人訪れる旅道、鬼潜む林道
3本目ッ、特に言う事が無いッ!
――パカラッパカラッパカラッパカラッ――
「レイナ、振り落とされてない?」
「はいっ、何とか…!」
馬の身体に変形した私の背に、レイナが乗る…森を暫く走り抜けると、其処は暫くの草原が続き…その少し先には大きな〝岩の城門〟と、村よりも遥かに規模の大きな〝街〟が遠巻きに見える。
――パカラッ…パカラッ…トットットットッ
――
「〝変形〟――〝人間〟」
草原にまばらに生えた草葉の山に隠れ、私は〝馬〟から〝人〟へ、その姿を変える。
〝生物変形〟は面白い…例え大きかろうと小さかろうと、〝記録〟として能力に記憶された生物には自由自在に姿形を変えることが出来る。
加えて変身中はその生物の中でも最優のステータスを能力が用意してくれ、此方は用途に合わせて扱うだけで良い。
「――使い勝手が良い能力だけど、より強力な魔物に変形する際は相応の魔力を持って行かれるのと、予め変身する生物を設定しておかないと駄目なのがデメリットと言えるかしら」
因みに現在の設定はこうである。
――――――
・〈種族名〉:消費MP ・・・〈キーワード〉
・〈変形解除〉:0MP・・・〈リセット〉
・〈人間:槍使い〉:100MP・・・〈人間〉
・〈草原馬〉:150MP・・・〈馬〉
・〈夜色鴉〉:75MP・・・〈鳥〉
・〈角兎〉:50MP・・・〈兎〉
――――――
基本使用の〈人間〉、陸移動の、〈草原馬〉、上空偵察及び空中戦の〈夜色鴉〉、潜入潜伏、離脱用の〈角兎〉…コレが今の私の変身セットである。
「変形枠もレベルが上がると増えるのかしら?…じゃない…それでレイナちゃん、〝街の人間〟はどんな感じ?」
自分語りは兎も角…私は今の状況に我に返り、先んじて街の人々を観察していたレイナに問い掛ける。
「村の人間より、遥かに良い装備です」
その問いにレイナはそう返しながら、街の門の側で街に訪れた人間を調べる衛兵達を指差す。
「ふぅむ…確かに、全身シンプルな甲冑に長物の槍…ソレに…」
その衛兵達の装備と佇まいを観察し、私は衛兵達の頭上の〝情報〟を確認する。
――ジッ――
――――――
【フロス・ハイランダー】
【守衛槍兵】LV32/40
HP:11200/112000
MP:8200/8200
――――――
――――――
【フレア・ハイランダー】
【守衛槍兵】LV32/40
HP:11200/11200
MP:8200/8200
――――――
「ヒュウッ…流石第二エリア…一筋縄じゃ行かないわよねぇ」
衛兵達のレベルが高い…〝看破〟は――。
「―――?」
そうして、看破を使い衛兵のステータスを覗き見ようとしたその時…衛兵の顔が此方に向き…私は慌ててレイナを抱き寄せ草影に身を隠す。
「――おっと、危ない危ない」
(明らかに〝気付かれた〟…【能力】による感知辺りかな?…何にせよ看破は此方の位置が割れる、それに街の入口を護る衛兵だし…私より上の〝看破〟を持ってると見ても良いわね)
推測しつつ私は…〝このまま人間の街に入る事を目指すのか〟…それとも〝人間の街から離れ、別のエリアに向かうのか〟…その何方が最善かを審議する…結果。
――ギギギッ、〝ガチャン〟――
「良し、止め止め…今〝人間の街〟は近付けないわね…絶対正体がバレる…此方は後回しで次の道に行きましょう」
(人間の街は衛兵が関門、運良く入れても街にどんな怪物が潜んでるかは分からない…だったら次のエリアでレベル上げに勤しむ方が遥かに建設的ね)
「そうと決まればレッツゴー〝新天地〟ってね!」
私はそう言い自らの肉体を〝変形〟させて…その背にレイナを乗せると人の街から踵を返し…砂利道を逆走して街付近から走り去るのだった。
●○●○●○
――カッポッカッポッカッポッ――
「さて―――目指すはレベル〝50超え〟…MAXレベル100として、丁度折り返し地点と言えるレベル帯を目指しましょう♪」
「今の私達が〝レベル30〟帯として…凡そ20…実際にはレベル上限を解放するのにレベルはリセットされるので…道はかなりハードですね」
マオさんが私を背に乗せながらそう言い目標を立てる…その言葉に私はその目的の難点を明確にしながら…マオさんの言わんとしていることを引き出す。
「その通り通り…つまり、今の我々に求められるのはより多くの〝経験値〟とより強力な【能力】!――ソレを手にするには〝格上狩り〟による莫大な経験値の獲得が必要…勿論人間を殺せるなら言う事無しだけど、現状ソレは難しいので一旦放置で考えましょう」
私の言葉にマオさんはそう捲し立てながら早足で進んでいると…その時。
――ピタッ――
ふと、マオさんが足を止める…ソレが意味する事は…〝敵襲〟だ。
「〝変形〟――〝人間〟……さて、さて、さて…〈第二エリア:鬼潜の林道〉…新天地に来て始めての魔物――」
私が杖を構える横で、マオさんも人型に戻り…虚空に手を伸ばす。
――パシッ!――
――カァンッ――
そして、その手に古びた槍を持ちながら…その顔を笑みで彩り…林の草木に目を向ける。
「〝味見〟をさせて貰おうかしら♪」
「〝魔力反応〟――〝来ます〟」
その瞬間、林の草むらがざわめき…その中から無数の人影が姿を現す…。
「あら?…な〜んだ、ゴブリンじゃない」
「ゴブリン…ですね…?」
其処に現れたのは…森の奥地でもそこそこの数見た〝見慣れた魔物〟の姿だった。
「ゲゲッ、ギィィィッ!」
「ゲヒッ、ゲゲゲァ!」
「――〝人間形態〟だと威圧の効果が無くなるのかしらね?…私より遥かに格下だけど…ヤル気満々ね」
――ヒュンヒュンヒュンヒュンッ!――
槍を戯れに回しながらマオさんは迫るゴブリンを見ながらそう言い…それから、槍の穂先をゴブリンに向けて…牙を剥いて笑う。
「――〝良いわね〟…経験値は不味いけれど、〝この身体〟の練習台には丁度良いわね♪」
そう言うとマオさんは、私達に向かって飛び掛ってきたゴブリン達へその槍を力強く振り抜いた。




