契約と抑縛
日を跨いでしまったが2本目!
――バシバシバシッ――
「あぁ、おかえりなさいレイナ…〝修行〟の方はどうかしら?」
「あ、ハイ…順調ですけど…その」
コンパスを触手で空中に打ち上げながらレイナを出迎える…そんか私にレイナはそう答えながら私とそのコンパスに目を向ける。
「あぁコレ?――いやぁねぇこのコンパス、意思が有るのかそう言う性質なのか、私の目的以上のトンデモナイ代物を造り出してね?…挙句私を貶めようとして、しかも面倒なのにも遭遇したし…流石の私もちょ〜っと怒り心頭って感じなのよね♪」
その視線に私はそう言いながら、宙に浮かぶコンパスを掴み、握り締める。
――ガタガタガタガタッ!――
そんな私の怒気にコンパスがガタガタと震え、私の手から逃れようとする…だが。
「〝大人しくしろ〟――本格的に握り潰すぞ」
――ビキッ!――
私がそう脅しを掛けると、コンパスはピタリと止まる…いや、正確には抜け出す様な真似はしないまでも、まだ小刻みに動いている。
「――全くどうしてくれようか…」
「…」
そんな風に、コンパスの扱いを考えていると…レイナの視線が沈みかけた私の思考を浮上させる。
「ッ――ん、そう言う訳だから〝コレ〟をどうするべきかを考えてるって訳♪――手っ取り早いのは〝壊す事〟だけど…此処で問題なのがコレの性質…〝増幅器〟としての性質だけなら、中々有用な〝道具〟なのよね…出来るならまだ暫くは使っていたいけど、そうなると次いつ〝コレ〟が裏切るのか分かったものじゃない」
そして、私は今の状況を言葉に表しながら…レイナへ視線を向ける…このまま私の脳内で考えを煮詰まらせても仕方無い…折角なら新しい意見も伺うべきだろう。
「――ねぇレイナ、貴女から何か良い案が出たりしないかしら?…思考力や知的発想に関しては、私より貴女の方が優れていると思ってるのだけど…?」
そうして、私は偉大なる魔女の卵にして、可愛い可愛い私の友人にそう問うと、彼女は暫しの沈黙の後に…私とコンパスを見て口を開く。
「――その〝コンパス〟…〝意思が有る〟と言っていましたが、確か何ですか?」
「えぇ、狡賢くて臆病な奴よ?」
「だったら…〝面白い方法〟が有るかも知れません」
その問いに私がそう答えると、レイナは口端を緩めながら洞窟の本棚から一冊の〝魔術教本〟を取り出し、ソレを開く。
「――〝破壊するにはある性質が有用〟で、〝利用するにはソレの意思〟が厄介…だったら、〝厄介な意思〟に枷を嵌めてしまうのはどうでしょう?」
「……そんなの出来るの?」
「――〝契約魔術〟…高等魔術として知られている魔術を用いれば可能です…マオさんは確か〈能力〉として〝契約〟系の物を有していましたよね?」
「えぇそうね……〝使える〟の?」
「じゃあソレを使って実践してみましょう」
レイナはそう言うと、今度は〝収納箱〟の一つから〝羊皮紙と羽根ペン〟を取り出し…其処に魔力を流す。
「〝簡易魔術触媒〟…本来術者本人が行使して発現する〝魔術〟を、資質や利用者の区別無く行使出来るようにする〝魔術触媒〟…基本的な魔術では、誰でも扱える代わりに劣化した魔術しか使えない消耗品ですが…〝契約魔術〟に関しては〝魔術効果〟を補強する〝契約書〟に成ります」
「そう…なのね?」
ペラペラと私へ教えてくれるレイナの言葉に何とか追い付きながら…私はレイナの走らせる羽根ペンとインクのワルツを眺める…ソレが暫くしたその後…遂に完成したソレを、レイナは私へ見せ付ける。
「さぁ、コレが〝契約書〟です!」
其処には、確かに〝契約書〟と名を打った紙媒体が拡げられていた。
――――――
【無記名の契約書・低質】 レア度☆☆☆★★
ありきたりな素材で作られたごく普通の契約書、しかし魔術触媒として扱うには充分な魔力が込められている。
効果1:契約内容の拘束力が強化。
〈契約内容未定〉
〈契約内容未定〉
――――――
「後はコレに契約内容を記載して、利用者の合意と魔力を流せば契約は締結、契約内容を尊守しなければ違反者へ罰則が課せられます」
「成る程」
誇らしげにそう言い胸を張るレイナから、その契約書を受け取りながら、私は考えと共に羽根ペンを取る。
「それじゃ、契約の内容を決めるわね」
そして、淀み無く契約書に契約内容を記入する…その内容は――。
――――――
【盟友の契約書】
契約者A:マオ・ディザイア
契約者B:意思ある道具〈コンパス〉
契約1:〈契約者Aは契約者Bが契約2を履行している間、危害を加えてはならない〉
契約2:〈契約者Bは、契約者Aへの協力及び不利益を齎してはならない〉
――――――
「懲罰はオーソドックスに〝生命〟で…さ、コレで準備完了ね♪」
私はそう言うと、その契約書に自らのサインを刻み…魔力を通す…そして、ソレをコンパスに渡し…コンパスのサインを求める。
「――それじゃ、アナタもさっさと契約を呑みなさい」
『ガタガタッ』
私が告げると、そのコンパスは何処か訝しげな様子で震える…その雰囲気は何処と無く契約を拒む様だった。
「契約を呑みたくないなら別に良いわよ?――その場合残念だけどアナタを壊すわね」
『ガタガタガタッ!!!』
そんなコンパスへ私がそう言うと、ソレは何処か怒りを孕んだように一際激しく暴れると…それからヤケクソの様に契約書に魔力を伸ばし、その契約書に魔力を結び付ける。
――ジュウッ――
ソレが終わると、契約書は一際強い魔力を私とコンパスへ伸ばし…その身体に小さな〝紋様〟を刻み付ける…レイナはそれを回収すると私へ手渡しながら告げる。
「コレで契約は完了ですね、後はコレを持っていて下さいね…この契約がこの魔術の触媒ですから、契約書を破られると契約そのものが破棄されるので…保管は徹底する事ですね」
「――ありがとうレイナ、貴女に相談して良かったわ♪」
そうして、私は今回の事件の後始末を漸く終え…このポンコツを扱うのにアレコレと考える必要は無くなり、ホッと一息付く。
「コレで一安心ね…それはそうと、今日は疲れたから一度眠るわ…それとレイナ、その〝契約書〟…幾らか量産しておいてくれない?」
「分かりました……それで、マオさん…実はその〝契約書〟何ですけど…少し考えがあるので、また明日、少し〝今後の予定〟についてお話して良いですか?」
「えぇ構わないわ…きっと、私と同じ事を考えてると思うけど…まぁ、一先ず解散にしましょっか」
そして、その後はれいと軽く雑談を交わし…今日の活動は終了した。




