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怪物達の狂想曲〜彼方の獣達は電脳の夢を見るか〜  作者: 泥陀羅没地
第二章:画して、少女は魔女となる
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汝、弱肉強食の理に抗う者

3本目だ、3本目が出たぞ(迫真)。


クククッ、漸く主人公達がボスを倒した様ですね…しかし森眠熊君はボスの中でも最弱…かも知れない。

――ズドンッ!――


放たれた一撃は、地面を容易く陥没させ…土煙が舞い上がる。


「――フフッ♪」

「―GURUU!?」


その中を突き抜けて、ボスの肉を削ぎ落としていく。


――ザクッ、ザクザクザクザクッ――


魔力をコーティングされた刃は、私のイメージを元により刃の形を鋭敏に研ぎ澄まし…深く深く…肉の筋を絶ち切ってゆく。




「GAAAaaa―!?」


痛みに苦悶の声を上げながら、ソレを上回る怒りを吐き出して森眠熊は私を睨み付ける…。


(距離が離れた、詰めてくる?)


一瞬の沈黙と同時に森眠熊が迫る、目で追うのがやっとな速度で迫るのを見ながら、私も次の一手を回避する為に動く。


(振り下ろし、薙ぎ払い、噛み付き…どれが来る?)


相手の動きを〝視る〟…視線、呼吸、皮膚、骨、筋肉の動きを正確に捉え、次の動きを〝予測〟する。


「――ッ、成る程…!」


その結果、ボスの動きから予測した〝次の動き〟は…振り下ろしでも、薙ぎ払いでも…噛み付きでも無く――。


――ドッ!――


「GURAA!!!」

「ッ――〝ベアハッグ〟って訳?」


飛び込んでの〝抱き着き〟だった。


――ドッ!――


ソレを見た瞬間…私は後ろに飛び退き…ボスの射程範囲から外れる…考えてみれば当然の事。


「――〝行動パターンの変化〟は、当然備えてるわよねぇ?」


飛び退きながら、着地するボスを捉える…ボスもまた、空中に逃げた私を睨み…次の一手に出る…それは。


――スゥゥッ――


「〝VAAA〟!!!」


〝雄叫び〟による、風圧での吹き飛ばしだった。


「――アッハッハッ…それは流石に予想外ッ!」


――ゴウッ!――


その一撃は予想外であり、意表を突かれた一撃だった…だが、その反面火力そのものは低く、ただ私を弾き飛ばしただけだった――。


「――〝行動〟としてみれば、だけどね」


背後を見る…物凄い勢いで飛ばされた先に有るソレは。


――……――


〝沈黙の木々〟…大地に根を張り、暴風にさえ抗わんとする〝鉄壁の不退転〟達…つまり、状況として見るならばコレは――。


(〝落下ダメージ〟と同じ…慣性による攻撃ッ)

