戦場に日は昇る
どうも皆様こんにちは、泥陀羅没地に御座います。
すまない…有言実行の出来無い作者ですまない…後もう少しだけ付け加えて今章の最終話にするのでもう少し待ってくだせぇm(_ _)m
「取引の内容は単純明快♪――〝貴方の生命1つ〟と引き換えに、このイベントの残り時間中、私が貴方達の仲間になってあげる♪」
問う様なアークの視線に私はそう言いながら…息絶えた人の死肉を貪る。
「隔絶したレベルの差を持つ貴方を倒せば…一体どれだけの経験値が手に入るのか…気になるじゃない?」
言葉の片手間に、私は進化先のリストに目を通し…次の〝進化〟を選択する…とは言っても…。
――――――
【進化先一覧】
【昇華】
・ギガントスライム(選択不可)
・イビル・スライム
――――――
選ぶ先は、1つしか無いのだけどね。
「もし…その取引を断れば?」
アークを尻目に進化先を確認していると…ふと、アークが私にそう問い掛ける…全く。
●○●○●○
「――〝可笑しな事〟を言うのね?」
マオ・ディザイアはそう言うと、まるで僕を見透かした様に笑いながら…瀕死の生命を手折っていく。
「そうなるとどうなるか明白でしょう?…貴方は凡百な魔物に加え、私と言う無視できない戦力を相手取る事になる…何方かにリソースを集中させると片方が足りず…後手に回れば貴方達の試みは御破算…そんな未来が欲しいなら、拒絶してくれて構わないわよ?」
その生命を啜る彼女は、そう言うと…今度は僕へ語りを始めながら…その姿を変え始める…。
―――ゾゾゾゾゾッ―――
黒いオーラが、彼女を包み…彼女をこの世界から隔絶する。
「――〝取引〟なんてのはお行儀の良い〝建前〟よ、貴方はこの〝取引〟を受け入れるしかないの」
そして紡がれる、承諾の強要…しかし、それでも僕にはまだ1つ…〝無視出来無い懸念〟が有った。
「――……だが」
渋る僕の様子に、彼女は僕の言わんとしていることを理解しているかの様に、言葉を継ぐ。
「〝契約〟が履行されるかは分からないって?…えぇ、そうね…何処かの誰かさんは騙し討ちで契約を反故にしたものね?」
少しの毒を含み、そう言う彼女は…笑い声を奏でながら…暗い魔力溜まりから、その身体を浮かび上がらせる。
「私としては、このまま貴方が半端に悩んで破滅すふのも観物だけれど…そうまで言うなら〝保証〟を用意しようじゃない♪」
「〝保証〟…?」
「えぇ…今から〝契約〟の力を手に入れるのよ♪」
●○●○●○
――ゴオッ――
この世界では、特定の条件を満たす事で〝能力〟を手に入れられる。
(――試行回数と発想が有れば、望んだ能力を手に入れる事も不可能では無い)
今この場に求められるのは、〝取引の力〟…〝契約の絶対性〟を持ったモノ。
「――〝双方の合意〟だけじゃ、契約の絶対性は築けない、契約を履行するには双方の行動を監視し、違約に罰を下す〝第三者〟が必要ね」
「――【能力】には魔術の精度を補強する〝詠唱〟が有る…それに〝聖魔術〟は、〝神への祈り〟が行使の必要条件だ…この情報は使えるか?」
「――良い〝情報〟ね…ちょっと考える」
アークと私は、刻一刻と迫る時間の中で互いに協議する。
「――〝契約を結ぶ二人〟、〝第三者による契約の効力を担保〟…〝契約を結んだ証明〟…必要な要素はこんな感じね?…良し、それじゃ早速〝試す〟わよ」
(思考を煮詰めても仕方が無い…考えついたものはどんどん試さないとね)
私はそう言うと、自身の魔力を伸ばし…新たな試みに、口を開いた。
○●○●○●
「〝対価と代償、贄と報償の理法を以て、我等は此処に契を交わさん〟」
黒い魔力が、空に伸びる…その魔力はアークへと進む…しかし。
――ジュッ――
アークの白い魔力が、彼女の黒い魔力を焼き溶かし…ソレに抗わんとする。
「…〝我等は誓う〟…〝世界の秤に乗せし代価に嘘偽り無き事を〟…〝世界に誓う〟」
「ッ…」
その魔力に、祝詞に…彼女の、視線にアークは気が付くと…魔力を自身の内に押し込み…黒い魔力に身を包まれる。
「私――〝マオ・ディザイア〟が求めるは〝アークの生命〟である」
ソレを見届けると…彼女はそう言い、次はお前だとアークへ視線を向ける。
「僕…〝アーク〟が求めるは〝マオ・ディザイアとの仮初めの同盟である」
その視線にアークは応え、自らの望む対価を告げる。
すると――。
――シュウゥゥゥゥッ!――
アークの羽と、彼女の身体に、紫の文様が刻み付けられる…その二つは互いを認識し合う様に共鳴し…ソレを二人が見届けると…身体の中に溶けて消えた。
《新たな【能力】を獲得、〈契約〉を獲得しました!》
「――〝契約〟は此処に…〝果たされた〟」
そして…黒い魔力が晴れた時…二人の視線は交差し…。
「――成功ね♪」
「――あぁ、そうだな」
二人の魔物はそう言うと…既に崩落した壁の中にまで広がった〝乱戦〟の中に…その身を投じるのだった。
●○●○●○
――ブオォォォォッ!!!――
――キィィィィッ!!!――
――ワァァァァァッ!!!――
獣の悲鳴と人の悲鳴が入り乱れる…其処には、陰惨とした生臭い熱狂が満ち渡っていた。
「グッ――ガアァッ!?」
「や、やった――」
「タダで死ぬかァァッ!?」
「なッ――グハッ!?」
魔物も人も、多くが死に…血の海は拡がる…無尽に迫る魔物の到来、ソレに加え最早隔てる物も無くなった戦場に、人の絶望がより深くなった…その時。
――バサッ…バサッ…!――
「――〝魔力付与〟」
其処に居る人々を…白い魔力が再び包み込んだ…。
「ッ――〝アーク〟だ!」
「――出やがったなッ、行けテメェ等!――こんだけ馬鹿みたいに魔力垂れ流してんだ、もうガス欠だろ!」
その姿に、魔物達は一瞬怯むが…誰かの一声によって、その弱きを克服し…白鳥へと肉薄する…しかし。
――グニィッ!――
「――〝撃ち抜け〟――〝魔弾〟♪」
そんな彼等を撃ち落とす、その魔物に…彼等の目は釘付けに成る。
「なッ!?――テメェは此方側だろうがッ!」
「邪魔すんじゃねぇッ!」
其処に居たのは…赤く黒い一匹のスライム…スライムは周囲の死肉を貪りながら、罵倒を奏でる彼等に一瞥(?)の、視線をやると…その身体に作られた〝牙〟をグニャリと歪めて…嘲る様に返す。
「――残念だけど、私は貴方達の味方じゃないの♪…今まで〝ご苦労さま〟♪」
そう言うと…彼女は再び、触手を繰り出し…魔物達に斬り掛かった。
押しては引いて、裏返しの裏返し…そんな一進一退の戦場は遂に、勝者を選択し…戦場は敗者を蹂躙する地獄に変わる…。
気が付けば獣の悲鳴だけが響き渡っていた戦場にも、時間は流れ夜は進み行く…そうして、空が黎明から明けようとする…まさにその時――。
――ブオォォォォンッ!――
重く木霊する、大きな笛の音が…この地獄に終止符を打ったのだった。




