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怪物達の狂想曲〜彼方の獣達は電脳の夢を見るか〜  作者: 泥陀羅没地
第二章:画して、少女は魔女となる
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強き者への挑み方

――ズンッ…ズンッ…ズンッ…――


炎の中から這い出すそれは…眠っていたその時とは一回り程大きく…圧倒的な大きさを誇っていた。


――ゾクッ――


一目…目があった、その目を見た瞬間…私はその瞳の奥に底果て無い〝憤怒〟を見た。


「――グルルルルオオォォォォォッ!!!!」


雄叫び?…咆哮?…いや、〝音の弾丸〟と形容出来る様な風圧に私達は晒される…。


「正に…〝別格〟ね」


成る程、コレが〝ボス〟の名を冠する獣…この場に居るどの魔物よりもレベルが違うというのがその一挙手一投足から感じられる。


――チラッ――


チラリと、レイナを見る…レイナも私同様相手の〝威圧感〟に緊張しているらしい…。


「――完全に〝呑まれてる〟わね…」


血走った目の獣は、私とレイナを一瞥し…最初の標的を値踏みする様に視察する。


「仕方無い…レイナが戻って来るまで…私が〝相手〟をしようか!」


その視線が私を捉えたその瞬間…私はその身から勢い良く触手の槍を射出し…強引に敵の視線を奪うのだった…。


●○●○●○


――グルルルル…!――


ソレの中を満たしていたのは、〝憤怒〟だった…自らの眠りを妨げた者への怒りだけがソレを突き動かしていた。


――ギロッ――


ソレの目の前には、2匹の〝生命〟が有った…己よりも弱い生命が…この二つ以外に己の周囲に気配は無く…必然、ソレの中でこの二つが〝獲物〟として認識されるのは至極当然の帰結だっただろう。


「グルル…」


何方を先に屠るのか、それを怒りの中に残った僅かな理性で思考し、ソレは値踏みする…。


或いはソレに八つ当たりの様な意味合いも込められていたかも知れない…だが、そんな事は所詮些末な一要素に過ぎず…怒りを募らせたソレは、遂にその矛先を獲物に向け…戦闘の始まりを、蹂躙の宣告を告げようとした…その時。


――ズドッ!――


〝ソレ〟が、咆哮を上げようとしたその刹那…赤黒い血の色をした獣が、ソレへ先手の一撃を加え…戦闘の開始を告げた。



○●○●○●


――ズドッ!――


その一撃は、全力では無いにしろ…それなりの殺意と魔力を乗せて放ったモノだった…しかし。


――バキンッ!――


触手の槍から放たれた一撃は、森眠熊の額に直撃したものの…その瞬間熊の肉体強度との競り合いに耐え切れず砕け散る。


「ウェッ!?――うそぉ!?」

(ダメージ無効化!?)


そのあまりにも無情な事実に一瞬、私は本気の驚きに思考が止まりかける…しかし。


――ヒュンッ!――

――シュッ!――


――――――

【森眠熊】LV28/30

HP:4850/4900


保険に振るっていた斬撃が森眠熊の皮膚を浅く切り裂き、微量のダメージを与えた事に無効化の原因を理解する。


「――熊の頭部は銃の弾丸も弾けるんだっけ?」

(ゲーム的に解釈するなら、頭部に装甲が有ってクリティカル判定にならない感じね…クソッ、こんな時はリアル重視とか巫山戯んなッ!)


――ドォッ!――


私の思考はさて置くとして、私の攻撃が戦闘の始まりを告げる合図と成ったのは間違い無く…森眠熊はその巨躯に見合わぬ機敏さで私に接近し…前足を振り上げる。


「グルァッ!」

「ッ――!」


――ズドオォォンッ!――


そして、振り下ろされた前足は砲弾が直撃したかの様な轟音と共に、地面を軽々と吹き飛ばす程の剛力で地面に穴を空ける。


(知ってたけど火力は馬鹿ねッ、基本的に大振りだから避けるのに苦労はしないけど、欲張ると大事故ね)


そんな森眠熊の攻撃にそう感想を抱きながら、私は着地と共に魔術を行使する。


「――〝撃ち抜け〟――〝魔弾〟!」

(物理攻撃は予想と情報通り効き目が薄い…だったら〝魔術〟はどうかな?)


私が放った魔力の弾丸は、その瞬間森眠熊の肩に触れ一瞬、奴の姿勢を崩させる。


――――――

【森眠熊】LV28/30

HP4730/4900

――――――


「オーケー、〝魔術〟は有効ッ」

(なら攻略法は魔術攻撃を頭部以外の部位に当てての耐久戦…私はヘイトを買い続るが吉ッ)

「〝レイナ〟!――〝攻撃〟宜しく!」


自身の中で最善手を構築すると、私はレイナに気付けも兼ねて強く呼び付けると、漸くレイナは緊張から立ち直り戦闘の構えを取る…。


「〝破壊たる炎よ〟――〝我が敵を焼き尽くせ〟――」


――ゴオッ――


「――〝火球〟!」


そして、杖から再び轟々と赤く燃える炎の塊を生み出すと…ソレを〝熊〟へと放つ。


――ドォッ!――


意識外から放たれた火球は森眠熊の腹を直撃し、抑圧された炎はその枷から解き放たれて爆炎を撒き散らす。


「――良し、良い火力」


――――――

【森眠熊】LV28/30

HP:4330/4900

――――――


(レイナの魔術は有効打に成り得る…レイナの攻撃を起点に動くのは正解…警戒すべきは―)


――ドドドドドッ――


「余所見してて良いのかしら?」

(レイナにヘイトが集まる事!)


炎から飛び出し、レイナを睨む森眠熊…その視線に対して私はそう言い、自身から生やした無数の槍と刃で森眠熊の身体を貫き、斬り裂いてゆく。


――ギロッ!――


そして、何とか森眠熊のヘイトを此方に移すと…私はレイナに言う。


「――攻撃の頻度を落として、下手に攻撃し過ぎるとレイナにヘイトが行く」

「ッはい!」


すると、レイナはそう言い私に向けて〝詠唱〟を始める。


「〝破壊たる炎よ〟――〝我が友の手に燃える刃を〟――〝炎纏いエンチャント・フレイム〟!」


その瞬間、私の身体から赤く揺らめく炎の様なオーラが立ち登り…私の身体が軽くなる。


「――〝30秒〟だけ、マオさんに攻撃力と火属性が付与されますッ」

「――オーケー、良い支援よレイナッ」


レイナは私に炎の属性を付与すると、それから息を殺し…気配を薄くさせる…ソレに対して私は魔力を放出し、レイナの気配を更に薄くさせて、森眠熊に相対する。


「―ッヴァルルルル…!」

「あらあらあら、さっきまでは威勢が良かったのに随分と臆病になったわね?」


そして、私は警戒する森眠熊にそう言いながら…再び、触手の槍を生成し…突きを放った。

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