「全くッ――〝最ッ高〟ね♪」


絶体絶命のピンチだと言うのに、私は昂る心からそう叫び…そのまま〝迫る壁〟に衝突するのだった…。


――〝―――!〟――


「ッ!」


少なくとも…その〝声〟を聞くまでは…そうなる筈だった。



●○●○●○


「――…GURUU…?」


その瞬間…森眠熊の目に映る光景は…己の目を疑う様な出来事を繰り広げていた。


怒り狂いながらも、あまりに大きな驚きに困惑を紡ぎ…何が起きたのか理解出来ないと、その動きを止める…。


〝何故〟…何故、何故、何故?…そんな疑問が彼の頭を埋め尽くし、他の思考を許さない…。


――……――


確かに己は、目の前に居る不快な〝獲物〟を吹き飛ばした…事実己は、己の咆哮によって奴が吹き飛ぶ様を見ていた…筈なのに。


――『……』――


今目の前に広がる景色に、奴の姿が見えない、映らない…奴の死に様が、木に衝突し無様なゲル状の粘液に成り果てる姿が映らない…。


「……GAa…?」


己は夢を見ていたのか?…しかし、そんな思考を傷付いた身体の切傷が抉られた肉の痛みが否定する、では何が起きている…では、では、デハ――。


巡る思考は濁流の様に流れ、しかし彼にその思考を止める術は無く…ただ呆然とその場に立ち尽くしていた…その時。


――フッ――


ふと――〝空〟に陰が差した…ソレに気が付いたその瞬間。


――ズドオォォンッ!――


己の身体を…〝ナニカ〟が貫き…その衝撃で、自身は地面に縫い付けられてしまったのだった…。


「――あぁ、本当…〝何が起きた〟って感じよねぇ?」


驚く己が、更に現れた困惑に呑み込まれていたその時…ふと、己の耳元にそんな、聞き覚えのある〝その音〟が、響き渡った。



○●○●○●


その〝声〟の主は…まるで面白そうに、楽しそうにそう言いながら…自身の下敷きに成っている〝ソレ〟を見ながら…そう呟く。


「分かる分かる…私も〝一瞬〟…何が起きたか分からなかったもの…どうにかこうにか、貴方の〝攻撃〟に対応しようとしてた…その瞬間、〝景色〟が変わったから…いや、ホント…驚いたわよ、まさか…」


森眠熊が、串刺しにされ、地面に縫い付けられながら…何とか己の頭上に居るソレを視界の端に捉える…其処には。


――ゴプッ、ゴポポッ――


肉体を半壊させてはいたものの、健在に其処に立っている〝ソレ〟が…己を見下ろしていたのだから。


「――〝獣の帰還〟…〝契約者の元に強制転移〟するっていう機能をこんな形で使われるとは…驚いたし、感心したわ」


ソレがそう言い、可笑しそうに自身の身体を再生させ…硬質化させた槍を自切し、地面に降り立つと…その瞬間…ソレの背後から凄まじい〝炎〟が噴き出し…ソレは己の背後に居る〝其奴〟を見て言う。


「――〝手出しするな〟…そう一丁前に言っといて、レイナに助けられちゃったわね?」


その自嘲的な物言いに、その娘は首を横に振りながらそのスライムに告げる。


「いえッ、マオさんこそ…よく一人でこんな化け物を相手に此処まで…あまりお役に立てなくて、此方こそ申し訳ないです…」

「何言ってるのよ、あの瞬間に私を助けた…それだけで値千金の活躍じゃない」


一人と一匹はそう姦しく言葉を交わしながら…揃って、大地に縫い付けられた〝ソレ〟を見る…。


――――――

【森眠熊】LV28/30

HP:500/4900

――――――


「――それじゃ、仕上げは宜しくレイナ…流石にもう、魔力がスッカラカンよ」

「分かりました…それじゃあ、〝行きます〟」


そして、スライムがそう言うと…その瞬間少女の身から放たれた魔力が勢いを増し…少女の言の葉から〝祝詞〟が紡がれる。


「〝古き五元の赤よ〟――〝破壊たる炎よ〟――〝我が敵を焼き尽くせ〟――」


一言、二言…三言、少女の口から紡がれた祝詞の一節一節が…炎に焚べられ、その祝詞と少女の魔力を贄に…渦巻く〝炎〟は荒々しく解放の時を待つ。



…そして。


「――〝火球〟」


少女の口から紡がれた…その御業の名は、主たる少女に、意思に沿って…目の前の〝怪物〟に飛び掛かる。


「ッ……!!!」


その時になって、漸くソレは理解する…目の前にある〝ソレ〟が、己の生命を絶つ最後の一撃で有ると…。


――ゴオッ――


そう、理解し…そして、理解するには遅過ぎた…その〝事実〟を理解する前に、炎はあっという間に森眠熊の生命を飲み込み――。


――ジュウゥゥゥッ――


その意識すらも、遥か虚構の灰燼へと還ずのだった…。


《涼風の森林のボス、〝森眠熊〟を討伐しました!》

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