追跡する狩人
本日の…1本目!
2本目は頑張って今日中にだします。
――ガサガサガサッ――
「ギッ?」
「――〝外れ〟」
――スパンッ――
草木を掻き分けた先にはゴブリンが居た。
――パキパキパキッ――
「ブモォ?」
「―〝外れ〟」
――ザザザンッ――
枯れ枝踏み砕いたその先には、豚面の人型…所謂オークが居た…が、雑魚だった。
――ズンズンズンズンッ――
「ガギィ?」
「ブゥ?」
「〝外れ〟」
――ズドォッ、ドスッゴスッ…――
何処を探しても、ゴブリンゴブリンゴブリン、時偶オークと言う有様…其処に〝人間〟の姿は片時と無い。
「ブモォ…ォ…!」
「――ハァッ、オークはまだ歯応えがあるとは言え経験値がしょっぱい!――労力と利益が釣り合ってないわ全く!」
鏖殺せしめた肉を貪り食い、啜りながら…私は不満げにそう呟く。
「アハハ…思った以上に山賊が見当たりませんね…以前のあの山賊グループに出会えたのはかなり幸運だったと見るべきでしょうか」
「うむむむむぅ…折角手頃な〝経験値スポット〟を見つけたと思ったのに〜」
(このまま此処に留まるとして…山賊が現れなかったらそれこそ赤字…ランダムスポーン…は、有り得るのかしら?)
「――こんな事だったら、彼奴等の内一匹は逃がして尾行した方が良かったかしら?」
人型で戦うのが楽しくて、ついその事を考えてなかったわね。
「――基本的に山賊は洞窟か廃村を根城にしているので洞窟なんかを見つけられると期待は出来るんですけが…」
「――まぁ、何にせよ此処で愚痴っても仕方無い…暫く探して…見つからなかったら諦めて格上狩りに行きましょう」
一休みを終えて、私はレイナにそう言いながら鴉へその姿を変える。
「私は空から探すから、何かあったら私を〝召還〟してね、レイナ」
「はい、分かりました」
そして、レイナを一瞥して飛び立つと…私は空の頂きに鎮座する太陽目掛けて羽搏き…。
「キィィィィッ!」
――バサッ――
「グペッ!?」
そのまま…斜め上から私目掛けて強襲仕掛けてきた隼に喧嘩を吹っ掛けられるのだった。
○●○●○●
――カチャンッ――
「通って良し!…次の者、どうぞ!」
其処は人の街…人類が〝ニュート〟と呼ぶ街の検問所で…衛兵達が自らの役割…旅人の検問に精を出していた。
「――ふむ、〝ロバート雑貨商会〟の行商人か」
「へぇ、コレがあっしの身分証でさぁ」
「――確かに、名前と顔は間違い無い…一応の規則だ、馬車の中を確認させてもらうぞ」
「勿論でさぁ」
南門では、行商人が門を通る為に衛兵に従い…衛兵の検査に大人しく沙汰を待っている…その余裕ある佇まいが示す様に、何の問題も無かったのだろう…衛兵はごく自然と馬車の中から出てくると、行商人へ身分証を返す。
「馬車の貨物に問題は無い、通って良いぞ」
「へぇ、それはありがてぇです…あぁ、所で衛兵さん…実は、1つ頼みてぇ事があってですね…おぅい旦那ァ、此方でさぁ!」
行商人は衛兵に頭を下げると、それから何かを思い出した様に衛兵にそう断りを入れ…己の後ろに居る旅人に声を掛ける。
「……」
――カチャッ、カチャッ、カチャッ――
其処には…浅黒い肌に、黒い癖のある長髪をした…金色の瞳を持った偉丈夫が居り、その男は行商人の呼び掛けにツカツカと歩を進める。
「実はこの御方、異邦の国からやって来た旅人らしいんですが…身分証を持ってねぇらしくてですね…身分証の発行をお願いしてもええですかい?」
その言葉に、衛兵は一瞬男を訝しげに見るが…男が頭を下げると、害意が無い事を理解したのか、直ぐにその表情から険を取る。
「分かった…では其処の者、簡単な調査をするので此方に来てくれ…おい、俺の代わりに門の番を頼む!」
衛兵はそう言うと、男を兵舎に案内する。
「――旦那、商会長に話は通しておくんで、また〝ロバート雑貨商会〟に来てくだせぇ、今日の御礼をさせて下だせぇ!」
「……分かった、後で行く」
男と行商人は互いにそう言葉を交わし合うと道を分かち…其々の道を進む。
「――旅人殿、手続きを円滑に行う為に、名前を聞いておきたい」
「…〝ヴォルフ〟…〝ヴォルフ・ガード〟」
衛兵と男はそう言いながら、兵舎の中へと進む…その時ヴォルフ・ガードと名乗る男の視線は、街の人混みを意味ありげに捉えていたのだった。
●○●○●○
「ハァッ…ハァッ…ハァッ…!」
森の中を山賊が掛ける…その身体は全身が傷だらけで、酷く哀れな姿だった。
「何だよ、あの化物共は…!?」
そう怯え切った声でせめてもの虚勢とばかりにそう悪態を吐く男は、頻りに己の背後を確認しながら…獣道を駆けてゆく。
林を走る事暫くして…〝目的地〟へ近付くと…男の顔に僅かな希望が湧いてくる…其処には、川辺に自然生成された洞窟が有り…其処に立つ、己の仲間達を見て、男は歓びを隠しきれずに口を開く。
「皆――ッ!」
その口が、仲間への呼び掛けを紡ぐ…その瞬間、男の喉を…何かが〝貫いた〟…。
「――カヒュッ?(……え?)」
――ヒュンヒュンッ――
ソレは一瞬の早業だった…一瞬の内に、男の膝から下が切り離され…ドサリと音を立てて男は倒れ伏す、湧き出す疑問はその刹那、苦悶と絶望に塗り潰され…男は此方に歩み寄って来る足音にバッと頭を振り向ける…其処には。
「ッ〜〜〜!?」
「――いやぁ♪…想定通りに事が運ぶと気分が良いわねぇ♪」
「…ちゃんと仲間の居場所に案内してくれましたね…重畳です」
人の言葉を喋りながら…〝触手の腕〟を手繰り寄せる〝美女のカタチをした化物〟と…その後ろを付いて歩く…冷たい赤目の少女の姿が在った。
――ヌッ――
「ッ…ヒュッ、カヒュッ…!」
「――ごめんね?…此処で貴方に叫ばれるのは困るのよ、下手に戦う準備とかされると面倒だし…出来るだけ楽に仕留めたいから♪」
這い蹲る男に顔を近付けてそう言う美女は、その赤い視線に灯る愉悦を男に注ぎながら…艶めかしく笑う。
「――貴方は充分私の役に立ったわ、〝案内役〟として…だから、せめて苦しまずに殺してあげるわね?」
美女はそう言うと、逃げようとする男の首を一瞬で断ち切り…その肉を肉々しい粘液で取り込み、其処にあった死骸の痕跡を抹消する。
「――ごちそうさま♪…それじゃあレイナ、摘み食いは此処までにして…早速〝メインディッシュ〟と洒落込もうじゃない♪」
「はい…人間を皆殺しにしましょう♪」
そして美女と少女は、その姦しく、美しい笑顔には相応しくない物騒な会話を交わしながら…悠々と山賊達の隠れ家へと向かってゆくのだった。




