね♪)
「街のお菓子はこんなに美味しいんですね!」
そんな極上の味わいだから、私とレイナはペロリとパフェを平らげ…果実のジュースを片手に雑踏犇めく人の街を窓辺から眺め見る。
「――それはそうと、問題なく街に入れて良かったわね…門番に止められるか不安だったけれど」
「〝偽装指輪〟…値は張りましたけどコレのお陰でもありますね」
客席で私とレイナは其々の指に嵌められた紫の飾りをした指輪を見ながらそう言葉を交わす。
――――――
【偽装の指輪】 レア度☆☆★★★
自身の身分を偽る為の魔道具…ソレを魔道具だと思わない限り、【紫飾の指輪】として表記される。
効果1:装着者に〈隠蔽〉を付与。
――――――
「想定よりずっと早く街に来ることになったもの、念には念を入れとかないとね…それよりも、〝契約書〟は持って来た?」
「はい…取り敢えず〝低質〟のモノを10枚…内容を確認しますか?」
「えぇ」
そして、ジュースの氷が熱に溶けて揺れる中で私は〝此処に来た目的〟の為に、レイナの〝持ち物〟に目を通す。
――――――
【生贄の契約書】
契約者A:マオ・ディザイア、レイナ・ハーレー
契約者B:〈未記入〉
契約1:契約者Bは契約の内容を他者に明かしてはならない。
契約2:契約者Bは定期的に生物を殺し、その経験値の4分の1を契約者Aに譲渡しなければならない。
懲罰:違反者の目
――――――
「〝情報の検閲〟と、〝経験値の上納〟ね…契約書の体裁は保っているけど、コレじゃあ契約者Bに明確な利益が無いわね?…契約締結の難易度は高くなるわよ?」
中身を確認し、私がそう言うと…レイナは分かっていたと言う風にしょんぼりと肩を落とし、私へ言う。
「すみません…まだ低質のものしか作れないので…〝二枠〟が限界なんです」
その言葉に私は頷き…レイナへ言う。
「…成る程……それは仕方無いわね…分かったわ、その問題は何とかするとして、試しに〝コレ〟を使ってみるわ…レイナは――」
気を切り替えて、私達は腹ごしらえを済ませて立ち上がりながら、其々の目的を共有する。
「はい、この街の情報と役に立ちそうな物を探してみます…ですね」
「そう…それじゃあ夕方に広場で落ち合いましょうか」
そうして、私達は会計を済ませると喫茶店を後にする。
――カッ…カッ…カッ…――
そして、レイナと別れた後…私は人混みを紛れて裏路地へと入り込む。
「さて、それじゃ…獲物を探しましょうか♪」
そして、自身を覆い隠していたローブを脱ぎ…獲物を誘うように、薄暗い汚れた道を進んでゆく…つもりだったのだけど。
「へへへ…おい姉ちゃん」
「別嬪さんがこんな所に1人ってのは危ねえぜ?」
「俺達が〝優しく〟守ってやるからよ、ちと面貸してくれよ」
「……嘘でしょ、もう少し情緒っていうか…タメとかってないの?」
路地裏に入って物の数十秒…一分と経たず、私を囲む様に如何にもならず者な三人組が姿を現し、私を下品なニヤケ面で出迎えてくる。
「――しかし姉ちゃん、随分と目に良い格好してるじゃねぇか」
「案外姉ちゃんも〝その気〟だったりすんのかぁ?」
「…」
私は取り囲む三人組を一瞥しながら、品定めする。
――――――
【グル・ガド】LV15/20
【人間】
【冒険者崩れ】
――――――
――――――
【アスア・ルドロン】LV13/20
【人間】
【冒険者崩れ】
――――――
――――――
【ハルバン・アントン】LV18/20
【人間】
【冒険者崩れ】
――――――
(ステータスは軒並み雑魚の…〝元Dランク冒険者〟…まぁソレはこの際良いとして)
「〝実験〟には都合が良いか(ボソッ)――ねぇ、アナタ達…どうせなら人気の無い所に行きましょうよ、此処だと何かと人が多いでしょ?」
「ッ!――へへへッ、そうだな姉ちゃん…話が早えな♪」
展開の速さは兎も角、此方としても都合の良いこの状況に、私は彼等を引き連れて、人の活気の届かない…深い、深ぁい〝人里の闇間〟に、足を踏み入れて行く…。
――コポッ♪――
そんな私達の足元には…不定形で不気味な影が…薄っすらと広がり…私の周りを囲んで歩く、男達の影に絡み付いていた。




