アンストッパブル・ブッチャー・キラー
2本目…明日の朝日が登るまでは今日は続くんだ…だからコレは2本目なんだ…。
「〜〜♪」
「「?…」」
何処からか鼻歌が聞こえる…酷く御機嫌で、澄んだ華やかな音に、不潔で粗野な男達は首を傾げて音の方向を探る。
――カッ…カッ…カッ…カッ…――
岩の上を硬い靴の音が鳴る…その音に釣られてみれば、其処には目を疑うほどの美女と美少女が二人…愉しげな笑みを携えて粗野な男達の元に歩んでいる。
「「……」」
その光景に山賊達は互いに顔を見合わせ、考える…突然現れたこの女達は何者なのか?…己等の存在を認識出来る距離に居ながら、何故平静を装っているのか?…偶然この場所に来たのか?…様々な思い、警戒、疑問が渦巻く…しかし、所詮は山賊か…二人の見張りは、美女と美少女の姿に下卑た欲を掻き立てられたのか、ニタリと気色の悪い笑みを浮かべる。
「…へへへ…おい其処の別嬪さんよぉ、死にたく無かったら俺達に従いな」
「お嬢ちゃんもだぜ?…なぁに、ちゃんと言う事聞いてりゃ痛い思いをする事はねぇぜぇ?…へへへ…」
無警戒に近付きながら、手に短剣を持ちながら脅す山賊達…その物言いに美少女は冷たい眼差しを二人に向けるが、反面――美少女に良く似た美女はその笑みをますます深くしながら、山賊の一人に手を伸ばす。
「――あら?…貴方は私を楽しませてくれるのかしら?」
山賊の顔に至近距離で、囁くようにそう言う美女の赤く、熱の籠もった視線に…山賊は鼻の下を伸ばして美女に告げる。
「何だ、アンタも結構乗り気だなぁ?――あぁ、たっぷり楽しませてやるよ♪」
「そう♪…じゃあ――」
山賊の言葉に、美女がそう笑い…その顔を山賊から離した…その瞬間。
――ドスドスッ!――
山賊達の心臓を…赤黒い触手の槍が貫き…赤い鮮血が地面に滴り落ちた。
「――たっぷりと…楽しませて貰おうかしら♪」
「「……は?」」
突然の出来事に、山賊達が疑問と共に己の胸元を凝視する…現実離れした現実の光景に脳が処理落ちし、理解が遅れている彼等を尻目に美女は通り過ぎ様に吐き捨てる。
「〝つまらない〟わね?」
そして遂に、山賊達の理解が追い付いたその時、美少女が放った二つの凶弾が、山賊の頭蓋を破砕し…二人を物言わぬ骸に変える。
《レベルが上がりました!》
《レベルが上がりました!》
《《変形》のレベルが上がりました、〈戦技:裂傷捕食〉を獲得しました!》
《〈生物変形〉のレベルが上がりました、〈戦技:腕部混成〉を獲得しました!》
「――〝攻撃回復〟と〝腕の付け替え〟…〝〈腕部/狼〉〟」
――ジャキンッ――
「――おぉ、良いわね…似たようなのは〈生物変形〉を得る前にした事あるけど…キーワード1つで即席で出来て、且つ〝武器〟としても機能するのは優れモノだわ♪」
既に事切れた死肉を無視しながら…美女は己の腕に生えた異形の〝爪〟を見て喜びに顔を悦に染める。
「――使い心地はどうかしら?」
そして、美女はその歩みを更に早めながら洞窟の中を進む…その僅か数分後…洞窟には、無数の人の悲鳴が流れ続ける…〝地獄の時間〟が訪れた…。
○●○●○●
「――次の者!」
「はい」
何処ぞで化物が暴れているその頃…人の街では、奇妙な男がまた一人、街の中に入り込む。
「――身分証を提示してくれ」
「はい、これでいいですか?」
その男は一見衛兵の指示に従う普通の人間に思えた…だが、そんな彼の従順さは、彼の光のない目と、鋼の様に硬い表情筋も相まって酷く不気味な様に見えた。
「デビット・マクレバン…声も姿も問題無い…無いな」
「……」
「良し、通れ!」
そんな彼を衛兵は何度かチラチラと見ながらそう言って身分証を返すと男を直ぐに外に叩き出す。
「……」
そして、一人歩き始めた男は人混みの中を混じり…やがて街の群衆の中に解けて消える。
その時の奴の顔は…貼り付けた様な、不気味な笑みで彩られていたが…それに気付く者達は、この街には居なかった。
●○●○●○
――ブンッ!――
「――アハハッ、〝人間〟のバーゲンセールねッ!」
洞窟の中を進む…そこそこの広さをした洞窟の中で、出会う山賊を千切っては投げ千切っては投げを繰り返す…すると、遂に山賊達の下っ端は私に背を向けて逃げ出すか、強行突破を試みようとする。
――ギィンッ――
「私に斬り掛かる蛮勇は認めるわ♪――でも、無策なのは減点よ」
私は、自身に挑み掛かる勇敢な愚者にそう言いながら、片手で山賊の剣を奪い…そのまま彼の腹に突き刺し…抉り、横に薙ぎ払う。
――ブチブチブチッ!――
雑に扱われ、切れ味の悪くなった錆びた剣は、人の肉と脂と骨を断ち切るには力不足であり…半ば無理矢理肉を引きちぎる形で剣は山賊の腹部を抉り取った。
「道具の手入れはちゃんとなさいな…ねッと!」
崩れ落ちる山賊にそう言いながら、コソコソと突破しようとした山賊の頭を蹴り潰す…全く、散々粋がっていた癖に、いざとなれば腹の据わっていない…情けない山賊ばかり…経験値が不味ければ関わる気にすらなれない連中に、私は思わず溜息が出る。
「――ま、万が一に私が突破されてもレイナが居るんだけどね」
私はチラリと後方を覗き見る…辺り一面血塗れの戦場の中、私の背後では小さな魔女が山賊の身体を貫き、切り刻み…縊り殺す様があった。
「良い調子に〝殲滅〟出来てるわね……っと、ここから先が〝リーダー〟部屋かしら?」
そうこうとしている内に私達は大分と洞窟を踏破する…すると私達の間には先へ続く道と、如何にもお誂向きな開けた空間が待ち構え…私達を呼び寄せていた。
「恐らくそうかと思います…明らかに魔力の密度が違いますのだ…油断はしないで下さいね?」
「分かってるわよレイナ♪――〝油断〟はしない、ただ期待はするわよ…洞窟の奥に居るボスが〝格上〟だったら更に言う事無しね」
「〝山賊弓兵〟然り、他の上位職持ちの敵にも警戒しながら戦いましょう」
そんな洞窟の誘いに、私とレイナは其々に興奮と警告を放ちながら歩を進め…遂にこの洞窟の主と対峙する…其処には。
「来たかよ……〝化物〟共」
筋骨隆々で粗野な装いをした巨漢の悪人面が私達を睨みつけていた。




