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怪物達の狂想曲〜彼方の獣達は電脳の夢を見るか〜  作者: 泥陀羅没地
第三章:魔人と魔女と人街の悪夢
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化けの皮は焼け落ちて

「随分派手にやってくれた――」


山賊の、恐らくは頭領と思わしき男が私達が何か言おうとする、その話をぶった切って私は駆け出し…レイナは杖を構え祝詞を紡ぐ。


「〝レイナ〟…〝派手にやって〟」

「はい――〝炎嵐〟!」

「なッ、オイッ!」


その瞬間、この空間に凄まじい炎の嵐が吹き荒れ…洞窟の中が炎で満ちる。


――ギィィィンッ!――


「生憎そう言う前口上は事足りてるのよね」

「――チッ、血の気の多い奴だ…なァ!」


狙うは真正面の山賊の頭領…彼に目掛けて振るった槍は鋭い突きで空を引き裂き…頭領の心臓目掛けて突き進む…けれど。


――ガチィィンッ!――


突き出された槍は、彼の間合いに入ってから僅か一秒にも満たない猶予の間に、彼の持つ大柄のサーベルに受け止められ…人間の中でも怪力と呼ぶに相応しいその膂力は、私の肉体を軽々と殴り飛ばす。


――ベキィッ!――


「ッと…良い一撃ね」

「フンッ…値が付きそうな女はなるべく生かしたまま捕まえてぇんだがな」


――ザザッ!――


ぷらんぷらんと、拉げた腕を下ろしながら私は着地し…気が付けば包囲していた山賊達に目を配る。


「――諦めな、片腕が使えねぇ状態でこの数だ…マトモにやりあえるだなんて思うんじゃねぇぞ?」

「数は4人…レベルは〝17〟、〝18〟、〝19〟、〝22〟…確かに…数は多いわね」


私は、ジリジリと包囲を狭める山賊達を尻目に、頭領の言葉に頷く。


「――確かに、私一人じゃ突破出来なさそうね」


私はそう言うと、槍を握る腕を振り…皆の視線を槍に集める。


「分かった、〝降参〟するわ――」


その言葉に、頭領がニタリと笑みを浮かべ、山賊達の顔にも勝利と欲が満ちる…しかし。


「なんてね♪」


その瞬間、新たに紡がれた私の一言と…私の槍が空へ大きく投げ上げられたのを山賊達は目で追い…天井付近にまでとんだ槍は、次の瞬間垂直に落下し…その勢いのまま、地面を強く叩く。


――〝カーンッ!〟――


甲高く鳴る衝突音が、炎を突き抜けて

響き渡る…その瞬間、私は自身の魔力を強く放射し…外に居るレイナに〝合図〟を送る…その瞬間。


――ブワッ…――


先程まで渦巻いていた炎は霧散して消え、辺りには元の洞窟の壁が続いて居た…そんな状況の変化も刹那に…私達から少し離れた場所から…再び大きな魔力の反応が出現し…少女の声が続く。


「――〝火球〟」


――ゴオッ!――


その刹那、赤く荒々しい〝炎の塊〟が轟音を奏でて肉薄する…その動きは決して避けられない速さでは無かったが…彼等は動かない…いや。


「ッな、なんだ!?」

「――あ、足がッ…!」


――〝動けなかった〟…己等の足に巻き付く、肉々しい赤黒い〝触手〟の拘束によって。


そうこうとしている内に、火球は無慈悲に寄り集まった烏合の衆に迫り…其処に居る私諸共、山賊の部下を焼き焦がしてゆく。


――ジュウゥゥゥッ!!!――


当然、その炎の焼き焦がす先は…渦中の中心に居る私も例外では無かった…。



○●○●○●


―ゴオォォォォッ!――


燃え上がる炎と、肉の焼ける匂いが鼻に付く…山賊の頭領と、この状況を作り出した少女は、ただ…その光景を呆然と見ていた…。


――パチッ…パチパチッ…――


火花が爆ぜ、炎は依然として燃え続ける…そんな〝炎〟の中…揺らめく赤の中に浮かぶ〝陽炎〟に…二人は動けずにいた。


――ザシュッ、ザシュッ…ザシュッ――


陽炎に浮かぶのは〝一人の影法師〟…ソレは、同じく燃える陽炎に手を伸ばすと、揺らめく炎の中で肉を切り裂くような、引き剥がすような音を奏でて…その身体を〝崩れさせる〟…。


――グチャッ…バリッ…ゴクンッ――


次に響くのは、何かの咀嚼音…それは微かな音を響かせながら、暫く続き…その度に陽炎の中の影は、より大きく…不明瞭に変わり果てる…。


「――おい、おい、おい…待てよオイ…」


やがて、炎は鎮火し…中には無数の焼け焦げた死骸と、立ち尽くす〝炭〟が有り…その中の1つ…立ち尽くす〝ソレ〟の眼に浮かぶ…爛々と燃える赤い〝生者の視線〟に…山賊の頭領は遂にその冷静さを失い…冷や汗を流す。


「……テメェ…〝人間〟か?」

「……」


その問いには、暫くの間沈黙が続く…そう問われた黒炭の〝人型〟は…ただジッと男の事を見詰め…そして。


――ニヤッ――


始めて、その表情を変えると…パキパキと音を鳴らしながら…その〝皮膚〟を剥いでいく。


「――あぁいや、こう言うのもなんだけど中々新鮮だったわ♪――身体を焼かれるなんて中々体験出来る事じゃないもの♪」


1つ、また1つと一枚だったものが亀裂と共に剥がれ落ち…其処から現れた赤黒い肉の塊はそう言いクスクスと笑いながら、剥がれ落ちた部位から、新たな〝皮〟を纏い始める。


「――とは言え、それ以外には特段面白いことも無かったわね…どいつもこいつも以前戦った奴と変わらない強さだし…なにより、人数有利だからって直ぐに勝った気でいるのがダメダメね…期待外れも良いところだわ」


――ズズズスズズズッ――


肉塊の姿から、凡そ数十秒もすれば…その醜悪な姿は目も眩むほどの美貌の外皮に覆われ、美女は落胆にそう溜息を吐く…その様すら美しく、見る者を惹きつける魅惑の色香を放っていたが…その内側を垣間見た頭領の目には、その美女がただの〝化物〟にしか映らない…。


「さて、さて、さて…邪魔者達はコレで居なくなった、期待外れな玩具が消えて…残るのはまだまだ元気いっぱいな〝アナタ〟一人…そう言う訳だから山賊の頭領さん――」


そんな彼の視線を知ってか知らずか、美女はまるで長年の知り合いのような雰囲気で気安く山賊の頭領に話し掛け…その笑みを益々深めていく…その笑みの後ろに感じるその〝気配〟に、頭領は顔を引きつらせながら身構え…美女と少女に向けて強い殺気を放つ。


――クスッ♪――


その殺気を受けて益々笑みを深くする美女はそう言うと、最早正体を隠す気もないと言ったふうに、左腕を異形の〝肉塊と爪の腕〟へと変形させながら、頭領に期待の籠もった熱い眼差しを向け…告げる。


「――私が満足するまで、死なないで頂戴ね?」


ソレは、彼…山賊の頭領にとっては、死ぬよりも悲惨な目に合わせられると言う宣告に等しく…彼は心の中で悪態を吐きながら…目の前の化け物へと挑み掛かった…。

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